第39話 配信する気ないの?
桜が満開に咲き、最高学年である三年は卒業を迎えた。
大学へ向けての準備などで、予定が詰まっている春休み。
「俺、11月まではこんな、先輩に出会えると思っていませんでしたよ」
「だって、陰キャだったもんな。有名だったぞ」
「あはは。冗談はやめてくださいよ」
「あはは。それが冗談じゃないんだな。生徒会でも問題児扱いされていたとかいなかったとか」
「え?」
「え?」
体育館の入り口で立ち話をする二人。
副会長の手には、卒業証書があった。
ーーー3ヶ月、色々なことがあったな。
振り返ってみれば、早かったような、遅かったような、大切な時間を過ごしていたと感じる。
副会長の勧めがなかったら、生徒会長にもなろうとは思わなかったし、ここまま青春しないまま、高校生を終えるんだな、と思っていた。
「俺、今日から大阪の大学に行くことになるから、当分は会えなくなるけど、会える時にはまた会おうな」
「はい、いつでも!」
「今日は元気がいいな。エナドリでも飲んだのか?」
「その逆です!飲んでないので、深夜テンションで頑張ってます!」
「そ、そうか。寝ろよ?睡眠大事だからな」
「多分寝ます。多分」
「多分!?」
そんな、冗談半分の会話をしている時。
「おぉ、時期生徒会副会長の大友くんじゃないか」
「ちわっす、先輩。まずは、卒業おめでとうございます」
「初めて『おめでとう』って言われて、少し感動しそうなのだが」
「先輩、別に泣いてもいいんですよ?卒業式ですから」
「涙は最後まで、取っておくよ」
「先輩らしいですね」
「あははっ」と軽く笑い、笑みを浮かべた。
昔から、涙腺が80代ばりに脆い俺も、正直なところ泣きそうだった。
人を大切にするってこういうことなんだな。
今なら、わかる気がした。
「二年生はこの後下校?」
「はい、部活もないんで」
「もちろんです、俺部活入ってないんで」
高校生活最後の、先輩との会話だった。
★☆★☆★☆★
放課後、俺は生徒会室に優斗と一緒に来た。
新学期が始まる前に、生徒会室を一度清掃しておこうという話になった。
春休みは、生徒会全員で新学期準備を進めなければいけないため、春休み中は時間がない。
勝にも、声をかけたが「予定がある」と言い、そそくさと帰って行ってしまった。
どうせ、ゲームだろう。だって今日イベント初日だし。
ーーーあ、バレている気がする。
電車の中で冷や汗をかく勝であった。
「よし、頑張って掃除するか」
「だね」
まずは、去年そこまで使っていなかった棚を雑巾で拭く。
中の隅までしっかりと、拭いた。
次は椅子の清掃。
解体して、つけおき洗いをする。
ギリギリ生徒会室にあった洗剤を使った。
「買ってこないと、覚えてたら買お。覚えていたら」
「スマホのメモアプリ使おうよ!」
「めんどくさい」
「現代人だね〜」
次はキーボードの清掃。
キーキャップを取り外し、キーキャップはつけ置き洗い。
そして本体は、スライムのようなキーボードクリーナーで隙間のゴミを取り除く。
噂ではキーボードはトイレよりも汚いとか、、、。
「和也、手慣れてる〜」
「まぁ、月一で自分の洗ってるし」
「そんな頻度多いの?」
「まぁ、綺麗好きなんで」
「意外」
後は部屋の床の清掃をして、終了。
この時ばかりは、お掃除ロボット的なものを買ってしまおうかなと思った。
★☆★☆★☆★
「正直、配信する気あるでしょ?」
「ないよ」
家に帰って一発目に美鶴にそのようなことを言われた。
「みんな、帰ってきて欲しいって言ってるよ!」
「俺には向いていない、配信者なんて」
「そんなことないよ!天才配信者って呼ばれたぐらいなんだから!」
「天才なんかじゃないよ、本当に」
自室で着替え、そのまま風呂に入った。
忙しすぎて、最近はまともに風呂にすら入っていない。
俺が忙しい時には、春人に配信の裏方をやってもらっている。
そのせいか、最近二人の仲が急激に良くなった気がする。
「付き合って間もない彼氏がこんなんって、普通に考えて酷いよな、、、」
湯船に浸かりながら、一人反省会をする俺であった。
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