第3話 隣りにいる彼女(仮)が可愛すぎてヤバイ

実は俺の隣の席は七海さんだ。

基本的には今まで関わりがなかったが、今となっては最高の席と言っても過言ではない。

俺たちが座っているのは、教卓を正面と見て、左端のいわゆるアニメ席と言われる席だ。


寝ても何も言われない、授業中内職をしていてもバレない。

しかし、夏になったら、窓際ということもあり、めちゃくちゃ暑い。

エアコンも当たらないので、汗だくになりながら授業を受ける。


どちらかというと、右端の方が、夏は乗り越えやすい。


「(和也くん、、、!消しゴム貸して、、、!)」


七海さんが小声で話しかけてくる。


「(どうぞ)」


なぜか、消しゴムが二個入っていたので片方を貸した。

すると、ノートの端っこに「ありがと」と書き、にっこりと笑った。

可愛すぎないか、、、?


俺は窓のほうに目をやり、もう一度七海さんの方を向く。

今回は心の声が漏れていないようだ。


「(そういえば、今日から家いい?)」


「(親がどういうかわからないんですけど)」


「(この私なら大丈夫!)」


「(どこからその自信が出てくるんですか!?)」


クスクスと笑う七海さん。

正直、俺もこの状況を楽しんでいる。

女子とこんなことできるなんて、夢にも思っていなかっただろう!


ラノベでよくみるシュチュエーションに俺は興奮を抑えていた。

楽しい、、、!楽しい、、、!


ノートの端にメッセージを書きあって会話をしていた。


「集中しろ、北条」


現代文の教科書で俺は頭を軽く叩かれる。


「(なぜ、俺だけ!?)」


ノートの端にそう書くと、七海さんは頭を伏せて笑っていた。

面白すぎてなのか、小さく小刻みに震えている気がした。


「(私、これだけ仲のいい人いたことないから、こんなことできて嬉しい!)」


「(え?したことないんですか)」


「(え?なに?バカにしてる?)」


「(してませんよ!)」


「(それならいいけど)」


俺の発言に少し引っかかったが、うまく誤魔化した。


「じゃあ、ここの問題、、、北条」


「12行目から14行目までです」


「正解だ」


華麗に答えると「やるじゃん」と言わんばかりの顔を七海さんはしてきた。


「(俺だってやればできるんですよ)」


「(でも、この問題1番簡単なだよ)」


「それでも答えられたんだからいいじゃないですか!」


心の声が漏れてしまった。

そして、俺はしばし注目を集める。


今日一恥ずかしい思いをしてしまった。




★☆★☆★☆★☆★




「七海さんのせいで、今日一恥かいたじゃないですか!」


「そんなの私に言われても〜」


今は終業式が終わったあとすぐ。

俺はなぜか落ちていた屋上への鍵を使って、立ち入り禁止区域である屋上へときている。

3ヶ月前、誰も使わない、東側の男子トイレで見つけた。


「というか、誰もいないところ連れてくるとか、もしかして狙ってる、、、?」


「狙ってないですよ!ていうか、俺の紐苗 美鶴のイメージを壊さないでくださいよ!」


「現実の私と、配信での私、同一人物でいられるわけないじゃん」


「チャットの時の話し方と、全然違いますもんね」


「それは、キャラとして作っている時の私。でも、今の私は和也くんだけの私!」


彼女は振り返り、俺にそう言った。

瞳は輝き、ニコッとした笑顔を見せる。


「私、親が海外に転勤していて、日頃は家に一人なんだ。しかも、小学校の3年生あたりから」

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