第4話 今後の方針の前に

「ぅん...ここは」

 見覚えのある空間だ。

 私は寝ていたはずだけど、いつの間にか死んでしまったのか?


「そんなわけないでしょ!」

「ここは神域だけど死んでなくとも来れるわ」


 この艶やかでいてどこか可愛らしさのある声は

「オルティナ様!」

「お久しぶりです。3年ぶりですね」


「えぇ、しばらく見ぬ間に大きくなったわね。元気そうでなによりよ」


「ありがとうございます。教会で会えなかったので今日は会えないのかと思ってました」


「教会の時は私も一応空気を読んだのよ。あと、単純に忙しかったのよね。あなたの代わりに勇者になれる子供を探してたから」


「私の代わりに...ですか?」

 探してた...という事はもう見つけたのか。まさか⁉あの王子様か!確かにビジュアル的には勇者のイメージそのものだったけど。

 でも私も変わりという事は私が歩むはずだった過酷な運命をあの子が辿るという事か。

 もし...もしも、私が大人しく召喚されていれば...。


「もしもなんて無いわ」

「いくらあなたが悩んでも後の祭りというものよ。それにあなたの代わりの子...ヴァシロプロだったかしら?あの子は元々勇者になる子だったのよ」


 え⁉

「どういうことですか?」


「そのままの意味よ」

「まぁ、全部教えるのも面白くないし後は自分で調べてみなさい。勘の良いあなたならすぐにわかると思うわ」


「わかりました」

 なんか誤魔化された?

 いや、ただの暇つぶしだな。

 着物美人さんにからかわれるのも悪くないし話はここまでにするか。

「あの、話は変わりますがこの神域にこれるのって私の称号のお陰ですか?」


「そうよ『神の友人』というのは特殊な称号なの。神域に呼べるのは神気を纏うものか何らかの理由で世界からはぐれた死んだ直後の魂だけなのよ」


「私の時は後者の理由で来れたんですね。でも今ここに来ているという事は私は神気を纏っているのですか?」


「相変わらず勘が良いわね、その通りよ」

「称号から微弱な神気を流す事でサキに神気を纏わせているのよ。今はまだ微弱だけど、貴方が成人する頃には完全に体に馴染んでくるはずよ」


 ふぅむ...結構な爆弾発言だな。まぁ体に害は無さそうだし、しばらくは様子見だな。

「わかりました、ありがとうございます」


「そろそろ時間ね。今のあなただと月に1度ここに来てお茶会するくらいが限界のようだし、また1ヶ月後に会いましょ」


「はい!また」


 ・・・・・・・・・・・・・・・


「ぅん...ふぁあ~」

「よく寝た~精神的には少し疲れているけど」


 コンコン

「おはようございますサキ様、マリーです」


「入っていいよ」


「失礼します、本日のお召し物をお持ち致しました」

「では、お召替えを致します」


「マリーいつもありがとう。今日のドレスもフリフリでかわいいね」

 昨日のスキル解放の儀式で色々なスキルや称号を発現したし、身体や精神に大きな影響が出ると思ったけど気にし過ぎだったかな。

 クゥールルルゥ

 おっと、さっきから屋敷中で美味しそうな匂いがしていてお腹が空いてきたな。それにこの匂いの発生源食堂じゃないし動き回ってる......。

 ん?ちょっと待って?

 なんで屋敷に美味しそうな匂いが溢れてるんだ?こんな事3年間生きていて初めての事だし、私は匂いの発生源を正確に追えるほど嗅覚も優れていない。

 もしかしなくてもスキルや称号の影響だな。

「ねぇマリー、おうちの中いい匂いでいっぱいだね!」


 すんすん

「そうですか?私にはわからないです。サキ様はお鼻が良いですね」

「はい、お召替えが終わりました」


「ありがとう!お腹ペコペコ、ごはんに行こ」

 これでスキルや称号が関わっているのが確定したな。後は食事の時にでも確かめよう。


「あっそうでしたサキ様、本日の朝食は旦那様と奥方様もご一緒するそうです。何やら昨日の事の確認だそうです」


「そっか、わかったよ。じゃあ行こうか」


「では、ご案内します」

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