第3話 教会とスキルの解放

 今日は待ちに待った教会でスキルの解放をしてもらう日だ。あと、神様とも話す約束をしていた。

 外は大雨だが予定通りスキルの解放は行われるようだ。お父様に理由を聞いてみたら神との交信には強弱があって、スキルの解放は交信が最高になる数日間しかできないようだ。日にちは前後するらしいがその中でも最も強く交信できる日に貴族がスキルの解放を受けるのが通例らしい。

 貴族は平民との混乱を防ぐ為に平民とは違う日に受けるようだ。


「サキ、準備は出来たかい?」


「うん!ばっちりだよ」


「良いスキルが出ると良いわね」


「そうだねお母さま」

 解放されるスキルはわかっているけど、新しく増えているかもしれないから楽しみだ。


「さあ馬車に乗って、出発するよ」


 移動中暇なので両親にどんなスキルを持っているのか聞いてみることにした。

「お父さま、お母さま、2人ははどんなスキルを持っているの?」


「俺は武器武術才能と自己強化魔法を持っているぞ」


「私は広域補助魔法と広域攻撃魔法を持っていますよ」


「2つしかないのですか?」


「2つでも多い方だぞ、ほとんどの人が1つだけだ」


「そうですね。多くても3つでしょうね。あっでも、3年前に召喚された勇者様はスキルを5つも持っていたそうよ」


「それはすごいですね。それで、お母さま勇者ってなんですか?」


「勇者というのは世界を救う者の事ですよ。しかし、勇者様はもういないのですよ」


「いないって、どうしたんですか?」


「召喚された時にはもう死んでいたそうです。半身だけだったので当たり前ですが、スキルは死体を鑑定した時にわかったものです」


「へーそうなんだぁ」

 今の話を聞く限りだと召喚されたのは間違いなく私の半身だな、召喚された方にもスキルって宿っているんだな。という事は世界を渡った時に自動で付いたってことか。だとしたら、同じ日に生まれて称号もある私は勇者と同一人物だとバレるな。

 まぁなるようになるか、教会でオルティナ様に相談してみよう。


「サキ、教会に着いたぞ」


「わぁー!ここが教会か...ぅん?これが教会か?」

 この世界の教会がどんなものか楽しみにしていたけど、どこからどう見ても元の世界にある神社だった。


「サキ、ここはジンジャー教会と言って、リューノ辺境伯領にしか無い形の教会なんだよ」


「なんでこの領地にしかないんですか?」


「それは、初代リューノ辺境伯領領主の元いた国の宗教が神道と言われていて、その神道の建物が神社と言う名前だった事から代々この領地ではこの形の建物なんだ」

「そしてなぜ神社と言わず教会と言っているかというと、約100年前にこの国の宗教はスパシーチェリ教だけと定められたからだよ。詳しく話すと長くなるし難しくなるから、また別の機会にね。さぁ、早く中に入ろう」


「うん、お父さま」

 色々と気になる事が出来たけど、今はスキルの解放の方が楽しみだ。

 私はワクワクしながら教会の中に入って神主の見た目の司教様の話を聞くことにした。




「皆さん本日は3歳の節目の年に神様からの祝福、スキルを目覚めさせる解放の儀式を行います。本儀式を務めさせていただくイェピースコプと申します」

「スキルを目覚めさせるにはこの本に触れて、鑑定と言ってください。そうするとこの本を通して神様に祈りが届き祝福が得られます」

「それでは、まず1人目第一王子ヴァシロプロ・ギローイ・カラリェーヴストヴォ様壇上へお上がり下さい」


「はっはい!よっよろしくおねがいします!」


「そんなに緊張しなくても宜しいのですよ」

「スキルは既にその身に宿っております、本日の儀式はそれを目覚めさせて目に見えるようにするだけです。恐れることはありません・自然体で良いのです」

「では、この本に触れて下さい」


「はいっ、かんてい」


 ・・・キィィィンリンゴーン♪リンゴーン…♪*♪♯

「こっこれは⁉…素晴らしい‼スキルが3つある時に鳴る【祝福ノ鐘】です」

「スキルが3つの場合、称号も与えられている事もあるそうです。では早速スキルを確認してみましょう」

「これはこれは…、【剣術】【神聖術】【勇気】のスキルと《勇気ある者》の称号がありますね」

「おめでとうございます、ヴァシロプロ第一王子様。《勇気ある者》は勇者だけが持つ特別な称号だと伝え聞いています、これはまるで勇者の再来のようでございますね」


「このスキルにはじないようにがんばりますっ!」


「貴方様ならきっと大丈夫ですよ」

「では次の方、アバローナ・ギニナール様」


「はい!よろしくですわ」


「ではこの本に触れて鑑定と言ってください」


「かんてい!」


 ・・・キィィィンリンゴーン…♪*♪♯


「素晴らしい!この音はスキルが2つある時に鳴る【祝福ノ鐘】です」

「スキルを2つも持っている者は貴重です、年に3~4人程しか現れません。では早速スキルを確認してみましょう」

「これは…、【盾術】【治癒魔法】のスキルがありますね。とても珍しい組み合わせですが、確か先々代の近衛騎士団長と同じだったかと記憶しております」


「わたくしのおじいさまですわ!おじいさまとおそろいでうれしいです!」


「良かったですね」

「では次の方、ムドリェーツ・ヴァルシェーブニク様」


「はい!」


「ではこの本に触れて鑑定と言ってください」


「かんてい!」


 ・・・キィィィン…♪*♪♯


「これはスキルが1つの時に鳴る【祝福ノ鐘】の音です」

「ほとんどの人は1つだけなのでお気になさらず。では早速スキルを確認してみましょう」

「これは…、【賢者】のスキルがありますね。このスキルは勇者と共に現れると言われています、様々な知識を蓄えられてそれら扱う事ができます」


「これからもいっぱいがんばります!」


「では次の方、サキ・フォン・リューノ様」


「はい!よろしくおねがいします」

 ついに私の番が来たな。オルティナ様が3歳になったらまた会えるみたいな事を言ってたから何か起こりそうな感じがする。


「ではこの本に触れて鑑定と言ってください」


「かんてい!」


 ・・・キィィィンリンゴーン♪リンゴーン♪パンパカパーン♬☆*: .。. o♬o .。.:*☆♪☆*: .。. o♬o .。.:*☆♩☆*: .。. o♬o .。.:*☆・・・


「なっなんだこれは⁉」

「こんな音は聴いたことが無い…しかし、最初の部分から察するに4つ以上のスキルがある時の【祝福ノ鐘】の音でしょう」

「…オホン、では気を取り直してスキルを確認してみましょう。これは…スキルが見えないですね、この本では見えないので奥にある本体の方で見てみましょう」

「今代わりの者を呼んできますので皆様少々お待ち下さい」


 ・・・・・・・・・・・・・・・


「お待たせ致しました、この後の解放の儀はこちらのスヴィシェーンニクに引き継ぎます」


「スヴィシェーンニクです、では続きを始めさせて頂きます」


 ・・・・・・・・・・・・・・・


「リューノ辺境伯様この度はお手を煩わせて大変申し訳ございません」


「気にせずとも良い、私も娘の事が気になるからな。それに、スキルが見えなかったというのは嘘だろ」


「さすが、お見通しでしたか…。」

「その通りにございます、サキ様に確認されたスキルと称号はとても公に出来るものではございませんでした。特に称号が問題です」


「詳しく話してくれ」


「サキ様申し訳ございません、すべて話させて頂きます」


 全てという事は私が勇者召喚された者と同一人物な事や神様の友人である事も話すってことか。これだけ大事になったらここで話さなくても国王様には話が行くと思うし、それなら先に両親に話しておいて対策を立てたほうが後々面倒が無くていいかな。

「いいよ」

「お父さま、お母さま、これから聞くことはすべたしんじつです。きみがわるいと思うかもしれませんがさいごまで聞いてください」


「子供の言う事を信じない親はいないさ」


「えぇ、どんな事だろうと受け止めるわ」


「皆様、覚悟はよろしいですね、では話させていただきます」

「単刀直入に申し上げますと、サキ様は3年前に召喚された勇者と同一人物です。根拠はサキ様の称号に《異世界召喚に失敗したもの》があるからです。勇者様にも同じ称号があり、同じ日に生まれてきたサキ様が勇者様と同一人物と考えるのが妥当だと思います。ここまではよろしいですか?」


「うん、あってるよ」


「あぁ、続けてくれ」


「えぇ、続けて良いわ」


「では称号の話の続きから話します。サキ様は他にも〈神の友人〉〈食欲を満たせぬ者〉〈全てを喰らう者〉という称号を持っています」

「まず〈神の友人〉は神託が降り易いと言うよりも、自由に話すことの出来る称号だと思います。神の○○と名の付く称号は神職に現れやすいもので、似たものに〈神の使い〉と言うものがあります。これは神託を得られ易くなる称号です。サキ様は友人関係なので、一方的ではなく会話の出来る称号だと思います。」

「次に〈食欲を満たせぬ者〉は聞いたことがないです。ですが、名前から察するに常に空腹で満腹になることが無いという意味だと思います。おそらく〈全てを喰らう者〉に関係していると思います。称号同士が関連づいているのはよくある事なので間違いないかと。」

「最後に〈全てを喰らう者〉はかなり古い文献にかろうじて載っている程度です。その文献でも...彼の者天を呑み地を喰らいその後神をも喰らう...とあるので名前以上の事は分からないのが現状です。」

「称号については以上です。分からない事ばかりで申し訳ございません」


「いや、そうでもない。他人から聞かされると冷静になれるからな」


「ありがとうございます。次はスキルについて話しましょう。サキ様のスキルは【不老】【高再生】【生殖不可】【食鑑定】【再現変身】【食吸収】【武器武術才能】【自己強化魔法】【状態異常耐性】の9つです」

「まず、私が見た事のあるスキルは【武器武術才能】【自己強化魔法】【状態異常耐性】ですね。この3つは比較的誰にでも現れるもので特に珍しいものでは無いです。【状態異常耐性】にレベルの表示が無いのが気になりますが、それは今気にしても仕方ないです」

「次に、【不老】【高再生】【生殖不可】これらはスキルとして存在しますが、我々ヒューマン種には無いものです。【生殖不可】があるのはスキルは遺伝することがあるのでそれを防ぐためだと思います」

「最後に【食鑑定】【再現変身】【食吸収】これらは食事という行為に関係していると思います。食べた物を鑑定し己に取り込み、それを再現するという感じでしょう」

「以上で話は終わりです。こちらでは名前以上の事は見えないので詳しい事はご本人から聞いて確認してみて下さい。」


「ありがとう、詳しい事はサキ本人から聞く事にする。今日は世話になったな」


「お気になさらないでください、これも職務の範囲ですので」


「いえ、それでも礼を言わせてちょうだい。その心遣いが嬉しかったのです」


「しきょうさま、きょうはありがとうございます。またきますね」


「えぇ、お待ちしております」


 ・・・・・・・・・・・・・・・


 帰りは特に会話もなくそれぞれが何かを考えるような顔をしていた。お父様は詳しい話は明日話すと言っていたので今日は寝ることにする。

「おやすみ...Zz」

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