第2話、綺麗なお姉さんとお風呂タイム

「さーて、アロマバスを楽しみましょ! 今日はどの香りにしようかな?」


「んー……」//悩む


「サイプレスにしよっと」


//SE プラスチックボトルの蓋を回して開ける音


「サイプレスの香りってヒノキに似てるから、檜風呂に浸かってる気分になれるのよ」


//SE 浴槽の湯にアロマバスオイルをそそぐ音


「湯船に入れて混ぜると――」


//SE 湯をかけ回す音


「お湯がふわっと白くなるの」


「……」//大きく息を吸い込んで


「うーん、いい匂い! 森の中にいるみたい」


「きみも深呼吸してみて。ほら、一緒に――」

「スー――」

「ハー――」//実際に深呼吸する早さで


「リラックスした?」


「それじゃあシャワー浴びよっか」


//SE シャワーの音


「ゆっくりお湯に浸かりましょ」


//SE 湯に入る音

 耳もとでささやく。


「あったかい? アロマバスって香りがいいだけじゃなくて、身体の芯からじーんわりあたたまるでしょう?」


「……」//ほっとする


「気持ちいいわねぇ」


「眠くなってきちゃった。きみの肩に寄りかかっていい?」


「あれ? ちょっと緊張してる?」


「じゃあリラックスできるように、お姉さんがマッサージしてあげる!」


「うしろ向いて――」


//SE 湯の動く水音


//演技依頼 相手の両肩に手を置いた状態で、うしろから左耳の近くでささやく


「まず肩からほぐしていくわよ」


//SE 肌のこすれあうマッサージ音

//SE 動くたび湯面の揺れる音


「ぎゅっ、ぎゅっ、ぎゅっ――」


「硬くてっ――」


「全然指が入っていかないわ」


「まず軽くたたくわね」


//SE 肩叩きの音


「目ぇつむって、目のまわりの力も抜いて」


「口のまわりの力も抜いて」


「アロマの香りをゆっくり吸って―― 吐いて――」//深呼吸の早さで


「深呼吸、上手にできたわね。肩もずいぶんほぐれてきたわ」


「じゃあ秘密兵器、使っちゃおうかな」


//SE 木のボール同士が触れ合う軽やかな音


「これ、ひのきのボールなの。いい匂いがするでしょ」


「こうやって両手に二個ずつ握って――」


//SE 動くたび揺れる水の音


「肩の上を転がしていくの」


//SE 木のボールがこすれあう音


「肩が軽くなってきた?」


「よかった」


「……」//満足


「もう一度、私の手でほぐしていくわよ」


//SE 肩もみをするたび揺れる水音


「わ、さっきと全然違う!」


「すっかりほぐれたわね」


「肩はこれくらいにして、次は肩甲骨まわりのツボを押していくわよ」


「肩甲骨の内側を――」


//SE 声に合わせて、マッサージ音と湯面の揺れる水音


「骨に沿って、ぐいっ、ぐいっ、ぐいっと――」


「こんなにってるってことは、毎日がんばってるのね。えらい、えらい!」


「ご褒美にお姉さんがうしろから抱きしめてあげる。ほらほら遠慮しないで」


 距離が近くなって、左の耳もとで


「ぎゅぅぅぅ」


「ねえ、肌と肌がふれあう感触って、気持ちいいと思わない? 落ち着くでしょ? しばらく、こうしていてあげる」


「……」//左耳にお姉さんの呼吸音が聞こえる


「ぺろっ。あ、くすぐったかった? あまりにおいしそうな耳たぶだから、ついなめちゃった!」


「……」//いたずらをして楽しむ


「なめられたら落ち着かない?」


「じゃあ――」


//耳の近くで優しくささやく。


「背中に私の鼓動を感じてみて。ドクンドクンっていってるの――」


「人はお母さんのおなかの中にいるとき、鼓動を聞いていたって言われているわ」


「……」//左耳にお姉さんの呼吸音が聞こえる


「こんなふうにきみと湯船の中で抱き合ってると、だんだん私の鼓動が速くなっていくの。分かる?」


「え? 心臓の音より私の胸が背中に当たってるのが気になるの?」


「ま、そりゃそうよね。私、こう見えておっきいのよ。あ、見れば分かるわね!」


「……」//反応を面白がっている


「はい、じゃあ次は、こっちを向いて」


「大丈夫よ、にごり湯のせいで下は見えないんだから」


「……」//吹き出したいのをこらえている


「お湯の中でタオル握りしめてないで」


//SE 湯の中で回る水音


「鎖骨のまわりにもツボがあるのよ」


//SE 声に合わせて、マッサージ音と湯面の揺れる水音


「ね、こうして、ギュッギュッって鎖骨の下を押してあげると気持ちいいでしょ? 反対側も、ギュッギュッ――」


「そろそろあつくなってきたし、お湯から上がろっか」


//湯からあがる音

 いたずらっぽく、


「お姉さんが背中を流してあげる時間ですよ~!」


「椅子に座って」


//SE ボディソープのボトルをプッシュする音


「まずはボディソープを泡立てボールにたっぷり出して、ふわっふわの泡を作るわよ」


//SE 泡立てる音


「このボディソープ、グレープフルーツのアロマオイルが入ってるの。さわやかな匂いでしょ? これも私のお気に入り!」


「まずは背中を洗ってあげる」


//SE 背中をやさしくこする音


「なでるようにやさしく、やさしく―― 円を描いてクルクルと。かゆいところはあるかしら?」


「はい、脇の下も洗うから、少し手を挙げてちょうだい。自分で出来るなんて言わないで、今日は私に甘えていいのよ」


「次は私の手のひらを使って、リンパの流れを整えていくわ」


//SE 手のひらがすべる音


「腰からお尻まで――」


「あれれ? 下の方をさわられるのは恥ずかしいのかな?」


「……」//楽しんでいる


「心配しないでぇ。私、甥っ子の沐浴を手伝ったこともあるのよぉ」


「それとこれとは全然違うって、どうしてぇ?」


「……」//少し困って、


「うーん私、ときどきズレてるって、きみのお姉ちゃんにも怒られるのよねぇ。距離感がおかしいらしいのよ。自分では分からないんだけど」


「……」//気を取り直して、


「じゃ、腰とお尻はなでるだけにとどめて――」


「あ、逃げないでよ。リンパマッサージしてるんだから。手のひらで優しく、優しく、なでてあげるわ」


//SE たっぷり泡のついた両手で優しくなでる音


「するするするーーーっと」


「はい、こっち向いて。まだ胸もおなかも洗ってないわ」


「えっ、前は自分で洗うの?」


「遠慮しなくていいから私に洗わせて。きみ、リンパがどこ流れてるか知らないでしょ?」


//SE 泡立て用ネットボールが素肌をすべる音


「さ、次はおへその下よ。タオルをにぎりしめている手をどかしてちょうだい」




 ── * ──




「タオルをにぎりしめている手」の下に隠されたモノは!?

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