第3話、全身、洗われちゃいました

「さ、次はおへその下よ。タオルをにぎりしめている手をどかしてちょうだい」


「あらぁ、恥ずかしがり屋さんねぇ。真っ赤になっちゃって」


「……」//しょうがないと言いたげなため息


「そんなに嫌がるなら、おへその下は勘弁してあげるわ」


「最後は足のマッサージよ」


「ほら、ちゃんと足広げて。鼠径そけい部には重要なリンパの流れがあって、よくほぐすことで脚の疲れもとれるのよ」


鼠径そけい部がどこかって? 太ももの上にきまってるじゃない」


「そ、あしの付け根よ」


//SE ガタンと椅子をはねのける音

//SE 浴室の扉を開く音と同時に、


「わぁぁ、逃げないでってば!」


「待って! ボディソープをつけたまま出て行かないで!!」


//SE 浴室の扉が閉まる音


「まったくもう、びっくりしたわ。嫌なら嫌って言ってくれれば、無理やりにはしないのに」 


「残りは自分で洗い終わったですって?」


「じゃあボディソープは流して、次は髪を洗いましょうね!」


//SE シャワー音


「まずは髪を濡らしていくわよ」


「お湯だけでも汚れはかなり落ちるから、しっかり流していきましょうね」


//SE 優しく髪に触れながら、湯で流す音


「お湯の温度は熱すぎない?」


「ちょうどいいかしら。よかった」


「それじゃあシャンプーで洗っていくわよ」


//SE シャンプーのボトルをプッシュする音


「このシャンプー、シトラス系の香りなの。さわやかでしょ? 私、こういう自然の香りが好みなのよね~」


//SE 手のひらの上でシャンプーを泡立てる音


「頭皮に付ける前によく泡立ててっと――」

「モコモコの泡ができたわ! うーん、いい匂い!」


「じゃ、洗っていくわよ」


//SE 髪にシャンプーをつける音


「まずは全体に泡を行きわたらせて」

「五本の指で頭皮をもみほぐしていきまーっす」


//SE 頭をマッサージする音


「知ってる? 目の周りの筋肉も、首の筋肉も頭皮につながっているの。だから頭皮をやわらかくすることで、目の疲れや首のコリもとれるのよ」


「まずはうなじの生え際から、マッサージしながら洗っていくわね」


//SE 頭を洗う音


「力具合はちょうどいいかしら?」


「もうちょっと手を速く動かして欲しい? 了解よ!」


//SE シャカシャカと速めに洗う音


「耳のうしろも洗って行きまーっす」


「いろんな方向に、こまかく指を動かすことで血行を促進していくの」


「頭頂部に向かってマッサージしていくわね」


//SE 泡立ったシャンプーの音


「頭皮を動かすようにして、筋肉をやわらかくしていくわ」


//SE くるくると回すようにマッサージする音


「目ぇつむっててね。生え際洗うから」


//SE 頭を洗う音が移動していく


「こめかみの生え際に向かいまーす」


「洗い残しはないかしら? かゆいところは?」


「じゃあ最後に、頭全体をタッピングするわね」


//SE 両手を合わせて、手の甲で軽くたたく音


「軽くたたいて、血行を良くするのよ」


「それじゃ、シャンプー流しまーっす」


//SE シャワー音


「水の流れる音って、癒されるわよね~」


「しっかり洗い流せたわね」


//SE お湯を止める音

//SE コンディショナーを手のひらに出す音


「最後にコンディショナーよ。髪全体に行きわたらせて――」


//SE 優しく手櫛で髪をすく音


「いい匂いが浴室中に広がるわね」


「少し待っている間にツボを押していくわ」


「肩こりや首こりにも効くし、眼精疲労も取れるわよ」


//すぐうしろから、耳もとで


「まずは耳のうしろ―― うなじのくぼみにあるツボ」


風池ふうちって言うの。ゆっくり押していくわね」


//SE ツボ押しの音


「少しずつ力を加えていくわ。痛くない?」


「よかった」


「次は頭を支えている筋肉の外側、うなじの生え際にある天柱てんちゅうを刺激するわ」


「どちらも頭をすっきりさせてくれるの。毎日、一生懸命がんばっているきみに、ぴったりでしょ」


頸椎けいついの左右を押しながら、少しずつ上にあがっていくわね」


//SE ツボ押しの音が移動していく


「痛くない? もっと強くしたほうがいいかしら?」


「それじゃあ前に倒れないように支えるから、ひたいにふれるわよ」


「あ、きみのおでこ、あったかい」


「え? 私の手のひらがやわらかくて気持ちいい?」


「……」//満足


「最後に頭の頂点――」


「よく百会ひゃくえのツボっていうでしょ? 自律神経を整えて、今夜ちゃんと熟睡できるようになるわ」


「さ、そろそろ流していきましょうか」


「眠くなっちゃった?」


「リラックスできたなら良かったわ」


//SE シャワーの音


「すすぎ残しもなさそうね」


//SE シャワーを止める音


「軽くタオルドライだけしておくわね」


//SE タオルで頭を拭く音


「あとは顔を洗って、あたたまったら出てきてね。私は着替えるから一足先にあがってるわ」


「あ、これ私がいつも使ってる洗顔フォームよ。どうぞ使って」


「バスタオルと着替えは、外のバスケットの中に入ってるから」





── * ──




次回『お姉さんのネグリジェを着せられました』

用意されていた着替えとは……

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