第二章:境界少女

10:罪悪の彼岸

 こう話したところで学校の誰にも信じてもらえないだろうし、そもそもあいつらと最後にまともに喋ったのなんて数ヶ月前の春ごろに遡るけれど、とにかく私だって、ヒトが死ぬのを見届けるのは今もこわいし、できれば誰一人として殺したくない。そう拒むわけにもいかないから、敢えて少しも気にしていない風を装っているだけだ。


 日の暮れた山道は風通しが厭にわるく、普通に歩いているだけでも蒸してくる。


「もう七月かあ、夜なのにすっかり暑いねえ」


 慣れ親しんだ路は灯りが一切なくても迷うことがない。進んでいると、後ろから予定外に話しかけられた──ふいに。足首のあたりに這うような感覚がおそう。まとわりついていたクモの糸を蹴り上げるようにして払い、頬を叩いて表情を失わせてから振り返って、


「この辺は特に暑いし、奥に進むとさらにしんどくなるんですよ。大変かと思いますが、目的地まで後少しなので、どうかご辛抱を」


「ご辛抱を、かあ──玲奈ちゃんはしっかりしてるねえ、中学生なのに」


 そう言って私のうしろをついてくる彼は、一見すると年端もいかぬ短パンの少年のようだけれど、の見た目がいっさいアテにならないというのは我々島人のなかでは常識以前の消息だ。口ぶりからして、実年齢は私の三倍はあるんだろう。


「そんなことありませんよ。言いつけ通り、言われたことをこなしてるだけです」


 そして、ほぼ初対面の同行人とこうやって、言ってしまえばどうでも良い会話を交わしつつ進むのも、正直気乗りしないけれど、私たち少女に課せられた役目である。「私たち」というのは、本当はじぶんのほかにもう一人、かの短パン少年を目的地まで導く人間が選ばれていたのだけれど、体調が悪い、とかなんとかで。


 辺りの深緑がさわさわとさんざめくような音を鳴らす。ようやっと道奥に見えてきた赤い鳥居も、おぼろげな輪郭と見紛うくらいに堪える蒸し暑さ。首筋をひんやりとした汗が伝った。


 ──本当は私だって、心の底ではズル休みしたい、のだと思う。でも休んだところで何の得もないと解っているし、あるいはこの責務から逃げた先に、私が望むような憩いすらも。


 だから心の底に住むこんなよわみは、本当の私じゃないって事で、表に出てこれないように閉じ込めてやっている。額の汗をぬぐって、何でもないという風に少年のほうを振り返り、着きましたよ、と呼びかける。──そういえば、彼の名前すらも訊いていなかったな。呼びかけて初めて気づくほどに、名前を知る必要すら省けるほどにはこなれてしまった。月に一度行われる、周枦島あまはしじまの伝統を紡いできた儀式。


「ああ──もう着いたんだね」


 葉音に掻き消される少年の声。わくわくした映画を視終えたときのような、あるいは乗っていた車が自宅に着いたときのような、感情の薄い余韻。


「そうですね、ここが周辺あまべ神社の入口です。ここまでお疲れさまでした」


「うん、連れてきてくれてありがとうねえ、玲奈ちゃん──それで、ぼくはここで何をしたらい」


 少年の継ぎ句をまたず、その可細い首に飛びかかるそして両手を回し、きゅっと力を込めてやる。


 どこかを数羽の鳥が飛ぶ音がした。すぐに何も聞こえなくなる。

 いただきます、と誰にも聞こえないように吐息だけでつぶやく。



 こうやってすぐに夜森の静寂にもどることができたのは、彼自身にこうなる覚悟が既にあったからだ。私たちのために、死ぬことを受け容れてくれたからだ。






 鳥居をくぐって境内を進むと、弾ける音を立ててゆらめく焚火があった。そこに先程できあがったばかりの「供物」を投げ込めば、私の役目は完了する──


 周枦島の平和と恵みのため、月に一度、ハシビトひとりの命を捧げる。ハシビトの死はかならず、ケガレなき少女が見届ける──と呼ばれるらしいその儀式は千年以上も連綿と続けられてきたようで、今も大人たちの間でありがたがられているという。


「──悠久に続く恵みがために。いつかきみが還りくることを」

でも、私たち中学生にとっては。昨日まで学校にいたともだちをみずから葬る、訳が分からない狂気の沙汰、でしかない。


 だからせめて自分だけでも正気で居るために、いただきます、ともう一度。確かめるようにつぶやいてみる。



 一九九九年七月、初夏の夜。誰もない山奥の神社で火柱が昇った。私は両手を胸の前で組み、そっと目を閉じる。視界はずっと暗いままだった。






 ──その日の帰り道、私はソレを初めて視ていた。


 山のふもとを降り、地続きの公道に出ると、ガードレールのむこうに一段下がった砂浜が開けて見える。黒に染まった海原が夜空との境界を失くしていて、澄んだ白い星の照り返しを転がるようにゆらめかせていた。


 このあたりの海岸はもともと人通りがほとんどなく、なんとなくひとりで居られる場所として、私もよくハシガリの前後におわすことがあった──今日は流石に暑くて、一刻もはやく屋内に戻りたかったけれど。


 自宅をめざしてガードレール沿いに歩く。十分もすれば漁港に船舶が行儀よくならんでいるのが見えてきて、過ぎればうちの屋敷を含む民家街に着くだろう。公道はところところアスファルトの割れ目や雑草がひしめいていて、観光客らへのバリアフリーへは一切配慮されていない。観光客なんて見たことないけれど。


 そんなわけで、無人の海原を右手にいだきながら、手のひらにまだ少し残った生暖かい感触を確かめつつグーパーしていると、


 不自然な水色の輝きが水面に交じわっていた。毎朝起きると目に入る壁掛け時計が、まったく別種のものにすげ変わっていたような違和感。ぶる、っと。暑さに堪えているはずの身体がかじかんだように震える。白いブラウスと肌の間を汗がつたうのを感じながら、私はソレの正体を捉えるためにガードレールをまたいで乗り越えた。


 人影だった。正確に言えば、ハシビトの影。何十メートルも向こうにいる彼女がソレだと解ったのは、単に異様に目立つ水色の長髪をたくわえていたからではない──この島にいる千人もいないヒトは、大体全員その顔を見たことがあるから。そしてこの島を訪れる外部の、本土の人間は決していないはずだから。だから砂浜まで降りて、ざく、ざくと踏みしめて、ようやく水色の彼女の顔が目に入ったとき、ああ、またハシビトがやって来たんだ、と瞬時に悟ることができた。



 水色の少女は両手をだらんと垂らしながら棒立ちしていた。私と目が合った瞬間も、ただ首を糸に惹かれたように傾けただけで。それにしても、真夜中の海岸に、それもあの山のふもと近くに、ハシビトひとりというのは中々慣れない。本当にこの島にやってきたばかりなのだろうか──


 それにしても。


 水髪のハシビトは、桜の華みたいに映えたピンク色の装束に身を包んでいて(異様な衣装を平然と着こなすのもハシビトの特徴だ)、初対面ながらに随分似合っているものだと勝手に思った。



 そして目が合ったとき、彼女は涙を頬につたわせて、泣いていて。


 初対面ながらに、随分似合わないものだと勝手に思った。




 その勘は偶然にも正鵠を得ていたようで、彼女の涙を見たのは思えば、あの出逢いの瞬間が最後となった。


 ラビーとの出逢いの瞬間だった。






 周枦島という島が東京都に含まれていることすら、二十世紀も終わろうとする日本ではほとんど識られていないはずだ。


 東京都南南西の太平洋上にある、直径4キロメートルほどのこじんまりとして孤独な島。


 ここではハシビトと呼ばれる、私たちとはちょっとだけ違うヒト達が多く住んでいる。共存している──もっとも、その裏には。私のような少女が手をケガして、命の恵みを奪う理性皆無の狂気がひしめいているのだけれど、そんな残酷すらも承知したうえで、大人たちは笑顔をうかべて残されたハシビト達と手を取り合っているのだとしたら、私はまた当分、そっち側には行けそうにない。


 でも、それで良かった。私が私の心を殺して、老いたハシビト達を殺すハシガリを続けている限り、大人たちは喜んでくれるし、私の世界に波風が立つことはない。ちょうどいま後にした、黒と白の海原のように──


 びゅう、と髪が後ろから撫でられる。そうだ、結局。誰がどんな狂気を孕もうと、取り巻く環境がどんな方向へ捻じ曲がろうと、私さえ、この私さえ変わらなければ、ずっと透明なままでいられたのだ。


 それでも敢えて、被害者ぶってわずかな記憶を辿るならば。


 ラビーが全部を壊したのだ。私の中のよわみが剥げて、こぼれ落ちてしまうくらいに。


「──あなたは?」


 無言で去るはずだったのに、きみがそんな声で呼び鈴を鳴らすから。


枦堂玲奈はしどうれな。ただの中学生」



 人通りのない夜の海岸で、私たちはふたりきりだった。




  ──第二章 境界少女──




 ひとりで過ごすには広すぎる畳の一室で目が覚めた。


「おや、もうすぐお目覚めの挨拶をする予定が、ひとりでに」


 枕元で正座して待ち構えていた美由さんの膝が、目を開けて最初に視界を占めていたとしてももう驚かない。


 壁掛け時計を見る。午前六時。昨晩の帰宅は若干日を回っていたので本能に従えばもう少し眠っていたいのだけれど、私なんぞを美由さんに起こしてもらう方が理性に従えば申し訳なく、結果として前よりも起床が大変得意になった私である。


 前よりも。


「明日になると、もうご学校が夏休みに入るのでしたっけ。今日は午前授業で──」


「少し前まで新学期だったはずなんですけどね」部屋の奥で障子を開ける美由さんに、私は布団に座ったまま伸びをして答える。「それよりも、今日はすぐ家に帰って来て良いのでしたっけ?」


 それは、と美由さんは振り返りつつ目を逸らす。


 私は合点した。そうか、今日も──と思いながら、暇つぶし用の本をどれを持っていこうかと思案し始めていた。


 少ししてから、寝巻を脱いで十字架のポーズを取り、美由さんに学校の制服を着せてもらう──ブリ―ツスカート、最近少しサイズが合わなくなってきたブラウス、赤の大きすぎるリボン。当然女子中学生たる私にとって誰かに着替えを手伝ってもらうと言うのは屈辱をどうしても含まざるを得ないけれど、私の朝一の世話をなにひとつ担えないとしたらそれは美由さんの屈辱たりうると他方で解ってもいて、妥協点としてコレが毎朝のルーティーンとなっている。一ヶ月前よりも随分面の皮が厚くなったとわれながら思う。


 一ヶ月前よりも。


 立派な部屋を自分だけの寝室として与えられ、使用人まで付くと来た。こんな身に余る生活を享受させていただくことになったのは、感覚よりもだいぶ昔のことらしい。



 その日も廊下に出ると、見知らぬ大人たちが隣の部屋──父親の部屋を出入りしていた。畏まった黒白基調の服は、エンジュの葉に囲まれた一見閑静な木造屋敷に対してあまりに似つかない。ハシビトよりも人間離れして視える──ところが人間とは不思議な生き物で、我が家に他人が平然と行き来する環境すら、日常として押しつけられ続ければ、住めば都として享受できてしまうようなのだ。


 ──途端、えづくような咳がせり上がって来る。口を押さえて収めてから、胸元をリボン越しにさする。ふう──と息を整えていると、背後から美由さんが「ご準備は万端ですか」と話しかけてきた。良かった、何もバレちゃいないみたい。


 とはいえそれは使用人さんとしてどうなのかと意地悪く思いながら、私は振り返って言う。


「父さんから、何か──」


 ばつが悪そうに咳払いをする美由さん。──ごめんなさい、ちょっとだけわざとです。


「──から、何か伝言はありますか」


「ハシガリは、首尾よくこなせたか、とだけ。それと──そろそろ月イチでなく、週に二、三回、行わなければならなくなるようで。どちらかというとお父様というより、晏司あんじ様からのお達しのようですが」


 晏司──というのは、最近になってよく聞く名前だ。名前か苗字かもわからない名前。父さんがやけに懇意にしているのも、我が家を出入りしているのも、晏司サマというおそらく偉い方が関係しているのだろう、と勝手に想像している。


「はは、そりゃあ、捧げないといけないハシビトはたくさんいますからね。父上も本望でしょう」


 当然、捧げないとなんて大人っぽい言葉を使うのは望むところではなかった。屋敷の奥で会合の振りをしていないで、言葉遊びに興じていないで、ちゃんと殺さないと、と言えよと。


 それでも美由さんにこれ以上の心労をかけまいと、私は今日も父親と会えないことを彼女の言外に悟って、いってきます、と一言だけ。


「いってらっしゃいませ。本日のお姿も、かわいいですよ」


 美由さんは頭を下げる前にそう言った。どきん、と一度だけ、胸の中で何かが跳ねる。


 数歩進んでからなんとなく振り返ってみる。彼女こそ一ヶ月前までは、ただのお隣さんのはずだった。中学生にもなる私をかわいいかわいいと、からかい半分で贔屓にしてくれる美由さんのはずだった。私が「父さん」と口走ったことへのささやかな意趣返しだと納得するには、だから容易いはずなのだけれど──美由さんのさらに背後を、きょうもやはり見知らぬ大人達が我が物顔で往来していた。





 通学路、というほどでもない街路で、目の前に多くの同学生が歩みを進めていた。周枦島には中学校がひとつしかない、それも幼少中高と併設された校舎にまとめられているので、島中の子供たちが吸い込まれるように一点へ向かうのが毎朝の光景だ。


 知り合いも何人かいるなあ、と背後から無言で眺めやる。夏休みを間近にひかえた今日は授業も午前で終わるので、朝の時点から足取りが軽やかなのが見て取れる。私はすでに、次のハシガリが遠くない未来であることばかりに思いを馳せていたけれど──



「──ああああーーっ!!! いた!! 見つけたレナちゃん!!!」



 頭をかき混ぜられたような気分だった。


 朝の茶飯事を一気にぶち壊しにする甲高い声の主は、私の正面から、つまり通学路を逆走する形で一気に近づいてきて、当然周りの生徒の衆目を一手に集める。


 私の前で立ち止まると、全速力で走って来ただろうに息を切らす様子もなく、顔をあげて目をかっと開いた。


「もーー!!! なんで昨日は置いてっちゃうの!!! ラビーめっちゃ困ったんだけど!!」


 まだ涼しい朝なのに汗がこめかみに垂れる。視線が、目の前の水髪少女だけない、私にまで刺しこまれるのが明らかに感じとれた。


 俯いて喉を鳴らしていると、ラビーと名乗った目の前の少女は、昨晩にも見たピンク色の装束をばたばたとお転婆に揺らしながら、「きのうはさあ、頑張って走ってくあとをついってたのに、夜だしすぐ見失っちゃって!! おかげであの海のところで過ごすはめになって超困ったよ!!」


「……困ってるのは私だって、」


「え、なんていった??」


「──くっ」


 埒が明かない予感しかしなかったので、私は顔を下げて、焼け石に水なのは解っているけれど目立たないようにその場を走り発つ。



「あああーー!!! 待ってよーーーー!!! どこいくの!?!?!?」


 ──当然、逃げ切れるはずもなく。何より最悪なのは、このまま学校までアイツがついてきてしまうことだ。昨日も去り際しつこく忠告したというのに──きみの為を思って。


 それでも私のことを雛鳥のように諦めない彼女を後ろ目に確認しながら、私はやがて堪忍し、人通りの少ない裏路地へ避難した。急に立ち止まった私に対し、勢い余って衝突した彼女は、ぐへっと古典的な悲鳴とともにその場へ崩れ落ちる。袖の長い装束がすでにあちこち汚れていた。


 ラビーと名乗る彼女に軽く突き飛ばされた私は、建物の壁にそのままもたれかかるようにして腕を組み、意を決して水色の脳天に吐き捨てる。


「この島で私には関わるな、学校にも家にも来るな、って言ったよね? ハシビトさんも言葉は理解できるはずでしょ」


「わからないよ!! なんでレナちゃんについてっちゃいけないの!?!?」


 ……いちいち声のボリュームが大きいなあ。折角目立たないところまで逃げてきたのに。


 おそらくこの島にやって来たばかりであろうラビーに対して、事情をつまびらかにしても理解に苦しまれることは想像に難くない。だからなんとか、言外に空気を読んでほしいと。私がやんわりとあなたを拒んでいることを察してくれと。


 目の前のこの子に対してはもっとも無茶な要求だと悟りつつも。


「それに、学校にはどうしたってついていくよ! ラビー学校通うんだから!」


 ……え。


「さっきね、海岸で起きてからこのあたり歩いてたら、おばちゃんに話しかけられて、なんかいろいろきかれた後、皆についていって今日から学校に行きなさい、って言われたの。あっでももうすぐ行かなくてもよくなるんだよね! 夏休みっていって」


 ……なるほど、すでに。行政側でラビーがやって来たことを認知し、登録し、精神年齢的に学校へ行かせることが妥当と判断したのか。そういうロールを彼女に与えたのか。この島に生きる子供としての一通りの手筈や知識もインプット済みなのだろう。


 結果、さっきの生徒の人だかりにも相当数のハシビトが含まれている。おそらく三分の一くらい。


 おかげで唐突にクラスに転校生ハシビトが来ることは何も珍しくないけれど。


 こいつは幼稚園とかが妥当なんじゃないのかな。中学校では少なくともなくて。


「だからレナちゃんと一緒に学校に行くことは当然の権利なんだよ!! 楽しみだなー、えへへ」


「……わかった、わかったから」


 その後、私は改めてラビーに忠告する。学校までの道では目立った大声を出さないでほしい。学校の中では(そもそもラビーが私と同じ中学生になった場合のみだけれど)話しかけず、関わらないでほしい。眉を大げさにしかめる私に対してケタケタと笑い続ける水髪を見るたび、のれんに往復ビンタしてる感覚がぬぐえなかったけれど、ともかく。


「よし、じゃー一緒に行こっ!! 楽しみ~~」


「だから早速声大きいって!」


 思わず、ことばが止まらなくなってしまう──自分らしくもない。


「あのね、本当にそんな目立つ真似をこの後もしたら、本当に──怒るから」


「怒るって、何するの?」


 並んで歩き始めたラビーが私の方を振り向いて言う。屈託が含まれていないことは解っていた──それはなんだか新鮮な感覚であるけれど。


 だからといって都合が良いわけでは決してない。


 だって、私は純朴すぎる彼女の問いに対して、押し黙ってしまった。使と、本当は打ち明けても良かったのに、それができなかった。その事実も結局、昨日やって来たばかりのハシビトに告げるには味付けが濃すぎるだろうから。


 だから私は言葉の衝動を呑み込んで、


「……別に、ただとにかく私の近くではしゃぐのはやめて。そもそも学校なんてそんなはしゃぐような場所じゃないし。別に、楽しい事なんてないんだから」


 楽しい事なんてないんだから。


 自分自身にも言い聞かせるようにつぶやいて、私はラビーを連れてしぶしぶ学校へ歩み始めた。


(続く)

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