第46話 ウラの気持ち。
人類の為にこの艦を爆発させてカオスに打撃を与える。
コウワはそう思いながらカオスに入り、奥に進むまではダイキュ達に攻撃を任せて、コウワはAIのスグゥイと共に情報収集と調査を行って、わかる度に中継をしていた。
だが推定で中央に近づいた時、侵入してきた大穴は閉じた。
通信が死んだ事にはまだ気付かなかった。
ここで気付ければまた違ったかも知れない。
そして壁の脈動と火炎弾で傷付けた部分の破損具合を見て生物に近いと理解した。
これはカオス自体が巨大生物を生み出す魔物ではないかと推察した時、眼前にはまた新種の魔物がいてブリッジは攻撃をくらい爆発をした。
「ノウエくん!ノウエくん!聞こえるかい!?」
ヒグリは大穴が塞がった時に嫌な予感がして散々呼びかけたが、ノウエからの返事はない。
「まさか…ジャミング?穴が塞がったから?」
慌てて皆に外壁に穴を開けなければならない話をしたが、手持ちの武器では先程傷付いた部分は硬くなっていて、傷が付いても穴は空かなかった。
皆が慌てる中、メアリを連れてきたダイキュだけは、「大丈夫だよ。パパはもうすぐお姉ちゃんのところに着くよ」とヒグリに言う。
ヒグリが「ダイキュさん?」と聞き返すが、ダイキュは返事をせずに中空を見て「ダイキュ頑張るよ」と言うと、メアリの手を引いて「ママ、ママじゃないママ達の声が聞こえるの。氷魔法の使い方を知ってる人を教えて貰ってって言われたよ」と言う。
ヒグリは戦闘部から氷魔法の使い手を1人戻すとダイキュに説明をさせた。
「うん!わかった!ありがとうおじさん!」
ダイキュはヒグリがら端末を借りると、「ウキョウおじさん!ダイキュとパパは主砲を使うから守ってね!」と言って主砲のある部屋を目指していた。
コウワは死を意識していたがまだ生きていた。
激痛に目を開けると口の中が鉄臭く、左腕は無くなっていた。
自分が横になっている事と、ここがブリッジでない事に気付くと、「起きましたか?」とウラが声をかけてきた。
「ウラ?」
「先生を見つけました。簡単な治癒魔法と止血しかしていません」
周りを見るとブリッジではなくサブルームにいて、出入り口では金のダイキュが侵入してくる魔物達に「あっちに行け!」と言いながら攻撃していた。
コウワが「状況を教えなさい」と言うと、ウラが「AIスグゥイが攻撃を察知してセーフティシャッターを起動。ホムンクルスを端末化して私とダイキュに先生の保護を求めました」と説明をする。
それはどうしても機械的な動きと思考しかしない人造人間では、乱戦時にトラブルになりかねないので、スグゥイの端末として動くように操作をしていた結果である事をコウワは理解した。
「機銃のダイキュ達は?」
「11体のダイキュのうち魔物にやられたのは8体。3体は今も機銃でカオスや魔物達にダメージを与えています」
コウワはここまでなのを理解した。
「スグゥイ。聞こえているわね?」
「はい博士」
「ホムンクルスとシルバーズでカオス外壁に穴を開けたら記録を射出して、マッシィータ艦に拾わせなさい。戦闘記録は一つも無駄にしないで。その後はここで艦を自爆よ」
「了解しました」
スグゥイは指示を出したのだろう。
すぐに銀ダイキュとホムンクルスは外壁に向けて行こうとした。
「ウラ、ダイキュ。ありがとう。ここは私1人で平気よ。自爆の計算をするからあなた達は臨界まで主砲を放ちなさい」
「……はい」
ウラの表情と声にコウワが「ウラ?」と声をかける。
「お父様が一緒に暮らそうと言ってくれました。お父様に会えないですよね?」
「ええ。会えないわ。でもねウラ、私達が戦えば皆が笑顔になる。あなたのお父様も向こうのダイキュも幸せになれるわ。喜びなさい」
そう言われても表情の暗いウラ。
命令には従うように育ててきたからおとなしくオンボ艦に戻ったが、心の中にはノウエから言われた帰る話が残っていて、死にたくない気持ちがドンドン膨らんできた。
「ウラ?1人で逃げてダイキュやシルバーズを見捨てるの?」
「……いえ」
ウラは泣きそうな顔になったが、口からは「わかりました」と言葉が出てくる。
その時、「帰るぞ」と声がして「パパ?」と聞こえてくる。
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