第45話 単独でカオスに入るノウエ。
ダイキュ達がオンボ艦に戻って5分。
魔物の群れは俺たちではなくオンボ艦を狙い、主砲と副砲はこれでもかと撃ち込まれ、火柱が上がっているのが見えている。
「ノウエくん。コウワ女史のせいで新たな命令が降りてきたよ」
コウワの打ちつけた中継アンカーのせいで通信が生きていて、マッシィータからは新たなオーダーが入ってきた。
それは無理難題も良いところで、金のダイキュ、ウラ、コウワの確保。これは順番がそのまま優先になっていて、クローンの作れるダイキュを優先していた。
そして俺の無事な帰還。
その為に俺以外のウキョウ達を含めた兵力をカオスに突入させて、何とかしてこいと言うものだった。
「俺がそれに従うとでも?」
「いや、だから僕達は逃げられるように当初の予定に従って、今もメンテナンスを行っている。この間にオンボ艦に向かってもらって皆を連れてきて貰いたい。臨界までの時間勝負な事と、君自身あの攻撃力では周りを巻き込みかねないから単独で行って貰いたい」
これにはバシンやウキョウ達が異論を唱えたが、俺自身それが良いと言って「メアリとダイキュが心配だから艦をよろしくお願いします」と頭を下げる。
「ヒグリ、艦の爆発までに俺が戻らなかったら見捨てて逃げてくれ」
「…まあ帰っても裁判で極刑だろうけど、ここで得た情報をせめて持ち帰るよ」
「え?そうなのか?」
「君ねぇ、認識が甘いよ。下手をしたらメアリさんは第二のコウワにイジられるし、ダイキュさんももっと悲惨になるからね?」
「…それは困る。必ず帰ってくる」
俺は栄養剤を飲んでありったけの武器を装備すると、キーバッハさんが「1人で企業の転覆も出来そうだな」と笑ってきた。
「持ち上げすぎです」と笑った俺は「行ってきます」と言って飛び出して、すぐに「パパのバカ!お見送り!」と怒るダイキュの声が聞こえてきた。
「あ…、ごめん」
「もう!ダイキュ怒ってるからね!」
俺はダイキュと談笑しながら刺突槍でハウスバッファローを切り裂く。そんな事をしながらカオスの中心を目指した。
カオスの中は一目でわかる危険具合だった。
出がけにヒグリが持たせてくれた端末に目をやると、オンボ艦は健在でカオスの中を進んでいてコウワが実況中継を行っている。
機銃部分は銀のダイキュが担当していて、主砲をウラと金のダイキュが担当している。
中の魔物は見た事ない奴らも居るが、戻りを気にしないオンボ艦の特攻の前では無力で圧倒的質量に押し潰されていた。
「忌々しい。オンボ艦がデカいから姿は見失わないが、走っても中々追いつかない」
困るのはひだのような隙間から湧いてくる魔物達で、隙間はそう大きくないのに巨大な人形の魔物なんかが道を塞いできていて鬱陶しい。
まだコウワの実況が聞こえてくるからダイキュ達が無事なのがわかってありがたい。
こう思うとオンボの技術力も物凄い。
AI補正でここまで艦が運用出来るのなら、これからの陸上戦艦は大きく変わるだろう。
確かにコウワではないが、ここまでくると平和の為に全滅出来るものならしたくなる。
だがこのサイズ感を前にすると、俺がオール20とか言われてもちっぽけ過ぎて話にならない。
この時、最大限気を使っていたつもりだが俺は油断していた。
コウワの実況中継が聞こえるから平気だと思っていたが、ヒグリ達の声が聞こえていなかった。
「ヒグリ、もうすぐオンボ艦に取り付ける。そちらはどうだ?」
俺の呼びかけに反応がない。
嫌な予感がして振り返った時、帰り道が無くなっていた。
明かりはオンボ艦の放つ火魔法で明るくて大穴が閉じた事に気付かなかった。
そしてコウワの「…これ…。生命体です。カオスこそが巨大な魔物です。オーク達はカオスの体に棲みつく微生物のような物です」と言う声が聞こえてきた直後。
オンボ艦が動きを止めて艦首が爆発をした。
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