第44話 合流。
俺は夢で会ったダイキュとビーコを思い浮かべて、「これ以上やらせるか。助け出す」と言って、「バシン、俺はアンカーと刺突槍を持つ。艦に護衛兼俺への栄養剤と武器渡し係を残してくれ」と言って1回目の栄養補給を行う。
「ダイキュ!ウキョウ!頼んだ!」
俺の声に合わせて副砲の部屋の映像になる。
「パパ!任せてね!」
「こちらはなんの問題もない。副砲発射後に遊撃行動に入る」
ウキョウが「総員!副砲発射と同時に減速。停止と同時に戦闘状況になる。非戦闘員は艦中央へ、臨時部署に向かうものは速やかに移動してくれ」と言い、カウントと共にダイキュとウキョウが火魔法をエネルギー源の水晶に貯めていく。
「ダイキュ、1度目はこれを全て放つ。その後はもう一度2人で満タンにしたい。頼めるかな?」
「いいよ!」
「頼もしい。頼りにしているよ」
「うん!」
俺はウキョウと頑張るダイキュを見て、微笑ましい気持ちになりながらウキョウに軽く嫉妬をした。
直後、ダイキュとウキョウの火炎弾がコウワが開けたカオスの大穴に当たり火炎柱が巻き起こる。
「魔物を狙ってダイキュさん達を巻き込んだらダメだから巣穴にしたからね」
「了解だ。停止と同時に出られるようにハッチオープンしてくれ」
艦の減速が始まりハッチが開き始める。
キーバッハさんとバシンが「死ぬな。誰もが最善を尽くす。だが最優先は生き残る事だ」、「死力を尽くす。ノウエは異常者だ。見て真似する必要はない。己の持てる力を出せ」と言い、皆が「おお!」と言った時、ハッチは完全開放された。
「俺が先に出る。皆は俺の攻撃を見てから出てください!」
俺は前に飛び出す。
オンボ艦はボロボロだがまだ生きている。自走可能なら連れて行くが、最悪は捨てて行く。
新種は残り7体。
肥大した個体はヒグリの言っていた雷を浴びて活性化した個体、ダメージと強化が同じとかタチの悪い。そもそも何だあれ?
走ると初期に倒されたダイキュだろう。
魔物に食いちぎられたのか上半身しかないダイキュや、毒で紫になってパンパンに腫れ上がって苦悶の表情を浮かべるダイキュなんかもいる。
連れてこられた子供達も皆死んでいた。
その姿が俺に怒りを覚えさせて怒りが力に変わる。
「ダイキュ!お前達!伏せろ!動くな!」
刺突槍を構えて全速力で新種にぶつかる。
新種は硬い。
刺突槍が刺さりきらずに歪んだ。
「ちっ!ヒグリ!この新種は体表が硬すぎる!一撃で刺突槍が歪む!残りの刺突槍は俺が使う!指示を出してくれ!」
イヤホンからは「了解」と聞こえてくる中、ダイキュ達を見ると銀のダイキュは異物を見るように俺を見たが、ウラと金のダイキュは俺を認識して「お父様?」「パパ?」と言ってきた。
「そうだ!少し待っていろ!雷撃!!」
今の俺に魔法砲撃銃は不要だ。
全開で雷撃を放つと、最初は耐えた新型がすぐに耐えられなくなり弾け始める。
「よくも俺の娘に傷を付けたな!」
俺は弾き飛ばした個体に向けて悪態をつきながら息を整えて「キーバッハさん!バシン!頼みます!」と言う。
この時、俺は見えていないが、オンボ艦ではコウワが俺を見て「皆さん!見えますか!希望です!人類の希望が現れました。ナインです!彼は魔法砲撃銃すら持たずにあの新種の魔物すら打ち滅ぼしました」と言うと、「我がオンボの戦力は壊滅的。連れてきた子供達も皆戦死しました。彼らの命の責任を取るためにも私はこの艦を奴らの巣の中で爆発させます」と言っていた。
俺の方はそんなことも知らずにバシン隊が銀ダイキュ達を保護し、小型や中型の魔物達をキーバッハ隊が相手をしている間に、ウラと金のダイキュを抱き寄せて「遅くなったね。迎えにきたよ」と声をかける。
間近で見るウラは確かにキタコによく似ているし、ダイキュはあのダイキュによく似ていた。
「お父様?」
「パパ?」
「ああ、もう戦えないから帰ろう」
「帰る?」
「でも魔物を全部倒してないよ?」
「いいんだ。魔物は俺が倒す。2人も他のダイキュも皆頑張ったよ。俺と暮らそう。ウチにはママも妹もいる。皆で暮らすんだ」
俺の言葉にウラが「帰っていいのですか?」と聞き返し、ダイキュが「帰りたい」と言った時、オンボ艦が動き始めカオスに向けて前進をしていた。
俺が状況を知りたくて「ヒグリ!?」と呼びかけた時、オンボ艦からは「アルファ!ベータ!皆!艦に戻って。艦を護衛しなさい!艦をカオスの中で自爆させて魔物を倒します!お父様達に頑張りを認めて貰いましょう!」と聞こえてきて、ウラと金のダイキュは艦に向けて脇目も振らずに走り出す。
それは収容した銀ダイキュも同じで、皆の制止を振り切って艦に戻って行く。
「ウラ!ダイキュ!」
追いかける俺は自身の甘い考えを呪った。
銀ダイキュに襲いかかるオークの群れを見て、銀ダイキュなら倒せるのにどうしても傷付けさせたくて助けに向かってしまった。助ける間にオンボ艦に戻った銀ダイキュも捕まえられずにいた。
「ハッチまで戻るんだ」
ヒグリの声に、俺は「だが」と言ったが、ヒグリは「中央まで向かうにはまだ時間もある。臨界にするのもすぐではないよ。それにこれは命令だ」と言ってきて、俺は仕方なくハッチに戻った。
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