第42話 最後の安らぎ。
届いた映像は見ていられないモノだった。
武器のチョイスが狂ってる。
なんで火炎弾だけをメインで使う?
カオスから出てきた初見の化け物にダイキュ達が傷つけられて死んでいっていた。
「ヒグリ!」
「まだだ!3時間の差があるんだ」
俺の声にヒグリが即座に返してくる。
苛立った俺は動力部とメンテナンス部に連絡をして、「見極めを頼めないか?」と言う。
「何言ってんだ?」と言ってきたのは動力部長のタタンで、メンテナンス部のコゴは黙って俺の言葉を聞いている。
「俺がこの艦を限界まで加速させる。到着次第、魔物どもを可能な限り蹴散らす。だがそんな事をしたら艦にダメージが残るから戦闘中にメンテナンス部の皆には艦をホンシャーのホームまで戻せるくらいまで直して欲しいんだ」
「なに?するてぇと、お前が艦の加速をやって、敵を倒す間に艦を直す?」
「ああ…予備の動力は持ち込んでいるから換装してくれたら帰りも俺が加速させる」
「馬鹿野郎!?お前、この艦の前任のサンワに聞いたが無茶苦茶だぞ!?」
「俺はやる。加速したら後はタタン達に任せたいんだ」
タタンは「くぅ〜」と唸っている間に、コゴは「ならシャフトの確認とメンテナンス、後は水晶の交換だな?3時間…2時間だ」と言ってくれた後で、「ヒグリ、お前も手伝ってくれ」と言う。
「了解。荷物持ちは調理部からも何人か借りよう」
ヒグリの言葉に、治療部のガモスが「こっちにも回してくれよな?熱測ったり包帯巻くのは調理部でも出来るだろ?」と言う。
調理部のチータイは「勿論ウチの連中は祝杯の用意もしつつ、どの部署の手伝いもするから言ってくれ」と言ってくれた。
「よし、今から動力部に向かう」
俺の言葉にタタンが「まだ来んな」と言い、ヒグリが「君ねぇ、皆君じゃあないんだよ?用意の時間をくれないかな?」と言って、「戦闘部、キーバッハ、バシン?」と声をかけると、2人は「準備とフォーメーションの確認、後はモニターを見ながら随時装備の確認と変更をしたいから、前準備で30分だけ待ってくれ」とキーバッハさんが言い、「そう言う事だ。とりあえず30分あるから」と言ったバシンは、「ダイキュ、作戦開始まで30分あるからパパと居てくれないか?パパはせっかちだから困るんだ」とダイキュに向かって声をかける。
ダイキュはメアリと部屋にいるはずだが、きっと「うん!」と言うだろう。
「後は会敵距離になったらダイキュとウキョウで火炎弾を放って欲しい。大変だが頼めるか?」
バシンの声の後にハウリングと共に「やるよ!ダイキュ頑張る!」と聞こえてくる。
俺は目のものが浮かんで「張り切ってるな…」と笑ってしまう。
「さあ、家族と時間を過ごしてくれよ。キミなら2時間半を1時間に出来るだろ?」
「任せてくれ。ガモスに栄養剤なんかの用意をさせてくれ」
ヒグリの「わかったよ」を聞きながら部屋に戻ると、ダイキュが俺を椅子に座らせてメアリが肩を揉んでくる。
「パパ、頑張ってね!」
「ああ。ダイキュは守るよ」
「ママは?」
「本当、失礼しちゃうわ」
「勿論、メアリも守る。帰ったら…」
「帰ったら?」
「なんです?」
恥ずかしかったが、俺は意を決して「休みを申請するから、のんびりと過ごさないか?どこに行くでもなく、ヒグリに頼んで家を借りてもいい。家族で過ごさないか?食事も作る」と言った。
多分俺は真っ赤だ。
肩を揉んでいたメアリは俺に抱きつくとダイキュも抱きついてきて、「勿論!」とメアリが言うと、ダイキュが「向こうの船のお姉ちゃん達は?ママが教えてくれたよ?向こうのお姉ちゃん達も家族だよね?」と聞いてきた。
「メアリ?」
「うん。ダイキュは賢い子だから、ダイキュって名前も聞いていて、ブリッジでコウワと居たダイキュは髪の色も似ているから、聞かれた時にそうだって答えたんだよ」
俺は少し困りながらもウラとダイキュを思いながら、「ダイキュはあっちの皆も家族なのか?いいのか?」と聞くと、「うん!お姉ちゃん!ダイキュは赤ちゃんのお姉ちゃんになるけどお姉ちゃんも欲しかったから嬉しいよ!」と返される。
「パパはお姉ちゃん達を助けに行くんだよね?」
「ああ、そうだよ」
「じゃあちゃんと連れてきてね!」
「そうだな」
俺の気持ちを察したメアリが俺をベッドに連れ込むと、「ノウエ様…、やめた。ノウエ、出かけるまでくっついて」と言う。
「メアリ?」
「ダイキュ、真ん中おいで」
「うん!」
ダイキュは俺とメアリの間に入ると「パパ、おっきいお風呂買って」と言い出す。
「なんで?」
「赤ちゃんとママとパパとお姉ちゃんと入るの」
俺はウラと沢山のダイキュ達を思い浮かべて、「プールじゃないか」と言いながら、「パパは男だから恥ずかしいな。赤ちゃんが男の子ならまだいいが…」と言うと、「えぇ?赤ちゃんは妹だから我慢して」と言われてしまう。
「ダイキュ?」
「赤ちゃんわかるの?」
「うん!ママとは違う青緑の髪の毛の女の子だよ!」
無意識に判別魔法を使ったか、未知の力を疑ったが今はそれではない。
「男の子が生まれてこない」
「ふふ。ノウエってばどれだけ女好きなの?」
俺が「笑えない」と返すと、笑えないの意味を誤解したダイキュが脇腹をくすぐってきた。
「ダイキュ、くすぐったいよ」
「笑える?」
「なるほど、そうだな。ダイキュと居ると楽しいよ」
「ママは?」
「ママとはホッとするよ」
「えっへん。もっと褒めていいんだよ!」
俺は感極まって泣かないようにしたが到底無理なので、2人を抱きしめて「行ってくる。命に変えてもお前達は逃すから」と言うと、メアリから「おバカ」と怒られて、ダイキュから「パパなら帰ってこれるよ」と言われる。
「ダイキュ?」
「だってダイキュにはパパが見えるもん!」
「見える?」
「そうだよね。ヤチヨさん達がパパを乗せた車を一番に見つけたのはダイキュだもんね」
「え?そうなのか?」
「えへへ。ダイキュは凄いんだよ」
「そうか。じゃあ迷子になりそうな時はダイキュに迎えにきてもらうかな」
「任せてね!」
もう一度2人を抱きしめると、ヒグリから「ノウエくん、準備は終わったよ」と連絡が入る。
「わかった。直接動力部に向かう」と返した俺は、「メアリ、危険な時はウキョウに任せて部屋に居てくれ」と言うと、「はいダメー」と返されて「ダイキュ、パパがまだわかってないよ」と愚痴られる。
「ママ?」
「パパが危なかったらって言うんだよ。危なくしちゃダメだよね?」
ダイキュもメアリが何を言いたいのかわかったのだろう。
「パパ、ママとお腹の赤ちゃんが怪我しないようにしようね!ダイキュも頑張るよ!」
「…まったく。参ったよ。わかった。メアリはダイキュを頼む。ダイキュ、副砲が壊れたらブリッジでヒグリ達と居てくれ」
俺はそう言って部屋を出て動力部へと向かった。
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