カオス
第40話 極北へ向かう日々。
カオスのある極北に向けて移動していたマッシィータの2番艦。元々は長く過ごしたサヨンの艦。
誰よりもこの艦の勝手を知る俺は決戦に向けつつ家族サービスを行う。
もうメアリはお腹が大きくなり始めていたので、ダイキュと3人家族をして3人で風呂に入り3人で眠る。
それだけの事が嬉しくてたまらなかった。
その事が俺の能力をさらに上向けた。
ヒグリは完成した試作モデルの魔法砲撃銃believe8を用意したが、俺が試射の一撃で壊してしまうとヒグリは肩を落とす。そして航路の先、北に1番近いホンシャーの企業にbelieve8の基礎理論を教えつつとある物を用意させていた。
「何日で極北に着く?」
「予定ではひと月だな」
「心配かい?コウワ女史は戦力の低下を恐れて、安全航路でホンシャーを目指しているから我々も十分に追いつけるよ」
「いや、それは大丈夫なんだがメアリとダイキュを何処かで降ろせないか?」
俺の言葉にヒグリが呆れ顔で「君ねぇ、この世界で1番安全なのはこの艦だよ?」と言うと、ウキョウがメアリとダイキュを呼んできて俺のことを告げ口する。
メアリが「はぁぁ?やだ。ここで産む。ダイキュ、パパと居て守って貰おうね!ダイキュは赤ちゃんのお姉ちゃんやってくれるよねー?」と言って、ダイキュも「うん!でもパパが強いからダイキュお仕事ないかも」と言う。
そのまま俺を見て「はい決定。降ろそうとしたらコウワのところに行って、モルモットになるからよろしく」と言うメアリの脅迫に、俺は頭を抱えてしまいながら「わかった。ここに居てくれ」と言った。
「それに君、単体で艦首砲並の攻撃力を披露してよく言うよね?」
ヒグリの言葉を聞きながら、俺はこの前会敵したハウスタートルの群れを倒した時のことを思い出す。
ハウスタートルを倒す際に、魔法砲撃銃が邪魔に感じた俺は銃を使わずに魔法を放つと、かつてリーヤを救いたいと放った火炎弾以上の火が出た。
それ以外も等しく発動する事が出来て、ヒグリがランクを確認すると20を超えていて計測不能になっていた。
ヒグリはこれを元に、急遽マッシィータに魔法砲撃銃の基礎理論をホンシャーに教える許可を貰って、ホンシャーに俺専用の武器を頼んだと教えてくれた。
「武器?いるか?」
「邪魔だとしても安全弁、蛇口のようなものと意識して欲しいかな。恐らく全開で戦える時間は少ない筈だが、カオスはマッシィータのホームなら3個分の広さはある」
「それに地下がどうなっているかわからない。広大だとすると継戦能力が肝になる。長期戦で考えるべきだ」
そう言われた俺はホンシャーに着いて呆れてしまった。
「俺専用?」
「そうさ」
そう言われて見せられたのは艦主砲と艦副砲だった。
「believe8の理論値を基に、君の能力を推定20として壊れない範囲で用意してもらったんだ」
呆れる俺は「持ち歩けない」と不満を口にすると、「コレはカオスに突入するまで使おう。突貫工事で着けるから、着けたらすぐに出発だ」と言われ、艦主砲と副砲を交換する。
「主砲には何を?」
「氷のバレルにしているよ」
「理由は?」
「最悪の時、コウワ女史がコチラを振り切った場合、追いつけず戦闘が始まり、カオスの敵を倒せない時は、氷でカオスに蓋をしてもらいたいんだ。副砲は火だから動力部と戦闘部のメンバーと、ウキョウも力を合わせれば発射が可能なんだ」
了解した俺はメンテナンス部に顔を出すと取り付けと主砲の交換を行う。
残りの時間を家族と過ごさせたいのに済まないなと周りから言われたが、実際の所はダイキュとメアリは手を繋いで面白くないだろうに現場に来て仕事を見学している。
今もボルト留めをやりたいとダイキュが駆けてきて、皆に一声かけてからダイキュにボルトの締め方を説明してやらせてみる。
これは調理部も製造部も同じでどの部署でも真似をしたがる。
そんなダイキュが恐ろしい事をしたのは戦闘部の訓練だった。
生まれながらにランク5のダイキュは、キーバッハさんとバシンに言わせれば小さな俺という感じで魔法砲撃銃を使いこなし、足りないのはアンカーを抑える腕力や膂力だけだった。
そのダイキュが取り付けた艦主砲と艦副砲に興味を持った。
俺が試射をした後でやりたいと言い出し、ウキョウと2人で放つと副砲は想定値まで威力が出て魔物の群れを焼き払った。
「やったよパパ!」
「この子のポテンシャルは凄いな」
「ノウエくん!すまない!万一君やウキョウが不在の際は、ダイキュさんにも副砲を頼んでもいいかい?」
ヒグリの言葉に「…嫌ですよ」と言ったのだが、メアリとダイキュに押し切られる形で了承してしまった。
航海は順調だが、俺の接近を察したコウワは艦の速度を引き上げ、また全世界に向けて会見を行うと「私は逃さず全てを公開します。全世界の皆さんはこの戦いを見逃さないでください!」と言った。
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