第36話 再会。

真っ暗な闇の中。

自分に何が起きたか思い出せない。

そもそも何をしていたかもよくわからない。


急に目の前に男の人が出て来た。

見覚えのある人。


あれは兄さんだ。


兄さんだと気づいた瞬間、兄さんは豚型の魔物、オークに喰われた。


食いちぎられずにしゃぶられる兄さんを見て、何とかしなければと思った時、自分の名がノウエで戦闘力がある事を思い出して、オークの嫌う火魔法を使おうと手を伸ばした時、オークにしゃぶられる兄さんは「お前もこいよノウエ」と言って薄笑いを浮かべて手招きしてきた。


気持ち悪くて兄さんごと焼き尽くそうとしたのに火が出てこなかった。


次の瞬間、オークの攻撃で俺の右腕は吹き飛ばされた。


激痛。


あまりの痛みにうずくまると、両手両足を吹き飛ばされて仰向けの俺は、痛みに襲われながら醜い虫のように動くことしかできなかった。


悲鳴を上げながらオークを見ると、その場所にオークは居なかった。

代わりに裸の女がニヤニヤと気持ちの悪い笑顔を浮かべて俺の前に歩いてくると、俺のイチモツを握って自分の淫部に挿し入れようとした。


普通の感覚なら喜ぶのかもしれないが、俺にはとにかくこの女が気持ち悪かった。


「怖がらないの。気持ちよくしてあげるわ。どんな女も愛せるようにしてあげる。感度だって引き上げて、飽きる事なくセックス漬けにしてあげるわ」


俺は身動きも取れずに「やめろ」「やめてくれ」しか言えずにいる。

力の限り、心の限りやめろと叫ぶが女は手を添えて腰を下ろしてくる。


こんな時なのにそそり立つ自分が狂っていると思った。


狂っている。

それはそうだ。

仕事と割り切って、好きでもない女を抱いて孕ませて殺してしまった人間。


これは報いか?

これが報いなのか…。


先端が触れそうになり諦めた時…



「失せろ。コイツは私のアダルトグッズなんだよ。汚すな」


その声が聞こえた次の瞬間に、女は顔面を真正面から殴られて吹き飛ばされる。


俺は「え?」と言いながら声の方を見ると、肌着に近いシャツ姿の女性が「バッキャロー!お前はこの私のアダルトグッズなんだからな!自覚しろよ!」と言って俺を見た。


「リーヤ…?」

「おうよ!助けに来たぜ!恩返しするって言ったろ?」


リーヤはそのままニヤッと笑うと「お前も来い!」と言って殴り飛ばした女に襲いかかって、「てめぇ!クソ汚ねえもんで私のアダルトグッズを汚すな!死ね!死ね!」と言いながら蹴り続けると、「私も殴る!私がノウエの右腕の代わりだ!」と言って大柄な女がリーヤに蹴られている女に豪快な飛び蹴りを入れた。


「マチ?」

「そうだ!任せろ!私が助けてやる!今のうちだ!守って傷を癒してやれ!」


マチの言葉に俺の前に立ったのはキツミで、「ノウエ様。安心してくださいね。私が守ります!」と言うと光る壁を生み出す。


女はリーヤとマチの袋叩きから逃げて俺の方に向かうが、壁はそれを阻み「ノウエ様は私達のです!お引き取りください!」とキツミが言う。


「キツミ…」

「はい!恩返しです!私に思い出をありがとうございますノウエ様!」


だがキツミは厳しそうで、マチもリーヤも何故か動けずに居ると「暇だから助けてあげるわ」と聞こえてきて、壁の横側から女を殴り飛ばしたのはビーコだった。


「ビーコ?」

「そうよ。こんな目に遭うんだから私くらいで手を打てば良かったのよ。どうしてもって言うなら私が結婚してやったのに」


ビーコは「よくも手足を切って薬漬けにしてくれたわね!私のダイキュを弄んでくれたわね!」と言いながら女をリーヤ達の前に投げ飛ばすと袋叩きが再開される。


俺は唖然とする中、防壁を張るキツミの横に来たシーマが、「ノウエ様、治るまで守りますからね」と声をかけてくる。


「シーマ…」

「ふふ。会いたかったですか?私もです。私のノウエ様に手を出すなんてロクでもない女です!ぶちのめします!」


シーマはニコニコと前進すると袋叩きに参加をして「消えなさい!」と言っている。


「ふふ。やっと恩返し出来ます。愛してくれてありがとうございますノウエ様」


そう言って俺を抱き抱えたのはミカだった。


「ミカ…」

「はい。やっと助けられます。私達は皆ノウエ様を愛していました。ノウエ様は無自覚でも私達を愛してくれた。だからここに来ることが出来たんです」


ミカの言葉に驚いて皆を見ると「照れんだろ。言わせんな。言わなくても分かれ」と言うリーヤ。

「私はノウエを愛していたぞ!ただトゥシバーを捨てられなかっただけだ!」と胸を張るマチ。


ビーコは「私は別に」と言ったが、シーマが「ここに来れるのは…」と言ってニヤニヤと顔を見ると、ビーコは真っ赤になって「そうよ!格好いいし!身体の相性も良かったから、子供が欲しくて倒れるまでしたわよ!」と認める。

そのままシーマは「私は勿論ノウエ様が大好きですよ!」と言い、キツミも真っ赤になって「私もです!」と言う。


「ふふ。ノウエ様。私達は皆ノウエ様を愛して、ノウエ様に愛して貰って、産めなかったけど赤ちゃんを授かった。だから心の繋がりがあったから、ここに来れました。私達の想いが貴方を守ります」

「ミカ…」


ミカが俺の身体を撫でると無くした手足が戻って来たがそれでも完全では無かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る