第34話 メアリの愛。
俺は拒んだが、結婚をしてダイキュを娘に迎えた。
妻は勿論メアリだった。
メアリは「私は死なない。だから安心して愛して」と言ってきて、それでも首を縦に振らない俺に、「ダイキュにはママが必要。私ならダイキュのママになれる」と言って説き伏せて来た。
ダイキュの名前を出されると弱い俺はヒグリとウキョウに相談をして、2人も可能な限りメアリとダイキュを守るからと言ってくれて結婚に踏み切った。
そしてメアリにはコウワに狙われることと、ダイキュの為にと言って子供を少しの間待つことにした。
ダイキュを迎えた日から半年が過ぎていて、約1年を迎えた14歳たちは15歳になり、能力は平均5ランクになっていた。
これだけでマッシィータの連中は大喜びで今年も14歳を受け持つことになった。
そんな時、俺はオンボの船にヘルプを求められた。
ヒグリの話では今年一年が最後の機会で、それを逃すと来年はおそらくマッシィータかトゥシバーが取りまとめになって、オンボが今みたいな真似を出来なくなるので勝負に出るつもりだと言われた。
それこそ不安だったので、ウキョウとヒグリにはダイキュとメアリを守ってもらい、俺1人でオンボに行く事にした。
出かける事が決まった時、メアリに告げると「搾り取られて来ないでよね」と軽口を叩くメアリは涙を流して、「お願い。生きて帰って来て」と言って俺にキスをした。
そのまま流れでメアリを抱いて避妊をやめると、「ふふ。これで出来てたら帰って来た時にはお腹の大きい私に会えるね」と俺の胸の上で笑っていた。
ダイキュは泣いて嫌がったが、最後には「パパ、悪い奴らをやっつけてくるの?」と聞いてきて、そうだと言うと応援して待っていると言ってくれた。
ダイキュはビーコにも似てきてメアリに申し訳なくなるが、「鼻はビーコの方が綺麗だったからダイキュは似てくれて良かったよ」と言ってくれている。
1ヶ月かけてオンボに着くと、遺恨なんてない顔でコウワが俺を出迎えてきて、俺との再会を喜び、ダイキュの成長に礼を言ってきた。
会話の流れは普通だった。
愛情が効果的だと知ったコウワはキタコとの娘ウラにはキチンと教育を施すと、ダイキュ以上のポテンシャルを示したと話してきた。
14歳の計画は、やり直す事でこちらも5ランクの子供達を量産する事が出来て感謝を伝えられたが、やはり孤独がないと結果が振るわないと愚痴を言っていた。
「それで?本題は?」
「あら、早速?結婚したのにおめでたの話は聞かないわね」
「今はダイキュを育てるのに大変だからだ」
「成程、優しいお父さんね。でもそんなに愛してると別れが辛くなるわよ?」
別れと言われて冷静さを欠いた俺が「何!?」と聞き返すと、コウワは「別に殺しはしないわよ。ただこのご時世ですもの。いつ何があるかわからないわ。魔物がいつルート変更をしてこの安全地帯が危険地帯に変わるかなんてわからないもの。それにあなたは妙齢のダイキュを知ってるのよ?そのダイキュの彼氏なんて会える?殺しちゃわない?」と言って笑った。
確かにダイキュを見ていると、あの俺の上で何度も果てた大人のダイキュを思い出してしまう事がある。
あの顔を見れる男…。
「殺すさ」
思わず呟いていた俺に、「ふふ。怖いお父さんね」とコウワはもう一度笑った。
今回、コウワが用意した女達は最低最悪だった。
マチの従姉妹とキツミの妹だった。
マチの従姉妹はヤチヨという名で、キツミの妹はスゥイという名だった。
2人とも俺を愛して俺の子を産む事で家族が救われると言い、俺にマチやキツミとどんなセックスをしていたのか聞いて来て実践するから愛してくれと言ってきた。
「それは冒涜だから嫌だ」と断って、それぞれとの行為をする事にする。
そしてただ行為をするのではなく、疑似夫婦を実践する中でごく自然に好意に及ぶ事になった。
普段は検証や訓練に付き合ったりしていた。
やはり最悪だった。
何が最悪かと言えば、こんな所で出会わずにトゥシバーで出会っていたら、夫婦になれる可能性すらある程の相性の良さだった。
だが2人ともトゥシバーを捨ててマッシィータに来てくれないかと言ったが、最後まで結婚には首を縦に振らなかった。
理由を求めても曖昧な返事だった。
もしかするとコウワから何かを言われたのかもしれない。
程なくして2人は妊娠をした。
このペースを見て、コウワは「やはり好意がある方のがうまくいくのね」と一つ先に進んだ事を喜んでいた。
2人とはこれで終わりだった。また会えないかと聞いたが、もう会うことはないと言われて別れを告げられた。
ヤチヨとスゥイが帰る前日、俺はコウワに呼び出された。
「次の段階に進みたいの。今晩来てくれるかしら?」
「断ると?」
「あの2人にお願いする事になるわね」
「…わかった」
1日2回連絡をする事になっている俺はヒグリとメアリに連絡を入れる。
ヒグリは状況を見て危険だと止めてくれたが、どうしても断れない以上行くしかなかった。
メアリは「ダイキュが毎日お手紙を書いてくれてるから楽しみに帰って来てよね」と言ってくれる。
メアリは勿体無い女性だ。
仕事で抱く事になる女性達にも、抱かなければならない俺にも「仕事!グジグジしない!割り切る!逃げらんないんだからキチンと向き合う!一夫多妻?したけりゃどうぞ!でも私の割り当ては減らさないからノウエ様が大変なんだからね!」と言ってから目に涙を溜めて抱きしめてくる。
その時の事を思い出した俺は「帰りたい」とつい漏らしてしまう。
「へ?」
「早くメアリのところに帰って、ダイキュと3人で風呂入って3人で眠りたい」
弱っていた俺が珍しく弱音を吐くと、「ならさっさと帰って来なよ!」と言ってくれる。
「だが仕事しないと…」
「別に身分隠してどっかのホームでもいいし!ノウエ様なら危険地帯でも守ってくれるでしょ?」
目からウロコだった。
天啓のように俺の胸にメアリの言葉が突き刺さる。
「俺は買われた身分…」
「知らない」
「え?言ったはずだし…大変な道にメアリを…」
「聞いてる。でも嫌な仕事なら辞めればいいの。大変な道?そんな覚悟もなくて結婚しない!愛するなんて言わない!」
俺は泣いていた。
気付いたら泣いていて、震える声で「ありがとうメアリ」と言ってしまうと、「やだそこから?」と笑われて聞き返すと、「私の愛が伝わらないのかと思ったら、ノウエ様ってばフルコースなら前菜すら始まってないんだもん。帰っておいでよ。愛のフルコースなら着席…ううん。入店から始めてあげるから、ね?」と言われてしまった。
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