第33話 生まれてくる世界を選ぶ子供達。

コウワのやつは次の問題だと言って、俺の子を孕った女達が軒並み流産か母体が死んだという話をしてきた。


資料を取り出しながら「データが足りないから意見を貰いにきたのよ」と言うコウワに俺が呆れてしまうと、ダイキュと戻って来て遊んでくれていたメアリがドヤ顔でコウワを見ている。


コウワはメアリの顔に気付かないで、「そもそも試すためだから仕方ないけど、データがランダム過ぎて困るのよ。今まで妊娠した人で言えばリーヤ・サヨンさんは火魔法の5ランク。ミカ・マッシィータさんは薬物耐性の5ランクで順調にお腹の子は育っていた。シーマ・マッシィータさんは薬物耐性の4ランク。ビーコ・マッシィータさんは薬物耐性の5ランクなのに出産に成功。でもキタコ・マッシィータさんは薬物耐性の7ランクなのに出産は成功しても母体は死亡。マチ・トゥシバーさんは雷魔法の7ランク。キツミ・トゥシバーさんなんて薬物耐性の3ランク。私が用意した子は血液型も種族も奥さん達に近しい者も居たし、同じに揃えた者も居た。それなのに用意した12人は全て失敗したのよ」


俺は聞いていて吐きそうになる。

この2年でとんでもない量の女と関係を持たされていた。

また耳の奥でヒンの「種馬だね」という言葉が聞こえていた。


コウワはその時、メアリに向かって「ふふ。あなた死んじゃうかもしれないわね」と声をかける。報告書を見ればメアリが俺の相手をしている事は筒抜けなので仕方がない。

メアリは重役相手でもツンとした顔で、「私は死にませーん」と言ってのけるとダイキュに「見てみて~」と言って指を鳴らして見せている。


メアリの顔が気になったコウワは血相を変えて、「あなた?何か知ってるの?教えなさい!人類の為よ!」と言う。鬼気迫る表情にも関わらず、メアリは涼しい顔で「知ってると言うか、失敗した人の共通点に気付いただけですよ」と答えてから、「でも知っても何も出来ませんよ?」と続けた。


「それでもあなたに何か思う事があれば教えて!」

メアリは俺を見て、コウワも俺を見る。

ダイキュだけは「パパ?」と言いながら俺を見た。


俺は諦めて首を縦に振ると、メアリは「私たち女はモノではないんです。ノウエ様も交配用のモノではない。それが大前提です。失敗した12人の人達の名前もノウエ様は知らなかった。そんな人との子供がこの世界に生まれて来たいと思います?」と言った。


コウワは首をかしげて「なにそれ?」と聞き返す。呆れた表情のメアリは「だから」と言うと、「簡単に言えばキタコは仕事だった。でもノウエ様とは名前を呼び合う仲くらいまで行っていた。だから死んでしまったけど臨月までは身体が保った」と続け、ダイキュを見てから「ビーコって不器用なんですよ。多分ノウエ様に気持ちがあって2人の子を産みたいと思っていた、だから名前も用意した。だから産むことも出来たんです」と言い切った。


荒唐無稽に聞こえる話なのに、コウワはメアリの言葉を自分で反芻して、「確かに、事務的にセックスをした連中は失敗した。それ以外の女性は皆ノウエくんに気持ちがあった」と納得をすると、「大収穫だわ!ありがとう!」と言ってメアリに感謝をして俺に向かって「量を求めるのは辞めにするわ!またいい子を用意するから、準備ができたら呼ぶからオンボに来てね!」と言って帰って行った。


コウワは帰り際、ダイキュに「今日からパパと暮らせるわよダイキュ。またね」と言い、ヒグリに貴重なサンプルだから定期検診を怠らないように言って帰って行った。


正直もうコウワには会いたくなかった。

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