第30話 終わらない地獄。

もう地獄はないとどうして決めつけたのだろう。

自身の甘い考えを呪いたくなった。


翌日から朝晩共に女をあてがわれた。

止めるヒグリに、コウワは「あら?マッシィータに正式に依頼したのだけど?通達は来てないかしら?私の事を報告してたわよね?」と言って笑ってきた。


俺はあてがわれた女の名前は聞かなかった。


コウワからは「好みがあれば教えて欲しいけど、わからないから色んな子を用意してあげたわ。頑張って」と言われて、ヤケになってあてがわれた女を抱く。


そこに愛なんてなかった。


ただ一つの好みだけは知られていて、女達はキチンと気持ちいいと口にしていた。

俺はまだ快楽があるのならと少しだけ救われた気になった。


訓練メニューなんていってもロクなものはない。

単純にサヨンでやらされた労働内容をブラッシュアップして明文化したらありがたがられて、コウワの奴は「あらあら、儲けられそう。専用の陸上戦艦を建造して貰おうかしら?」と言っていた。


2日目に、コウワは「これからは朝昼晩と3回程種付をして貰いたいの」と言い出す。


自暴自棄になっていた所に、種付けと聞いた俺は「構わない。女達が俺の子を孕めば終わりだろ?ここには居たくない。早く帰りたい」と言うと、コウワは「折角だから楽しんで」と言って夜に新しい娘を連れてきた。


だがどう見ても適齢期に居ない少女が現れた。

しかも何処か見覚えがある顔だが記憶にはない。


「何だこの子は?いくつだ?」

「あら、若い子は嫌い?重役達なんて若い子の方が良いって喜ぶのよ?」

俺はコウワを無視して「いくつだ?」と再度聞くと、「多分14歳ね」と言われた。


「断る。チェンジだ」


どうして14歳ばかり用意する?

いい加減にしてほしい。


コウワは「やれやれね」と言いながら朝も抱いた女を連れてきた。

女は嫌そうなそぶりもなく事務的に俺に抱かれていた。



翌日、夜にまたコウワは少女を連れてきたが違和感があった。


昨日の少女なのに少女に見えない。

「おい」

「あら?年齢はパスしているわ」


「何?」

「今度は推定24歳よ」


姉妹か?

それにしてはよく似ている。

親子とするには無理のある年齢差だ。


「姉妹か?」

「違うわよ。あなたが14歳は嫌だって言うから、10歳くらいこの子の年を進めたの」


この言葉が何を言ったかわかるのに数秒かかった。


「何?」

そうして目の前の元少女を見た時にある事に気付いた。


あの日、研究室の奥で眠っていた幼女に似ている。


俺は震えながら「まさかこの子は…、あの日研究室の奥で眠っていた…」と言うと、コウワは「あら、気付いてくれた?正解よ」と言って微笑んだ。


年を取らせる?

俺には想像も及ばない所業。


俺の口からはごく自然に「戻せ」と言う言葉が出ていた。コウワは「ふふ」と笑うと「年齢?無理よ。そんな監視カメラの映像じゃあるまいし、早送りに巻き戻しなんて出来ないわ。まあ早送りなら出来るからやってあげたけど、いくつが好みなの?二十歳くらい?我慢できないなら、この子を廃棄してまた一から頑張るけど」と人とは思えない事を言う。


コウワはそのまま「年増が好みなら作ってあげるけど…、そうね。いらなければ観察したいから、一気に60歳くらいもアリね」と言いながら横の女性を見る。

もしかすると本当に知能なんかは先日見かけた幼女の姿…4〜5歳で止まっているのかもしれない。

言葉の意味を理解できずに首を傾げて、コウワと目が合うとニコニコとしている。


「わかった。抱くから余計な真似はするな」

「あら良かった。作れてもタダじゃないから嬉しいわ」


「だがこの子に4歳くらいの知能しかないと抱けないだろう?」

俺はコウワのミスをついて目の前の女性を抱かないようにしたかったのだが、コウワは甘くなかった。


「ふふ。セックスと言うから高尚に思えて知性なんて求められるのよ。交尾は生物が持つ基本動作よ。食事と睡眠と生殖。種の保存に必要なものよ」

そう言ったコウワは女性を俺に押し付けると何かの端末を操作して、「発情しなさい」と言う。


ビクついた女性は身体を震わせると、顔を上気させて苦しそうにした。


「コウワ!何をした!」

「ふふ。私の専攻は遺伝子工学よ。薬品なんて使わずに発情させる事も出来るのよ。抱いてあげないと発狂するわね。まあ壊したらまた新しいのを用意するわ」


コウワは言うだけ言うとさっさと部屋を後にした。

俺の部屋はこれ以上ないくらい女臭かった。


その臭いの原因の女性は辛そうに身体を抑えて、「おなか…くるしい…ダイキュ…つらい」と言っている。


ダイキュ。

それがこの子の名前だろう。

仕方なく俺はダイキュを抱いた。

初めての感覚に困惑するダイキュが落ち着くまで抱いた。


ようやく落ち着いて眠りについたダイキュを見てから時計を見ると、もう明け方近かった。


「これで朝にはまた別の女が来るのかよ…。ふざけんな」

俺は文句を口にしながら布団に身を投げた。

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