第28話 コウワの実験室。
ヒグリは秘匿回線でマッシィータにコウワの危険性を伝えていた。
そしてマッシィータに万一の時は、防衛の為に戦闘も辞さないと伝え、俺に魔法砲撃銃とオンボの地図を渡してきて、「もしも今以上に武器が必要ならここにある。君なら奪取して逃げ出せるね?」と言ってきた。
一緒に逃げると言わないヒグリが気になった俺がその事を聞こうとした時、ヒグリは「僕に旨味はないから大丈夫。今は君が1番だよ」と言った。
夕飯なんかも判別魔法で確認したが毒なんかはない。薬品も入っていなかった。
夕食後、指定された部屋に行った俺は、行かなければ良かったと本気で思った。
セクシーな下着姿で待たれていた方のが万倍良かったがコウワは白衣姿だった。
「こんばんは。ようこそ私の研究室へ」
そう言ったコウワは「ああ、白衣?言ってなかったわね。私は研究部出身の重役よ。女でも研究部でも重役になれるのがオンボの良いところよ。これがトゥシバーとかマッシィータだったら、どんなに頑張っても重役の手前までですもの」と言いながら俺を部屋に招いた。
「見せたいものって何ですか?」
ぶっきらぼうな俺の態度に「昼間はごめんなさい。あの場はヒグリさんとカンノさんが居たから挑発するような言い方しか出来なかったのよ」と言って、俺に紅茶を出してくる。
判別魔法は忘れない。
コウワは「毒も薬もないわよ」と言ったが、それを鵜呑みにするほど愚かではない。
そんな俺を見て「私の専攻は遺伝子工学」と言ってコウワは微笑んできた。
「遺伝子?」
「そう。昼間は気分を害させてしまったけど、あなたは凄いわ。私はあなたのような存在を自ら生み出して、その力でこの世から魔物を排除したいの」
この女、とんでもない事を言い出した。
「それを俺に言ってどうする?」
「あら、大事な事よ。別にマッシィータに告げ口しようが、トゥシバーに言われようが構わない。そもそも彼らは歓迎してくれるわ」
「何?」
「やっぱりフットワークの軽さと女でも重役に迎える多様性って大事よね。オンボを通じて私の目論見は他企業に説明済み。マッシィータみたいにあなたを抱えてる企業は我関せず、好きにしろだけど、やはり他の企業からしたら、5万人クラスの戦艦の運用を1人で賄える力って喉から手が出るほど欲しいわ。仮に操艦クルーが全員あなたなら全く未知の作戦行動に出られるわ。危険な魔物の巣に突入して全てを滅ぼすなんて朝飯前よ」
この話が本当ならコウワは根回し済みで潰せない。
俺は聞く事しか出来ずに、「それで?見せたいものは?」と聞くと、コウワは「ふふ。こっちよ」と言って俺を案内する。
連れて行かれた先はこの世の地獄を煮詰めたような場所だった。
ホルマリン漬けの赤ん坊。
男や女のホルマリン漬けも居る。
「そっちは古いサンプルよ。高い適性を持つ人間とそうでない人間、男と女、その子供でチェックしたのよ。やはり強い人間は前外側前頭葉が発達しているわ」
死体と過ごしていても何とも思わないわけか…
呆れる俺に「見せたいものはそんなものではないわ。こっちよ」と言って奥に進むコウワの後をついて行くと、椅子に座り機械に繋がれた男女が居る。
「これは?」
「ホムンクルス。有り体に言えば人造人間よ。でも失敗作なの」
失敗作?
それでも息遣いがあって身体が小さく動いている。
生きている。
「これは生きている」
「そうね。生命活動を見れば生きているわね。でも心が無いのよ。魂がない。ラジコンと一緒。私が動作を教えて操作をすれば踊りだって踊るわ」
「あなたは何を求め…」と言いかけた俺に、「言ったでしょ?魔物達をこの世界から一掃したいって。そして新しい世界に順応した強い個体を求めている。強い個体は手に入っても、自立して動かない個体はダメよ」と言うと、俺に更なるとんでもないものを見せてきた。
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