第23話 キツミ。

部屋に戻るとキツミは泣いていた。

聞かなくても、もう何となくわかる。

俺はこの数ヶ月、キツミに何の手出しもしていない。

嫌な話だが、リーヤもミカもシーマもビーコもキタコもマチも生娘ではなかった。


だから気軽ではないが抵抗はなかった。

だがキツミは生娘なので、俺が手を出して良いものかを考えたし、断った場合なんかも考えていた。

重役達にはスランプが長引きそうだから保留にしていたが、アオから解放されて嬉々として放った火炎弾と再生魔法の成功を見たら、スランプは脱却したものと思われても仕方がない。


そうなるとキツミは夜伽部の部長から怒られる事になる。



「キツミ、部長から言われた?」

「…はい。私の魅力が足りないから、ノウエ様に見向きもされていないと注意を受けました」


「今日断られるとどうなるって?」

「…風俗室送りになって、ホームの家族は低ランクの家に引っ越しに…」


申し訳なさそうに俯くキツミを見て、そこは怒る所なんじゃないかと思う。


生娘のキツミなんて風俗室に送られたら、間違いなく薬物耐性があるからと薬物を投与されて群がる重役達に汚される。


その上家族は罰則?

狂っている。


そしてやはり重役達の基準はよくわからない。

俺には「選ばない」という選択肢が無いのがおかしい。

その瞬間にヒンの「種馬だな」という言葉と表情が思い出された。


まあ抱くしかない。

キツミに聞いてみると、空き時間は全て部長に呼び出されて、性知識のみを教え込まれていた。

技術は俺が嫌がる可能性があって、何も知らないで苛立たせるくらいなら、知識だけは与えてしまおうという話にされていた。


「わかった。今日はここに残るんだ。気分を高めたいから、俺と同じ食事を摂るように言われたと報告してから戻ってくるといい」

この言葉に救われたような顔をするキツミ。


ミカですら小動物だと思っていたが、キツミはもっと小さい小鳥のような存在に見えていた。


キツミは「ありがとうございます!でもノウエ様と同じ内容のお食事は…」と言って申し訳なさそうにするので、俺は「なら遅くなっても待てる?」と聞き、キツミが「はい」と答えたので、戦場になっている調理部の厨房に顔を出して、「手伝うから俺の食事を2人前にして欲しい」と伝える。

たまたま近くの厨房に居た部長のオオワや馴染みのメンバーは、「そんなもんで良ければ!」「頼む!」と言って来たのでオオワの調理補助に入る。


焼き加減のチェックなんかに判別魔法は使えるし、サラダ類の冷たい物なんかは氷魔法が役に立つし、水も直接出せば話は早い。


オオワが「これだよ!ノウエが来てくれると本当に助かるよ」と喜びながら重役のメインディッシュを用意する。

そして重役が終わると各部署で食事が摂れるメンバーの料理が始まり、手始めに5ランクが食べる茄子とマツザウロスのミートドリアを手早く作りながら、「なあ、再生部とかやめて、うちに来てくれよ。お前の代わりに来てたアオが足引っ張るから皆疲れてんだよ」と言われる。


アオの被害はやはり甚大で、「アイツ、1人にしてもやはりダメですか?」と聞くと、「横に着かせて指示出しすれば最低限はやれるけど、任せられないから意味がないんだよ」と返される。


「やっぱり仕事をしに来てるんじゃなくて、学びに来てるだけのお客様って感じですか?」

「それだよ!だから困ってるんだよな。俺も依存されると回らなくなるから、調理部の八番手くらいの奴に面倒見させてるけど、ソイツのが潰れそうでな」


申し訳なくなった俺は、重役から戻って来た皿を洗って乾燥機に突っ込んでから、自分の食事とキツミの分を作る。


その日のメニューは調べればわかるが、正直来るのを待っているので少し楽しみだったりする。


今晩はマツザウロスのハンバーグにビーフシチュー。主食はパンでデザートはショートケーキだった。


出来上がった料理を見て「肉肉しい」と言うと、「…お前が無傷で大量のマツザウロスを凍らせてくれたから、売ったりホームに送っても大分余ってて、悪くなる前に消費しなきゃいけないんだよ。食用に向かない部分もダシを取った後は、畜産部の肥料や飼料になるから助かってるけどな」とオオワが返してくる。


「ならオフのやつらは食堂に呼んで、鉄板出してバーベキューしてやればどうです?ランクで肉の品質変えればやれますよね?サヨンではそうしてましたよ」

「…それいいな。鉄板は重役の所で使えなくなった奴を磨けばいけるな。磨きって…」


俺が「メンテナンス部に申請してくれたら俺がやりますよ」と言うと、オオワは喜んで「助かる!やっぱ出向なんてやめてトゥシバーに来ちゃえって!な!!」と言って来た。


俺は「俺って自分で企業も決められないんで、買われた所に行くしかないんです」と言いながら、片付けている間に配膳係にできた料理を持って行かせる。


「じゃあ、お邪魔しました」

「助かった!また来てくれ!」


皆に見送られて部屋に戻ると、テーブルに向かい合わせるように料理が並べられていて、メイド服ではない少し小洒落たドレス姿のキツミが俺を待っていた。


「お帰りなさいませノウエ様」

「ただいま。お腹空いた?」


「大丈夫です。普段からノウエ様のお世話の合間に食べているので、時間はまちまちですし、遅い日はもっと遅いです」

「あー…。そうか…、それはすまない。仕込みは手伝って居ないが、出来立てだから座って、食べよう」


キツミは「本当にノウエ様は料理もできるんですね?」と驚きを口にしながら着席をして、行儀良く「いただきます」と言ってシチューをひと口食べて、「美味しいです!」と喜んだ。


比べてしまうのは申し訳ないが、生娘と薬物耐性と年齢のみで夜伽部に来ている事で、見た目で言えばミカやシーマよりファンが少なそうな顔をしている。

ミカ達にファンが100人付くとしたら、キツミは80人くらいだろう。

キタコは95人くらいでビーコは85人くらい。


まあ俺の好みが入っているかも知れない。

リーヤやマチもこの中に入れても遜色なく感じるが、それは俺の欲目でリーヤなんかは「バッキャロー、私みたいのはモテないから、お前みたいなアダルトグッズが必要なんだろ?」くらい言いそうだし、マチは「ファン?それが何になる。それより腕相撲でもしないか?」と言いそうだ。


俺の顔を見たキツミは「楽しそうです。何か良いことがありましたか?」と聞いてくる。


「楽しそう?」

「はい。ニコニコとされていましたよ」


俺は細かな変化を見てくれていたキツミに感謝をしながら、「いや、キツミが喜んでくれたのが嬉しかったんだ」と言うと、キツミは真っ赤になって照れていた。


食事中の会話は、どうしてもムードもへったくれもないものになる。

この時代を生きて来た話になれば、お互い暗い話題ばかりになる。


変な共通点だが、キツミは姉を魔物に殺されていて、俺は兄さんがオークに喰い殺されていた。


少しの違いは俺は親に売られて、俺の親は外に近い家が嫌で俺をサヨンに売り飛ばし、キツミは親に危険のない場所で暮らして貰いたくて、能力測定で薬物体制がある事を知って、風俗室でも構わないからと売り込んで、自分からトゥシバーの陸上戦艦に乗り込んでいた。


「うちにはまだ妹も居ます。だから私が壊れても、妹と両親が穏やかにホームで過ごしてくれていれば良いんです」


まったく…自己犠牲の塊だな。

キツミはデザートのケーキが食べたことないくらい美味しいと喜んで笑顔になった。


ようやく緊張がほぐれたかなと思ったが、緊張していたのは俺なのだろう。

この子を汚してしまったら申し訳ないと思っていたのは俺だと今気がついた。


食後のティータイム。

キツミを抱くにあたって一つの事をお願いした。


「嘘だけはつかないでくれないかな?」

「嘘ですか?」


「そう。痛いのに我慢をしない。痛い時は痛い、嫌な時は嫌だとキチンと言って欲しいんだ」

「……それを守れば…」

真剣な顔のキツミに「ああ」と言うとキツミは「わかりました」と意気込んだ返事をする。


俺は頷いて「後は」と言って「気持ちいいときなんかは素直に口にして」と続けると真っ赤になったキツミは「はい」と言って小さく頷いた。


食後に風呂に入るのではなく汗をかくからと俺はキツミをベッドに連れて行く。

キツミは小さく震えていたがキチンと俺を受け入れていく。

約束を守って事細かに報告をしてくるキツミ。


「気持ちいいです」とキチンと言うキツミのリアクションが見たくて、俺は隅々まで触れていた。

キツミは約束を守って「そこ…、すごく気持ちいいです」と報告をしてくるので、重点的に触ると「おかしくなりそうです」と言って身体を震わせていた。


上気して息が荒くなったキツミを抱く。素直に痛がるので治癒魔法を使いながら最後まで動く。初めはリーヤの教えに沿うように、キツミを満足させる事のみに注力し、2度目は「今度は好きに動かさせてくれ」と言って動く。


キツミは苦しそうに溺れるようにしていたが、必死に「気持ちいいです」と続けながら果てていた。


行為後に2人で風呂に入り辛くなかったかを聞いたら、真っ赤に俯いたキツミは「これからももっとお願いしたいです」と言っていて、正直ハマった気がした。

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