第18話 暴動。
車に飛び乗るなりヒグリからホームで暴動が起きたと言われた。
暴動の主犯はトウヨ、ナンセン、そしてデリトだった。
奴らは移送中に拘束された2番艦のメンバーと共に暴動を起こして自分たちの無罪を訴えて勝ち取ろうとしていた。
俺が呼ばれた理由は簡単で、ウキョウの得意な魔法は火で、2番艦には相性の悪い水や氷なんかもいる。オールラウンダーの俺が必要で、判別魔法も使えるから見つけるのも容易いだろうという話だった。
問題は何をしでかすかわからない事。
1番艦の戦闘部の半数が1番艦と2番艦の防衛に入り、ホームの守備隊は重役と本社を守る。
「君が首謀者達ならどう動く?」
「トウヨとナンセンは船を狙って、ダメなら住宅地に逃げ込むと思いますよ。問題はデリトです。アイツの目的が俺への復讐なのか、シーマとの復縁なのかわかりません」
「了解だ。君にはデリトの追跡を頼む。名目上彼女達のところに立ち寄ってくれ。まあ守備隊の中でも優秀な者を付けているから、いくらデリトでも下手な真似はしないと思う」
ヒグリの言葉を聞いていてどうも不安が拭えない。
そして状況確認をしても捕まるのは2番艦の戦闘部ばかりで、一向にトウヨもナンセンもデリトも捕まった報告はなかった。
なりふり構わない俺はホームに入ると家々とビルの上を伝って中心地を目指す。
窓からミカ達の家に入る為に壁を一気に駆け上がる。
壁を登るのは崖登りと変わらない。
「風魔法!!」
背中に風を走らせて高層まで一気に駆け上がる。
「ミカ!シーマ!」
慌てて窓から入った俺をみて、目をまるくするシーマと嬉しそうに微笑むミカ。
「あらあら」と言って笑う母と「娘を心配してくれたんだね?」と言う父。
ベランダに飛び込んだ俺にはその景色が見えた。
「すまない。デリト達が逃げ出したと聞いて心配で…」
「ふふ。嬉しいです」と頬を染めるミカと、ニコニコと「ここ、高いのに登ってきたんですか!?わぁ!!私の旦那様は凄い!終わったら2人でデートしましょ!ノウエ様!」と言っているシーマ。
だがそれは幻だった。
一瞬の間に俺が見た幻。
真っ白な壁は真っ赤に染まり、フローリングは血の海になっていた。
癖というものは残酷だ。
まず状況確認をしてしまう。
玄関で父が首を切られて死んでいて、母は腹を刺されて死んでいた。
デリトはリビングまで押し入って、シーマに復縁を迫って断られて激高したのだろうか、暴れてテーブルなんかが部屋の端に飛んでいた。
「の……ノウエ……さま」
小さく聞こえた声を俺は聞き逃さなかった。
「ミカ!!」
「きて……くださったんてすね?デリト…皆を…」
「話すな!いい!治すから!」
俺は必死に治癒魔法を使ってミカを治すが治りは良くない。
よく見るとミカの手はズタズタに切り裂かれていて指は数本失われていた。
「デリト……ノウエ様を苦しめたいって…、シーマに振られて…全部ノウエ様のせいって…」
ミカの話を統合すると、ミカ達は俺の起こした火柱を見て盛り上がったところで家の外がうるさくて護衛の悲鳴が聞こえた直後に扉が開いた。
鍵をしていても関係なく破壊された扉、現れたのはデリトで、シーマにマッシィータを捨てて共に逃げようと言ったが、シーマに断られて追い返そうとした父母を斬り殺してリビングに来てもう一度迫って断られるとテーブルを殴り飛ばしてしつこく迫り、断ると激高したデリトはシーマを殺そうとしてミカが庇う。
ミカが身重なことに気付き、俺を苦しめるためにお腹の子を殺そうとしたのをミカは必死に手で防いでいた。
止めに入ったシーマはその場で殺され、ミカも動けなくなると冷静になったデリトは逃げ出した。
そこに俺が来たという。
俺はすぐにヒグリに救助を求めてミカの名を呼びながら治癒魔法を使い続ける。
ミカは俺をみて「泣いてくださるんですか?愛してくださっていたのですね。ありがとうございます」と言って息を引き取った。
俺は泣いていた事にも気付かなかった。
怒りに身を任せて救急隊にミカ達を任せるとベランダから飛び降りる。
「殺してやる。デリト…逃がさない」
俺はそれが自分の言葉だと気づくのに少しの時間がかかっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます