第16話 2人の妻。
俺は翌週には1番艦に保護をされた。
何が起きたかは緊急寄港をして本社の用意した病室で、ウキョウとヒグリ、そしてミカとシーマがいる中で聞いた。
「デリトが…、ノウエ様…さんに仕返しをしたって連絡をくれました。連絡自体はよく貰っていたし返事もしていました。ストライキを起こしてノウエさんを2番艦に呼び寄せた事、ナンセンが各部署に全部ノウエさんにやらせるから、ストライキしたい連中はしようと持ちかけてきた事、そして4ヶ月の日々でノウエさんはついに倒れてしまった事…」
シーマは真っ青な顔で話をしていて震えている。
これがどういうことに繋がるか考えてか、さもなくば俺に殺されるくらい思っているのだろう。
俺が「シーマが助けてくれたんだ。ありがとう」と言うと、驚いた顔で「そんな事ないです。私が離れ離れになる時に変に夢を見て、キチンとデリトとの関係を終わらせなかったからいけないんです」とシーマは泣いて謝り、ミカが手を握って背中をさする。
そのミカはもう5ヶ月近く経過していてお腹も大きくなっている。
ミカの話でシーマが意を決してウキョウとヒグリに2番艦の事態を知らせてくれて問題が発覚していた。
ウキョウとヒグリは俺に頭を下げてきて、「済まなかった」「身内同士の通信はPCで自動検疫しかしていなかったんだ。今回は問題なしに判定してしまっていた」と謝る。
俺が「仕事だから平気です」と返すと、ヒグリが「もし話せる元気があれば何があったか、君からも教えてくれないかな?」と聞いてきた。
俺はヒグリの言葉に2番艦での約4ヶ月を話した。
目を丸くし、頭を抱えるヒグリとウキョウに「今、2番艦はどうなってますか?」と聞く。
「罪状が固まるまで全員船から降りないようにして、船はドッグ入りさせているよ」
「とりあえずトウヨとナンセン、デリトは拘束して適正な処罰を与えよう。今回の事は1番艦の重役も事態を重く見ているし、2番艦の重役達は総入れ替えもありえる」
「さっきも言いましたが調理部と医療部はほぼ全員が真面目に仕事をしていました。ストライキに参加したのはデリトに睨まれての事です」
「わかった。もう話も聞けたし安心して休め。4ヶ月休みなしだったのだろう?ヒン部長からカルテは受け取っている。医師から全身の臓器が悲鳴を上げていると言われた」
「悲鳴と言えばビーコと言う女性も問題だね。こっちはデリケートな問題になるかも知れないが、2度と君の前には出てこれないようにするから安心してくれ」
「どうなります?」
「君の子を宿した事と、君の体調を無視して君が倒れるまで迫った事で相殺…、まあ無事に子供が生まれてくればだね。まあどうしても君のようなオールラウンダーは貴重だから子供にも期待がいってしまう。その点で言えばミカさんは厚遇を得ているから安心してくれよ」
「もしノウエにその気があればミカを妻に迎えてもいいと思うぞ」
俺はウキョウの言葉に初めて驚いた顔をして、ミカを見るとミカは頬を染めて「私は望んでいただけたら嬉しいです」と言う。
その顔を見ていて俺が赤くなると、ウキョウが「ヒグリ、邪魔をしてはダメだから取り調べに行こう」と言い、ヒグリも「そうだね。シーマさんはお姉さんの事があるから居心地悪くても我慢してね」と言って出ていってしまう。
家族?
ミカが?
行きずりの俺と?
俺は混乱しながらミカの腹を見ると、膨らみ始めた俺とミカの子供がそこに居た。
赤くなっているとシーマが「お姉ちゃんはOKですけどノウエさん…様は?もしかして私ですか?良いですよ」と声をかけてくる。
「シーマ?」
「今回の事で少し考えました。メイドとして仕事をして優しかったのもキチンと評価してくださったのも、考えてくださったのもノウエ様です。お姉ちゃんとノウエ様さえ良ければ一夫多妻だって構いません」
俺が何も言えずにいるとミカが困った顔で「ちょっとシーマ?」と言って、「まだ私もお答えを頂いてません。ノウエ様、私と一緒にこの子を育てて貰えませんか?」と聞いてきた。
俺は困惑しながらも共に過ごした時間は決して悪くなかった事を思い出し、良い返事をしようかと思った時にリーヤの言葉が思い出された。
「…失礼でなければ…」
「はい?」
「ノウエ様?」
「失礼でなければ、聞かせてもらえないだろうか?」
俺はリーヤとの会話を伝えて、俺たちの行為に愛があったかを聞いた。
ミカは質問に答える前に「ノウエ様は凄くても感情に関してはダメな方です。そのリーヤさんには愛があったんですよ。だから恥ずかしくて顔を見れずに抱きついたんです」と言った。
「リーヤが…愛?」
「そうですよ」
そう答えたミカは「今まではよくわかりません。あった気もしますし、なかったのかも知れない。でもコレからは確実にあります」と言い、「子供が生まれたらまたしてください。愛を持っている。その気持ちでしてみて確かめさせてください」と続けた。
シーマは「今までは仕事だったけど、これからはあると言えます。だから私もお嫁さんにしてください」と言ってくれた。
2人はそのまま「とりあえず今日は帰ります」、「考えてみてくださいね」と言って帰って行った。
翌週、退院した俺はミカとシーマとそれぞれと会って話をした。
もう一度聞いてみたが、2人は本気だと言い、シーマとはその日に愛を確かめてみた。
俺は今までと何も変わらなかったが、シーマは「今までと違う」、「愛があるから満たされる」と言って何度も俺を求めてきた。
俺は混乱しながらも今後の話をする為にヒグリの元を訪れた時、本社ビルでビーコに出会ってしまった。
ビーコはズケズケと近づいてきて「結婚して」と言い出した。
相殺で子を産んでも、船に戻されて仕事が出来なければ風俗室送りになると言われたらしく、逆転する為には俺との結婚しかない。
そして「私と貴方は身体の相性は良かったし、気に入ってたからいいでしょ?」と言われたところでヒグリの指示で警備員に連れて行かれた。
ヒグリにはまた謝られた。
「済まない。もう会わせないと言いながら…」
「いえ、俺のほうこそすみません。急に来たから…」
「で?どうしたんだい?あれかな?妹さんの方にも告白をされて悩んでいるのかな?」
図星だった俺はどんな顔をしたのだろう?
ヒグリは「君もそんな顔が出来るんだね」と喜んで、「何が悩みだい?」と聞いてきた。
俺は一夫多妻が許されるのかの確認と、もし良ければと愛について聞いてみた。
「成程。この世界の愛は難しいよね。でもそれは簡単なことさ」
「簡単?」
「意識をして共に過ごすだけで自分だけの愛が見つかるよ。別にお姉さんの方と妹さんの方を同じに見る必要はない。子供に向ける愛とパートナーに向ける愛は違うからね」
「違う?」
「なんだったかな。昔から言われていてね、情欲的な愛、深い友情、遊びとゲームの愛、無償の愛、永続的な愛、自己愛、家族愛、偏執的な愛なんて沢山あるのさ」
難しい顔をする俺に「ああ、後は一夫多妻も君なら可能さ。そして今の会話で少しだけ君に見えたものもある。僕は仲間として君の為に行動をしてみるよ。そっちの方がお互いの為だしね」と言っていた。
俺は礼を言って帰ろうとした時、「ストライキした連中の取り調べはもう終わり。問題の人間が多すぎて処分に困っているが、あの連中は間違いなく会社に損失しか生まないから、罰を軽くする訳にも行かずに大揉めさ」と教えてくれたので、ヒン達の事を聞くと「勿論無罪放免さ」と教えてくれた。
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