第15話 2番艦の種馬。
ミカが妊娠をしたかも知れないと言い出した。
重役達はシーマにも俺の子を孕めと言ってきたと聞き頭を抱える事になる。
俺を呼んだスミセンは「高ランクがやるべき仕事だと思って気にせずに妹の方も妊娠させるんだ」と言ってきた。
馬や牛の交配じゃないんだぞ?
俺は部屋に戻ると、ミカは「まだ確証を得ていないからもう少しこのまま続けられます」と言い、シーマは「もう心は決めました」と言った。
ミカの理由は少しでもシーマの為に時間稼ぎをしてやる為だった。
仮に俺がチェンジを申し出たらどうなるかを聞いたが、結局は他にチェンジを申し出た高ランクのメイドとして送り込まれるだけで、避妊は認められれば良いが養うと言われて妻にされる可能性もあり、それならまだ子を宿せば終われる俺の方がいいと言う話だった。
生殖能力がある以上、時間の問題だった。
それから二週間後に問題が起きた。
2番艦の方になんらかの問題があって俺が駆り出される事になる。
正直シーマの彼氏に会うのは気が重いが、仕事である以上どうする事も出来なかった。
だが考えようによっては俺のメイドとしてシーマを2番艦に連れて行って彼氏と引き合わせるのも手だと思ったが、ミカの妊娠は確定していてメイドの仕事ができなくなった事、そして家族からは引き離さないで欲しいと言われてしまい、俺は2番艦に行くにあたり新たにビーコという女を当てがわれた。
正直、見た目は整っていても気性が荒いのは立ち振る舞いや仕事から見えてくるし、家族の為と言うより、俺の子を宿して己の立場をよくしようというのが見て取れた。夜伽部の仕事にしても風俗室送りを免れる為に仕方なくという所だった。
最低限の仕事はするので問題はない。
ズケズケした女で「ダメ出しされると困るんで、好みとかないなら私で満足するか、さっさと孕ませてお役御免にしてください」と言って俺を押し倒してコレでもかと俺を求めてきた。
2番艦への赴任が決まり二週間。
ウキョウとヒグリ達に見送られて俺は2番艦に行く。
一応立場的にもミカとシーマには「世話になった。俺の子で済まないと思う」と挨拶をして別れた。
2番艦は最低最悪だった。
そもそもの問題は怪我や病気で欠員が出たのではなく艦内でストライキが起きていて、艦長のトウヨと言う男は働かない船員を断罪も出来ずに、重役からの締め付けに困った結果、各部署で病欠や怪我による休みが増えた事で増員を求むと言っていた。
まあバレたら話にならない。
だからだろう。
そしてここにはビーコの他にナンセンまで着いてきたのが良くなかった。
ナンセンは俺を1番マネジメント出来ると売り込んでいて、本人の能力値よりも高い扱いを得ていた。
奴は手始めにトウヨに自身を売り込み、船の問題点を誤魔化す道を提案した。
2番艦の救いはサヨンの船とほぼ同サイズだった事。
だが明らかな問題はストライキの主導者がシーマの彼氏だったデリトという戦闘部の隊長で、船の殆どがデリトに掌握されていて報復を恐れる連中はストライキに参加させられていた事。
まだ調理部と医療部は仕事を放棄していなかったので何とかなったが、ナンセンは船員達の心を何とかするのではなく全てを俺に押し付ける事で問題の解決を図った。
魔物が出てきてもナンセンは周りの連中には「どうぞストライキをお続けください」と媚を売り、俺には「ああん?マネージャー様のお言葉が聞けないか?サヨンの時より装備も上等なんだからやれんだろ?やって来い。早く終わらせて動力部に入れよな」と言ってきた。
あの日々の再来。
そして前以上にキツいのはメイドのビーコが何処にでも付いてきて、俺を休ませる事なく子種を求めてきていた事。
当然デリトの奴はシーマを抱いた上に当てつけかと言い、周りの船員もまだ余裕なら泣きつくまで放っておこうと言われてほぼ孤立無縁の状況になった。
船長のトウヨは自身の保身から異常なしと報告し、重役は俺1人で艦を動かし、水瓶に水を張り、電力を供給し、魔物との会敵時には敵を倒しても「誰がやっても結果が出ていれば問題なし」としていた。
流石に4ヶ月目に俺は倒れた。
その頃にはビーコは俺の子を孕んだと喜び、倒れた俺を見てデリトは勝ったと喜びシーマに勝利報告をしていた。
だがトウヨは責任問題から逃げる為にも俺が倒れた事は言わず、問題なしと報告をしていた。
「あんた…バカだよ」
そう言ったのは治療部のヒンという部長で、「4ヶ月も1人で動力も水も電力も、ゴミ処理までして戦闘もだろ?」と聞いてくる。
「搬入もやったし調理とここでもやりましたよ」
「…うちも済まなかったね。どうしてもデリトの息がかかっていて若い連中がね」
そんな中「気持ち悪い」と聞こえてきて、「寝たフリしてな」とヒンは言うと「アンタは身重なんだ。薬は飲めないから頑張りな」と言いながら出ていく。
気持ち悪いはビーコ。
妊娠して悪阻が酷いらしい。
本人は嬉々として本社に報告をして誉められていて、次の寄港で下船する事が決まっていた。
「はぁ?部長さん?私はあの最優先任務を成し遂げたんですけど?あまり生意気な口を聞くと本社に報告をしますよ?」
「それだけ元気があれば大丈夫だよ。脱水症状の気が見えたら点滴してやるからまたおいで」
大きな声の「ムカつく」が遠ざかる中、ヒンは「やれやれ」と言って戻ってきて、「あんたあの女がママであんたはパパなの?平気なの?趣味悪くない?」と言う。
「冗談…。あの女は俺にダメ出しされたら風俗室送りだから、我慢しろって迫ってきたんですよ。下手に断ると1番艦で母親になってくれた子に被害も出そうですしね」
俺の言葉にヒンは「種馬だね」と呆れ、俺も「俺もそう思います」と返してため息を漏らした。
「それとなく本社には言うからもう少し待ってくれ。ここで動くと1番艦とのランデブーまでまだ2ヶ月くらいあるから艦がバラバラになるとマズいんだ」
「了解です。俺も動けるようになったらすぐに復帰します。ナンセンのやつがうるさいのを黙らせてくれてますよね?」
俺の言葉にヒンは「患者を守るのが医者の役目だよ。噂で聞いたよ?アンタだってその力で彼女を救おうとしたんだろ?それと一緒さ」と言った。
俺はただ、やれるだけだからやっただけだったんだけど…、ヒンも同じなのかも知れないな。
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