第12話 ヒグリとウキョウ。

ウキョウに連れて行かれた先には検査官が居た。

名前はヒグリと言っていた。


「私ではわかりかねる事もあるから、専門家を同席させて貰うよ」

「やあ、君がbelieve 3をメタメタにしたノウエ君だね?話を聞かせて欲しいんだ」


ヒグリは挨拶がわりにランクを聞いてきたので4ランクである事を話すと、渋い顔で「僕たちは仲間になるんだ。隠し事はやめにしよう」と言ってきた。


「いえ、隠し事ではなく2年前の検査で俺は4ランク。それを親がサヨンに売り飛ばしたので書類上は6ランクです」


俺の返しにウキョウが「それが気になっていた。その売ると6ランクとは?」と聞いてくるので事情を説明すると、ヒグリは頭を抑えて「愚かな行為だ。ランクを勝手に上げ下げしたらトラブルの種になる」と言う。


疑問に思って質問をすると「マッシィータではそんな事はしていないよ。そもそも君はまだ検査年齢にもなっていないから、暫定数値から変わっているはずだ」と言われ、親が6ランクの家に住みたい為に3年待つ事が出来なかった話をもう一度する。


「ヒグリ、ノウエくんの検査はどうする?」

「まだ確定数値は出ないが、それでも良ければやるかい?」


「そうだな。believe 3を破壊してしまう力は確認したいが、その前に少しヒアリングをしよう。周りの話や彼の話を統合して色々見極めたい」


ウキョウとヒグリの話を聞きながら質問に答えていく事になり、俺は3日前にキーバッハさんにした話をもう一度する事になる。

最初は嘘くらいに思ったのだろうが、徐々に顔が引き攣るヒグリとこめかみを抑えるウキョウ。


「すると当初1年は4ランクなのに6ランクの扱いという事で、周りから陰湿な突き上げを受けていたのだね?」

「ええ。出来なきゃ死ぬだけなので、文字通り死ぬ気でやりました」


「それでも頑張ったのはご両親の為かな?」

「違いますよ。ただ死ぬのも面白くないから、出来る限りやり抜いただけです」


俺はそのまま「一年くらいして周りの評価が変わってきたところで、今の立場になりました」と言う。


ヒグリは驚いた顔で俺を見て、その視線が気になったウキョウが「ヒグリ?」と聞くと、ヒグリは陸上戦艦のカタログを引き出して、「…水瓶なんてモトスコ型だ。到底6ランクが独りで維持できる物じゃない。動力部の水晶だってこの規模を走らせるなら5個は求められる。それを独りで賄うなんて信じられない」と言い、ウキョウは「それほどか」と返すと、カタログを閉じたヒグリは「ナンセン氏からは聞いているよ。引くて数多で君を配属すると対立を生むから各所に配属をしていたそうだね」と言った。


そんなことは聞いてない。

とりあえずナンセンの奴が上手いこと言ったみたいで気持ちが萎える。


「ここ最近の話を聞かせて貰うがいいかな?」

ウキョウの言う「いいかな?」はリーヤの事を言っているのだろう。


「構いません。なんですか?」

「君のパートナーのリーヤ氏」


俺はここで「俺たちはそんな関係ではありませんよ」と口を挟むと、困った顔のウキョウが「そう聞いたよ。ではリーヤ氏や動力部のメンバーがメイン水晶への魔法供給がおかしい為に不調を訴えて君が配属になった」と確認をしてくる。


「はい。俺自体は久し振りなので違いがわからなかったのと、おそらくリーヤ達は長期間の勤務で疲労が蓄積していたのでしょう」

「そしてそれが配属5日目に爆発をした…」

「無事だった水晶を見てきたが、目に見えない亀裂や穴が空いていて魔法漏れを起こしていたよ。あれでは必要な魔法量は多くなるし、少しでも扱いを間違えたら爆発をするよ。恐らく彼女はゆっくりと送るタイプではなく、一度に大量の火魔法を送るタイプだったんだね。動力部のメンバーに確認を取ったら、リーヤ氏は壊れた水晶に火魔法を送り込んで安定させようとしていたそうだよ」


それで扱いを間違えて爆発をした…。

そういう話なのだろうが、それはリーヤが悪い訳ではない。


「その後は、報告通りなら医療部で治癒魔法を使い。彼女を再生機に入れる為に君が1人であの船の動力になる」

「それも何日もだ…」

「仮眠は取りました。食事も薬も貰いました」


「そして最終日にはハウスバッファローを19体も受け持った」

「回収の時間を見越して骨まで焼き尽くそうとしたんだね」

「ええ。時間勝負でしたので致し方なくです」


「そしてあれだけの力を出した後は、ひたすら陸上戦艦を走らせて、入港出来るまで彼女に治癒魔法を送った…」

「倒れたから無意味でした」


俺の言葉にヒグリは「そんな事はない!そんな事を言ってはダメだよ!君は立派な事をしたんだ!」と真剣に言ってきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る