Track1-4 ある日家の中、お兄ちゃんに出会った
ゲームをログアウトすると、ゲーム機を外してベッドに転がった。枕に顔を埋め、我慢できない気持ちをぶつけるように足をバタバタさせる。
「えへへ、お兄ちゃんとフレンド登録しちゃった」
それに、お兄ちゃんが私のお師匠さまかぁ……。
正確には『ここね』のお師匠さまだけど、私が操作をしているから一緒のことだろう。まあ、千花ちゃんに明日あげるつもりだからフレンドになっても意味はないんだけど。それでも、ゲームの中でかわいいパーカーを貰ったりフレンドになれたら嬉しくもなる。
寝る前に飲み物を飲みたくなってキッチンに行くと、さっきまで一緒にゲームを遊んでいたお兄ちゃんとばったり出会った。ちょうど冷蔵庫の前にいて、私を見ると聞いてきた。
「佳奈も飲み物取りに来たのか?」
「あ、うん」
お兄ちゃんは飲み物を入れたコップを持つと「早く寝ろよ」と言って私の横を通り過ぎた。ゲームだとあんなに話せたけど、現実では難しい。キッチンから出ていくのを黙って見送ると、お兄ちゃんがドアで立ち止まり振り返った。
「そうだ、肩からパジャマがずり落ちてるぞ」
さっきベッドで転がった時にパジャマのボタンが外れていたらしい。
「バカにぃのえっち、彼女に言っちゃうよ?」
「はいはい、別にお前のなんて見ても嬉しくないから問題なし」
ゲームでは目を逸らして恥ずかしそうにしていたのに。頬を膨らませて怒ると、お兄ちゃんは気にした様子もなく部屋に戻っていった。
まったくお兄ちゃんは。千花ちゃんとお兄ちゃんをくっつけたのは私だけど、私だって女の子として扱われたい。そんな態度を取られたら怒りたくもなる。お兄ちゃんがさっきまでいたドアを見つめて深く息を吐いた。
そういえば、ゲームでなら私を女の子として扱ってくれたんだっけ?
それに、私が妹だと全然気づいていなかった。それなら……。
「ゲーム、もう少しだけ遊んでみようかな」
―――――――――――――――
キャラクター紹介【佳奈 kana】
ゲームキャラ名:ここね
種族:猫獣人 女
ジョブ:魔道士
武器:両手杖
兄の呼び方:お兄ちゃん(心の声)、バカにぃ(話すとき)、お師匠さま(ゲーム内)
この物語の主人公。兄への態度は現実ではツン、ゲーム内ではデレ気味な小学五年生の女の子。ゲーム内では兄のことを「お師匠さま」と呼んで一緒に遊んでいるが、妹だということは隠している。現実での見た目は黒髪黒目のショートヘア。ゲームキャラは現実と同じ体格だが、立ち耳で茶色い毛並みの猫獣人。髪型は長い髪を後ろでふんわりと結んだルーズテール。白い猫耳フードのパーカーを着ている。
ここねのお師匠さま〜妹は他人のふりをして兄と一緒にVRMMOを遊びたい〜 ほわりと @howarito_5628
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