第31話 肯定するなら抱きしめて
お姉ちゃんはベッドに腰かけると、バスローブの正面を開いて、胸や大切な場所をはだけさせた。あまりにも官能的で、思わずごくりとつばを飲み込んでしまう。
「……ほら、好きにしなよ」
声は落ち着いているけれどお姉ちゃんも緊張しているのか、頬が微かに紅潮していた。でも表情はどこか投げやりで、ためらってしまいそうになる。本当にこのまま、お姉ちゃんを抱いてもいいのだろうか。
もしも抱いたら、お姉ちゃんは私を今以上に嫌いになるだろう。私が脅した結果、こんなことになったわけだし。
でもどうせ私はお姉ちゃんとは結ばれないのだ。それならもうどれだけ嫌われても同じなのではないか。今の時点でも私個人はとてつもなく嫌われているはず。お姉ちゃんが大切にしてくれているのは「妹」である私だ。
私たちはどれだけ嫌い合っても、姉妹だ。「お姉ちゃん」と「妹」でしかないのだ。それ以下にもそれ以上にもならない。
私は覚悟を決めて、お姉ちゃんの胸に手を伸ばした。覆いかぶさるような姿勢で、優しく撫でて先端を弾く。それからキスを落とす。するとすぐにお姉ちゃんの大切な場所は湿ってきた。
まるで私の全てを受け入れようとするみたいだ。艶やかな吐息まで聞こえてくる。でもお姉ちゃんは必死で声を我慢しようとしてるみたいだった。私に感じさせられているのが、嫌なのだろうか。私はお姉ちゃんにもう一度キスをしてから、わざと憎たらしい表情を浮かべて、耳元でささやく。
「私に感じさせられて憂鬱なのかもしれないけれど、我慢しないで。屈辱を感じてよ。妹の指で気持ち良くなってるってこと、声で教えてよ。じゃないと、私、幸せになれないから。お姉ちゃんの屈辱でしか、幸せになれないの。お姉ちゃんに歪まされちゃったんだからね?」
するとお姉ちゃんは興奮で真っ赤になった顔で、私をみつめた。
「……もう濡れてるから、入れて。じゃないと喘ぐほど気持ちよくなれない」
私は思わず目を見開いて、お姉ちゃんをみつめる。まさか自分から処女を奪うように誘ってくれるとは思ってもいなかった。どうやら本当に、私に全てを奪わせる覚悟をしているらしい。
我慢できず、そこに手を伸ばす。もう十分に湿っていたから、深呼吸をしてから、指を沈めた。するとお姉ちゃんは腰をうねらせて、私の指をきゅうきゅうと締め付けた。いやらしい喘ぎ声まであげてくれる。
まさか私の指がお姉ちゃんの初めてを奪うなんて、ほんの少し前までは想像もしていなかった。あの日お姉ちゃんが寝ている私に「報復」のためにキスをしてくれたから。無理やりに犯してくれたから。
今、私はお姉ちゃんと交われているのだ。
でも姉妹だから私たちは結局体の関係が限界で、心を結ぶことは出来なくて。それでも本当にお姉ちゃんは気持ちよさそうにしているから、私の指で気持ちよさそうにしてくれているから、愛おしさがこみあげてきて、思わず口から洩れてしまった。
「……お姉ちゃん。大好きだよ」
するとお姉ちゃんは顔をしかめた。そんなわけない、とでも言いたげな表情だ。きっと私の思いがお姉ちゃんに伝わることはないのだろう。でももしもいつかお姉ちゃんが私の気持ちを受け入れてくれる日が来るのなら。
もうその瞬間に、死んじゃってもいいなって思う。
そんな想像をしたせいか、私のテンションはおかしくなっていた。お姉ちゃんの大切な場所を指で開いて、問いかける。
「お姉ちゃん。なめてもいい?」
「……それだとあんたが私に奉仕してるみたいだけど」
お姉ちゃんは恥ずかしそうではあるけれど、同時に訝し気に目を細めていた。私は指でさりげなく刺激しながら、つげる。
「大嫌いな妹の舌で無様に感じてるお姉ちゃんをみたいの」
「最高の趣味だねっ……、んっ」
私が舌でなめると、お姉ちゃんは艶っぽい声をあげた。
「気持ちいい? 気持ちいいならそういって」
「……気持ち、いいっ」
「へぇ。大嫌いな妹に感じさせられて、今、どんな気持ち?」
そう問いかけた瞬間、お姉ちゃんは突然、びくびくと痙攣した。かと思うと、私の顔に液体を吹きかけた。私の指で、舌で、言葉で、こんな風になってくれたんだ。
本当に嬉しかった。
「言葉攻めで興奮しちゃった?」
「……」
お姉ちゃんは顔を真っ赤にして目をそらしている。嫌いな妹相手なのに、恥ずかしさはあるんだ。私は脱力しているお姉ちゃんに覆いかぶさって、肩にかみついた。
お姉ちゃんは小さく悲鳴を上げた。
「痛っ……。なにするの」
「これでお姉ちゃんは、もう、私のものだね」
お姉ちゃんの初めてを奪えたことが、本当に嬉しかったのだ。
「……人権まで奪われるとはね」
「それがお姉ちゃんの望みなんでしょ。私の望みを何でも受け止める」
「……」
「肯定するのなら抱きしめて」
私がつげると、お姉ちゃんは無言で私を抱きしめてくれた。その温もりが嬉しくて、でもだからこそ、急に悲しくなってしまう。私たちの関係はあまりにも歪で、私の望む物からはかけ離れている。
でもとても手放せそうにはないのだ。
「お姉ちゃん。愛してるって言って」
胸をドキドキさせながら、お姉ちゃんを抱きしめてキスを落とす。するとお姉ちゃんはためらうように視線をさまよわせてから、小さくささやいた。
「……愛してる」
その言葉が嘘だってのは明らかなのに、私は否応なしに昂ってしまう。
「私も愛してるよ。お姉ちゃん」
ささやくとお姉ちゃんはどうしてか、ぎゅっと私を抱きしめてきた。
それが何を意味するのか、私には分からなかったし考えるだけ馬鹿馬鹿しいと思った。お姉ちゃんのあらゆる言動は憎しみ。あるいは私をゆがめてしまったことへの罪悪感に起因するものだ。期待するだけ無駄だ。
私は欲の向かうままに、またお姉ちゃんにキスして、その大切な場所に手を伸ばした。絡まり合うように私たちは交わり、何度も何度も一緒に果てた。
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