第8話 呪いのような愛の形
対話なんて無理だったのだ。私に才能がなかったから、私が千景を救えなかったから、千景は歪み切ってしまった。そんな私にできることは、罪滅ぼしとしてできることは。
「……千景の馬鹿!」
「お姉ちゃんっ。お姉ちゃん……。んっ」
唇を重ね合わせて、舌を入れる。ブラをずらして胸の先端をはじく。股に手を伸ばして、ショーツをずらし、溢れ出すほど湿ったその中をかき乱す。気付けば私は、あっけなく実の妹の処女を奪っていた。
千景は私のことなんて大嫌いなはずなのに、いやらしい音が部屋に響いている。
「大嫌いな私にこんなことされて、最悪な気分でしょ?」
「……んっ」
「なのに大嫌いな私の指で、こんなに気持ちよくなってるんだ?」
「うんっ……」
私は泣きながら、妹を犯していた。千景はとても満足そうに、蕩けた表情で私をみつめている。歪んでる。歪み切っている。こんなのおかしい。分かってる。でもこれが私にできる唯一の罪滅ぼしなのだ。
千景の望みをかなえること。それだけが、私の。
純粋でいい子な千景がこんなことを願うようになるまで、何もできなかった私への罰。
心が張り裂けてしまいそうだった。何が嬉しくて、妹を犯さないといけないんだ。けど千景がいい反応をするたびに、私の指先は本能的に動く。より鋭敏に急所をとらえようとしてしまうのだ。
すると千景は気持ちよさそうに大きな胸を揺らして、くびれた腰をうねらせていた。
「いい加減にしてよ。あんたは私に犯されてるの。何気持ちよくなってるの! 苦しめよ。泣き叫べよ!」
吐き出せる憎しみなんて、もう残ってない。そもそも大切なたった一人の妹を犯すほどの憎しみなんて、私にはないのだ。それでも千景はそれを望む。私に憎しむことを望む。だから私は死にもの狂いで千景に憎しみをぶつけた。
「お姉ちゃんっ」
「これはあんたへの報復だよ。私の対話を受け付けなかったあんたへの復讐だよ! 大嫌いなやつに犯されるなんて、どんな気持ち? ねぇ?」
千景は私が憎悪をぶつけるたび、満足げにする。そのたび私の心は傷付けられていった。千景を傷付けるために、自分の心を傷付けて、何度も傷つけて。
もういっそ、死んだほうがましなくらいに心が壊れかけていた。それでも何とか最後の力を振り絞って、千景に憎しみをぶつける。
「ほら、いきなよ。大嫌いな私にいかされなよ。この淫乱妹!」
「お姉ちゃんっ……」
千景は両手両足でがっちり私を抱きしめながら、ついに果てた。
私は体液でぐちゃぐちゃになって脱力している千景の目の前に、ヌルヌルになった指先を持っていく。それを千景は恍惚とした表情でみつめていた。
すぐに千景の上から降りて、捨て台詞のように言葉を残す。
「……あんたは私に負けたの。報復は自由だけど、毎回それ以上のことをやり返してやるから。これに懲りたらもう二度とやらないこと。分かった?」
千景は何も答えなかった。けど、きっとこれからも報復は止まないのだろう。報復の報復という名目で私に千景を犯させるために。
私は最悪の気分で、千景の部屋を後にした。千景は私に犯されることを明らかに恐れていた。けれど私は千景の言葉に流されて、罪滅ぼしなんて称して、更に罪を重ねた。
私は「お姉ちゃん」なのに。千景は「妹」なのに。
もう、まともに千景と話せる気はしなかった。
〇 〇 〇 〇
お姉ちゃんが部屋を出ていったあと、私はすぐにお姉ちゃんとしたえっちのことを思い出していた。お姉ちゃんは苦しみながらも、私を犯してくれた。初めてだったからちょっと怖かったけど、気持ち良かったし、嬉しかった。
けれど、どうしてか、何か足りないものがあるような気がしてならなかったのだ。気付けば私の手は、さっきまでお姉ちゃんが触ってくれていた場所に伸びていた。私はお姉ちゃんに触られた感覚を思い出しながら、一人で大切な場所を触った。
目を閉じて、お姉ちゃんにしてもらうのを想像しながら、一人でする。想像の中のお姉ちゃんも乱暴に私を犯していた。けれど、ちょっと魔がさしたというか。私は試しに、お姉ちゃんに心からの愛をささやかせてみた。
「愛してる。千景」
するとその瞬間、気持ちいいのが一気に押し寄せてきたのだ。
これまでに感じたどの快感よりも、ずっと強烈だった。
私は体を未知の快楽に震わせながら、愕然とした。
「……なん、で?」
私が求めていたのは、愛なんかじゃない。ただの憎しみのはずだ。だって私たちはただの姉妹で、そういう意味で愛し愛される関係ではない。それになにより、私はお姉ちゃんに嫉妬され、執着されることを一番の喜びにしていた。
そのはずなのに、優しく愛してくれるお姉ちゃんを想像しながらするのは、とても気持ち良かった。
「私、おかしくなっちゃったのかな……?」
私は裸のまま、枕に顔をうずめて悶えた。もしもこれが勘違いじゃないのなら、私は致命的な間違いを犯してしまったということになる。
お姉ちゃんに無理やり私を犯させて、苦しめて、憎ませて。
それなのに、今更、愛を求めるなんて。
だから私は必死でその考えを否定した。私は憎まれたいんだ。愛されたくなんてないんだ、と。けど、その声は心の中で虚しく響くだけだった。
お姉ちゃんとえっちできて、嬉しかった。お姉ちゃんの指に触ってもらえて、幸せだった。もしもお姉ちゃんと心からの愛でつながれたら、どれほど幸せだろうか。
そんなことを考えてしまうのだ。
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