第3話 絶対に認めない
お姉ちゃんに、キスされた。
それも、ただのキスじゃなくて、えっちなキスだった。
私は枕に顔をうずめて、足をバタバタさせた。
顔が熱くて、胸がドキドキしてる。おかしいって分かってるのに、興奮が冷めてくれない。なんで? 私は、別にお姉ちゃんのことが嫌いってわけでもないけど、まぁどちらかと言えば好きだけど、でもそんな、キスで興奮するような好きじゃない。
そもそも私が一番好きなのは、私に嫉妬するお姉ちゃんの姿だ。私に打ち負かされて絶望するお姉ちゃんの表情だ。そのことを中学に入ったあたりで自覚してから、本格的にお姉ちゃんを打ち負かす努力を始めたのだ。
元から私はお姉ちゃんよりも色々なことができた。努力しなくても大抵のことで勝てた。でも徹底的に打ち負かしてやりたかったのだ。勉強だけでなく運動、容姿を磨くのも頑張った。
きっとお姉ちゃんのことだから、私が恵まれた人生を歩むほどにどろどろした感情を向けてくれるに違いないのだ。
そう思っていたから、たくさん頑張ったのに。
「……なんでこんなにドキドキしてるの?」
私はまたベッドの上でじたばたと悶える。あんまりにも恥ずかしくて、じっとしていられなかったのだ。頭の中にはお姉ちゃんにえっちなキスをされた瞬間が蘇っていて、忘れたいのに焼き付いたみたいに忘れられない。
今も口の中をなめられた感覚が残ってる。なんだかびりびりして、気持ち悪いはずなのに気持ち良くて、お姉ちゃんがキスをやめた瞬間に、もっとして欲しいなんて思ってしまって。
私は両手を顔に当てて、悶えた。
いやいや。なんで? なんで!? おかしいよ。絶対におかしいって! あんなキスが、私の初めてだなんて……。キスは好きな人と、もっとロマンチックなシチュエーションでしたかったのに。
よりにもよって、お姉ちゃんとだなんて。でも不思議と嫌とかじゃなくて。気持ちいいとか思っちゃって。お姉ちゃんは気付いてないみたいだけど、私から舌を絡めちゃったりもしてた。
「なんで……? おかしいよ……」
冷静に自分の行動を思い出していると、ますます顔が熱くなっていく。
「……なんでお姉ちゃんに無理やりキスされて、こんなに興奮してるの? もしかして、私、蹂躙するよりもされる方が好きとか? いやいや、そんなの認められない。絶対に認めないから!」
お姉ちゃんはこれまで通り、私の足元にひれ伏していればいいのだ。
私は奇妙な高揚感を振り払うべく、ベッドから降りて勉強に取り掛かる。高校一年生でありながら、私は大学の問題だって簡単に解ける。多分、東大だって余裕で合格できると思う。
それくらい私は賢いのだ。
なのにお姉ちゃんへの気持ちの正体は、いくら考えてもさっぱりわからなかった。
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