第4話


 怒りに理性を奪われていた俺は無意識に魔法を放っていた。

 その魔法は【火の槍ファイアー・ランス】。魔法ランクで言うと中位クラス、前使った【火球ファイアー・ボール】が低位クラスにあたる。


 まず魔法ランクは、その魔法の危険度をランク付けしたものだ。

 あくまでその危険度の基準は人間基準だが、意外と便利なもので、どの種族でも使われている。



 ……話が逸れたが、俺が今使った魔法は中位クラスだったのに、その威力は最高位クラスに匹敵する威力になっていた。

 で、その威力の魔法をドラゴンに打ったわけだが、何者かが間に入ったのを【魔力感知センシング】を使って、分かったから咄嗟に威力を弱めたわけだけど────





────それをする意味はなかったようだ。


 俺は間に入ってきた存在を見上げる。

 そいつは先ほど、妹を貰うなどと抜かしたドラゴンとは比べ物にならないほどの魔力を持ち、その体躯は10倍ほどはあるだろうか。

 パッと見で大体100メートルはありそうだ。

 前俺が作った【火球ファイアー・ボール】より大きいぽいから、実際のところ100メートルではないんだろうけど。



「ワシの息子が迷惑をかけた」



 そのドラゴンは力強い洗練された低い声で言う。



「………竜王ドラゴン・ロードですね…それも、古竜エンシェント・ドラゴンです。軽く見積もっても1万年は生きているでしょうね」

「ふ〜ん」



 俺はイブリースの説明を聞き、古竜に話す。



「…別に構わない。こちらにも非がある」

「ご配慮痛み入る。こんなバカでもワシの息子だ。ワシの身一つで許して貰えないだろうか?」

「親父!」



 俺はこの時初めて本当に冷静になる。そして竜王の発言について考えたが、別に俺は命が欲しいわけじゃない。

 ただ、妹が欲しいと抜かしやがった奴にお仕置きをしようとしただけで、そこについ力が入りすぎただけなのだ。

 

 まぁ、今回の一件は俺達の魔法によるものから始まったものだ。ぶっちゃけて言うと、最初に手を出したのは俺達ということになる。

 


 ………このまま相手に非があるようにして、終わらせた方が良いかもしれんな。

 

 うん、そうしよう。


 

「…いや、此度の件は俺達の方にも問題があった。狙ってやったわけではないが、お前達、ドラゴン族の住処を焼き払ったのも事実……すまなかった」



 ここで素直に頭を下げて謝る。

 何度も言っているように、こちらにも非がある。

 一応、このドラゴンは近所ということになるので、ご近所付き合いは大事にしておかなければならない。

 

 それにしても、意外と喋れるもんだ。

 イブリースから叩き込まれた帝王学が意外と役に立っているのかもしれんな。 



「別に構わない。弱肉強食の自然界に身を置いてるワシらからすれば強者から住処を奪われるのは自然界の摂理であり、なにもおかしなことはない。ワシらも、元々住んでいた山の住人から、あの住処を奪ったのだ。その立ち位置が入れ替わったに過ぎないのだよ」



 この竜王ドラゴン・ロード、めちゃくちゃ寛大すぎる。

 いや、達観しているというべきか?

 これが年の功か。



 竜王ドラゴン・ロード達はそう言って去って言った後、抱き抱えていたブランを見ていると、ぐっすり眠っていた。

 俺の魔力に当てられて、強制的に眠りについたらしい。

 どこか異常がないか魔法で調べているが、どこにもない。

 至って健康だった。



「ふぅ、よかった」

「お坊ちゃんも甘いですね…生きて帰すなんて」

「別に今回は俺達も悪かったんだ」

「……そんな甘さでは魔王にはなれませんよ」

「俺は別に魔王などになるつもりないが?」

「………」

「それよりグヒンは?」



 俺はいつの間にかいなくなっていたグヒンの居場所を聞こうとした瞬間、大賢者バベルの塔からグヒンの魔力を感じるのと同じ瞬間に大きな爆発音がした。



「あのバカ、何をしているんだ?」

「いつも通りに、戦闘でもしているんでしょう」

「まじでうるさいから人里のいない外でしろと、あれほど言っているのに」

「バカに何を言っても聞きやしませんよ」



 俺はバカの暴動を止めるべく、塔に帰るのであった。

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