第2話
はるか昔の魔界にて、偉大にして、至高にして、究極な悪魔序列1位の王級の魔王様がいました。
魔王様は人間共がいる現世に目をつけました。
現世に降臨した魔王様は現世にいた魔物を支配して、世界を征服しようとしました。
ですが、現世で暮らしていた人類は、そんな魔王様を無視するわけにはいきませんでした。
そのため人類は魔王討伐のために世界中から指折りの強者を集めました。
異世界から召喚された勇者、世界最大宗教の聖女、傭兵ギルド最強の戦士、そして坊ちゃんの父である大賢者。
それはもう豪華なメンツでしたよ。
ですが、ぶっちゃけてしまうと、大賢者以外は戦力外でした。大賢者が全部1人でやっちゃいました。
坊ちゃんの父親とはいえ言わしてもらいますが、あの大賢者、頭も強さもおかしかったんです。
10万もの魔物の軍勢を魔法1発で吹き飛ばし、山どころか山脈を消し飛ばし、海を割ったりしていました。
魔王様も防御力無視の魔法、【
環境破壊魔法ですか、というぐらいの規模の魔法をバンバン打たれてしまい、あの魔王様も、魂もろとも破壊されてしまいました。
こうして、邪悪な魔王は死に、人類に平和がもたらされた……………
……………では終わりませんでした。
まだ話の続きがあるので、坊ちゃん、部屋から出ようとしないでください。
魔王様は討伐されましたが、魔王様には現世で吸血鬼と子を作っていたのです。
そうです!!ご子女が生き残っておられたのです!!!
それはもう可愛らしい女の子でしたよ。
生まれたばかりの子の親を殺したことに罪悪感を感じた大賢者は、その女の子を育てることにしました。
魔王の子孫など、人間供にとっては殺したくてたまらない存在ですから、人里離れた土地に大賢者は
あ、その子が後の大賢者の妻であり、坊ちゃんの母になるんです。
主人を失い、生き残ってしまった我々配下達は、大賢者に誘われて、
それから長い年月が経ち、大賢者と魔王様の子………姫君はいつの間にか愛し合っていました。
それから数年後、姫君は大賢者との子を産みました。
それが坊ちゃんと妹のブラン御嬢様です。
ですが姫君は、坊ちゃん達………兄妹を産んだのと引き換えに命を落とし、魂が壊れてしまいました。
魂の破壊はその者の本当の終わり、転生することもなく、ただ無になるのです。
姫君が亡くなった理由は大賢者の魔力があまりに強大であったため、母体である姫君が耐えれなかったのでしょう。
今に思えば、あの魔力を受け入れながら、坊ちゃん達を産んだのは奇跡だったのかもしれませんね。
さすがは姫君です!!
……………………
…………
…
コホン…………
姫君を失った大賢者は悲しみましたが、どこか受け入れていました。
大賢者も姫君もわかっていたのでしょう………坊ちゃん達を産むというのが、大賢者の子を身籠るとはどういうことなのかを。
姫君も覚悟をした上で坊ちゃん達を産んだのです。
それと、姫君が亡くなったこと以外にも異常事態が起きました。
大賢者が老衰でほとんどの力を失いました。
大賢者は偶然か、必然か、姫君が亡くなったと同時に、急激に歳をとり始めたんです。
大賢者がいかに人間離れした強さだろうと、魔法でいくら寿命を増やそうと、人間であることには変わりません。
人間の寿命という名の縛りを逃れられないのが、この世の法則です。
ですが…………
………………私個人の見解としては、大賢者は不老不死になることもできたでしょう。
現に、この塔には魔物化した元人間のリッチもいますしね。
肉はなくなり、骨だけの体となるでしょうが、リッチとなり不老不死にはなれたはずです………大賢者ほどの魔法の使い手であれば、リッチにならずとも、不老不死になる方法があったのかもしれません。
人間として死にたかったのか、最愛の人と会うことができない世界に絶望したのか、大賢者は姫君が亡くなってすぐに、ある一つの贈り物を残して死にました。
その肝心の贈り物ですが、坊ちゃんや御嬢様に授けた真名です。
真名、それは我々超常生物………人間を超越した上位存在にとって重要な意味を持ちます。
真名はその者の魂の名ですが、ほとんどの物は真名を持ちません。
真名を授けるのは非常に危険な行為です。真名は魂に刻む名であるため、かなりの力を有したものしか行えません。
それに授けた側は力を失うこともあります。
ですが大賢者は、力の大半こそ失いましたが、残りの力を振り絞って坊ちゃんと御嬢様にフォルフォートという名とブランという名の真名を…………力を失い、己の魂すら犠牲にして授けたのです。
こうして生まれたのが、フォルフォートという小さな男の子とブランという小さな女の子が誕生したんです。
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