なぜか転生したら人間ではなく、悪魔族を統べる魔神王に!!

@SYU56

第1話 


 おはよう、こんにちは、こんばんわ。今の時間帯が分からないから、このような返事となったが、俺のこの世界での名前はフォルフォート。


 ん? なになに………言いにくいって? それを俺に言わないでくれ。この名前を決めたのはこの世界の親なのだから。


 

 …………と、そんなことより、話の続きだが───

 

 俺は元地球出身の日本人であり、ラノベみたいな異世界転生を経験して、新たな生を授かった。 

 黒髪黒目、幼いながらも容姿は将来イケメンになることが予想できる。

 将来はイケメンリア充確定なのは決まっているな。



 前世の知識も持っているし、異世界で活躍するのは余裕だなと訳も分からない自信が湧き出てくる。



 ………と言っても、今の俺は生後10ヶ月ほどの赤ん坊。

 無害で何もできない。


 この世界の文字も知らないが、よく世話しにくる執事の話す言葉は分かる。



 ………いや、メイドじゃないんかい!!!

 と、思うのはしょうがないだろう。

 だが、今では同じ男であることを感謝している、理由は色々あるが、この話は後にしよう。


───話が脱線したが、この言語理解みたいな力はラノベとかである異世界特典みたいなやつかな? と思っている。



 正直言って退屈だ。

 起きて、寝るを繰り返す毎日。部屋には窓もなく、照明で照らされていて、外が朝なのか昼なのか夜なのかも分からない。

 なんとか最近は立つことができるようになったが、すぐに疲労感が身体中を巡り、眠気がくるため、長時間の活動ができない。

 

 そして恥ずかしいことに排泄を我慢できないのだ。

 これが先ほど言った世話するのが執事で良かったことなのだが、もしこれが異性のメイドだったら黒歴史どころじゃないなと思う。

 ラノベに出てくる主人公たちはよく、この屈辱を耐えれたものだ。

 生を受けて10ヶ月ほどしか経っていないが、いまにも恥ずかし死してしまいそうだ。


────話を戻して、

 よく赤ん坊は泣いたりして、自分が排泄したことを周囲に知らせているというが、うちの執事は俺の排泄をすることを察知する能力を持っているのか、俺が知らさなくても、排泄した瞬間に現れて世話してくれる。

 

 

 この通り、めちゃくちゃ有能な執事なのだが、一つ気に入らないことがある。

 あの容姿だ。

  

 めちゃくちゃイケメンなのだ。

 美しい銀髪に、黄金の瞳。

 程よく鍛え抜かれた体。

 執事服を毅然とした態度で着こなし、クール系の美青年のような姿。 

 女にモテるのは当然のような男だ。


 リア充なんて爆ぜてしまえ!!!


 と、前世の記憶の俺が告げているので、心の中だけで叫んでおく。





「ひどいですね。こんなにも私は坊ちゃんを世話しているというのに、爆ぜてしまえだなんて………ひどいです」



 などと、どこか芝居めいたようによろける執事。

 俺はどこか冷めたような目で見る。



「おお、いいですね………その目。将来の魔王様に相応しいです」



 俺は執事の気になる発言につい言葉が漏れ出てしまう。



「まおう?」



 旋律のない、ふにゃふにゃな言葉を発した俺の発言に執事はニコリと、大半の女性がこの笑顔だけで落ちてしまうかのような顔で言う。



「えぇ、あなたは偉大なる魔王様の孫ですから、将来、我ら悪魔族の王となる存在なのですよ」

「はい?」



 俺は意味もわからず惚けた返事が出る。

 執事は俺の惚けた返事を返答だと捉えたのか、ニコリと笑う。



「そうですか、そうですか。なってくれるのですね」

「ちょ、まっ………」



 執事は否定する隙もなく、部屋を出て言った。






◇◇◇






 衝撃の事実を知らされてから、3年の月日が経ち、俺はもう4歳になろうとしていた。

 

 展開が早いって?

 知るかそんなもん、俺に言うな。

 

 さて、このつまらん話題はやめて、この3年の間に知ったことを話そう。


 

 まずは俺の親が先代魔王の娘と大賢者であったこと。

 親はどちらとも、死んでしまっているということ。

 


 そして肝心なことだが、俺の世話をしてた執事の名前がイブリースであり、7つある悪魔序列の中で、上から二つ目の階級の級であるということ。

 そして最も肝心なことだが、性格が悪いということだ。


 あいつ、無力の赤ん坊の頃の俺の恥ずかしい写真を撮っていたのだ。なぜ異世界にカメラがあんだよ!! と切れたが、イブリースは澄ました顔で、「その程度のことすら考えつかないなんて、将来の魔王様ともあろうものが悲しい限りです」などと抜かしやがった。

 絶対に将来、あの写真で俺をいじめてくるに違いない。



 そんな最悪な妄想はやめて────その他にも知ったことがある。

 イブリース含めて、悪魔族は心を読むことができるということだ。それすなわち、俺の前世のことも知っていたということ。

 

 当時、そのことを知った俺は大パニックになったものだ。だが、イブリースの話を聞く限り、悪魔にとって転生者というのは珍しくないらしい。

 イブリース曰く、「転生者など珍しくもないですよ。というか歴代にも前世の記憶を持った魔王もいましたし」と言っていた。


 転生者が珍しくもないなんて異世界はなんでもありだなと思ったものだ。


 イブリースは他にも、「高位の悪魔には前世が神や天使だったなんていう話もありますし、異世界出身の転生者とか、多少の誤差ですよ」なんて言っていた時なんかは、悪魔やべーーと思った。



 そして今日からイブリースが言うに魔法の特訓をするらしい。

 魔法を覚えたらイブリースの心を読む能力も無効化できると聞いた日には絶対に魔法の特訓は全力で挑もうと意気込んだものだ。


 イブリースには嫌な思い出がたくさんある。

 俺が1歳になったと同時に、色々な分野の勉強を叩き込まれたのだ。

 帝王学、天文学、経済学、哲学、言語学、歴史学、心理学など、前世の頃から勉強嫌いの俺にとっては地獄の毎日だ。

 こんな勉強漬けの毎日を強いてくるイブリースから、俺を絶対に魔王にするという気迫を感じる。



 最初は断ろうとしたよ。

 俺もバカじゃない。勉強漬けの毎日になることを容易に予想できた。

 だがイブリースの断ったら殺すみたいな眼をしてきたので断るという選択肢はなかったのだ。


 

 そして、やっと机と向かいあって勉強漬けの日々から、外に出て魔法の勉強をするというのだから、俺はかなりはしゃいだもんだ。

 そして肝心の魔法の勉強だが、担当するのはイブリースじゃない。



「はーい、今日から魔法の授業は僕が担当するよーーー」



 俺の前にいるこの能天気な執事の名前はグヒン。

 赤髪、緑眼、いかにも陽気なお兄さんと言った感じだ。



「兄様、兄様。魔法の授業、楽しみですね」



 そう言って、俺の服の裾をチョコンと持っいる白髪の超絶美少女。

 美しい白髪に赤い眼、白い肌、吸血鬼の美姫なんて言葉が似合う美少女の名前はブラン。

 

 なんと驚きの俺と同い年の双子であり、妹である。

 妹がいることは俺が一歳になった時に初めて知った。

 いや、もっと早く言わんかい──と思ったが、イブリース曰く、「どうでもいいでしょう、そんなこと」と言っており、イブリースは長男の俺にしか興味がない様子だった。


 まぁ、そんなことより、俺は妹の存在を知ってからは、それはもう可愛がった。あの悪魔による勉強漬けの毎日を耐えれたのは、妹のおかげだと言っても過言ではない。

 幼い妹はそれはもう純粋で、癒しであり、魔王の血を引いているが天使だった。



 そんな妹と魔法の授業に励んでいるのだが、肝心の魔法を教える奴がダメだった。

 先ほどからのグヒンの魔法の説明の仕方はこうだ。

 


 「うーーんとやって──」



 全く意味の分からない説明だが、グヒンの頭上には火の玉が現れて、火の玉は徐々に大きさを増していく。



「──ほい!」



 その間抜けな返事で直径10メートルほどある火の玉が飛んでいった。

 火の玉の軌道を見ていると、その先に山があるのが見えるが、火の玉が衝突した瞬間に山が焼け野原になっていた。


 俺はもう驚っきぱなしである。

 だが、そんな俺とは反対に妹は目を輝かしている。



「ブラン御嬢様からやっていこうーーー」



 純粋な妹は、あんなアバウトな説明で納得したのか、グヒンの真似をしていた。



「うーーん、とやって──」



 可愛い、ただただ可愛い。

 だがそんな可愛らしい姿とは裏腹に、ブランの頭上にも火の玉が現れ、膨張し、直径3メートルぐらいまでいくと膨張が収まる。



「こう!!」



 可愛い声が響いたと同時に、飛んでいった火の玉は、グヒンが先ほど当たった山のところまで辿り着き、先ほどと同様に山の一部を焼いている。



「おーー。やるねーー、ブラン御嬢様。じゃぁ、次は坊ちゃんの番!」

「兄様、頑張ってください!!」



 俺にはあの説明でできるとは思えなかったが、妹の眼を見ると、それはもうキラキラしていた。

 俺は色々諦めてグヒンの真似をする。



「うーーん──」



 正直言って、ものすごく恥ずかしい──なんて思っていた瞬間、体の中で電流が流れたかのような衝撃を感じた。

 身体中がものすごく暑い。

 今までの自分が作り変えられるような感覚。


 新たな自分に作り変わったと悟った瞬間────頭上に火の玉が現れた。

 だが、肝心の火の玉の大きさが尋常じゃない。

 グヒンの作った直径10メートル級どころではなく、直径100メートルはありそうなほどの大きな火の玉が現れた。



「すごいです、兄様!!」

「さすがは坊ちゃんだね」



 妹の称賛の言葉が耳に入る。それだけで心地がいいが、これをどうにかしなければならない。

 俺はとにかく、グヒンやブランと同じところに飛ばす。

 飛んでいった火の玉は山に直撃し、大きな衝撃音と共に、山に穴を開けた。



 俺は惚けたようにその光景を見ていたところ、頭上からイブリースが現れた。


 

「巨大な魔力を感じだと思えば、坊ちゃんでしたか。さすがは最強の魔法使いである大賢者の血を引いてるだけはありますね」



 イブリースに親父の大賢者を引き合いに出されて、俺は親父の凄さを理解した。


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