第34話 そらへ

「気晴らしに飛ばんかの」


「いいね」


「ためらわんのぅ。まぁ、よい」


 そっと手を取ると空へと、すっ飛んでいった。雲を超えたところで、ふわりと定位をとる。


「最近、周りが見えておるか?」


 雲一面の世界に、青い空が吹き抜けて、幻想的な世界。


「見えてないなぁ」


「今は見えておるかの?」


 そう言って片目をつぶった。


「いとおかし」


「こ、この世界ではそうもやすやすと発せられる言葉にゃにょか?!」


「いや、ぼくは家族にだけ言う」


「家族のぅ」


「期間じゃないからさ」


「うむ」


 光る繭がうっすらと見える中、ぼくはゴロンと転がった。


「そなたはおさなごよの」


 ころころと笑いながら、ひかるもゴロンと転がった。


「贅沢だ」


「身に余るほどにの」


「よく来ていたのかな?」


 わずかに口元を緩めた。

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