第32話 勇気

「お風呂に入る前に帰ってきてね。いっぱいおやすみして」


 お姉ちゃんがよく言っている言葉。ぼくは叶える。ひかるのおかげでお風呂の前には帰れるようになった。あとは、いっぱいおやすみするのだ。それはいっぱい働くことだ。お姉ちゃんと一緒のときに休んで、一緒じゃないときに働いていればいいのだ。


「ぱぱ、がんばるね」


「そなたの頑張りには驚かされるの」


「さぁ、その調子です!」


 まま、ひかる、ぽるんが順々に励ましてくれる。文豪、ぽるんがいることを幸いに、ぼくは物書きとしてメシを食べると決意した。今の年収以上が、最低限の目標である。


 ずっと書き続けるうちに、いつかは見えてくるものがある。そう信じて書いている。すぐに見たい。書くだけに専念したい。


「あまりわからないわね」


「説明は不要じゃが、情景は見えなくてはなるまい」


「ここの描写ですが、そっと流れるように光が落ちた、といった風にやわらかに表すのもよいかもしれません」


「ありがとう」


 読者、編集者。ぼくは求め続けていた。どちらも、ここにいる。心強い。

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