第26話 丘の上で

 見晴らしの良い丘。こんなところがあったのだと驚かされる。


「ぼくも来て良かったのかな?」


「うむ、どうにも一人では会えぬ」


「照れるから?」


「話がかみあわんのじゃ」


「みっくさんとはインターホン越しの一度だけの印象だけど、そんな人な気はする」


「じゃろ? 許嫁でもあるし嫌っているわけでもないのじゃ。ただ、話をしてほしい」


 空を見るひかるの目が光った。


 話をしてほしい。ぼくもよく言われたな。一方的で、食い違うと怒りが出て、話を聞かないまま、部屋を出た。そんなやりとりが、よくあった。


「話ができるとよいね」


 しばらくして天からスポットライトが降り注いで、みっくが現れた。


「変わらぬの、みっく」


「ひかるは、また美しくなったな」


「そのようなことばかり、よくいえる」


「本当のことだから」 


「のぅ、みっく」


「ひかる、帰ろう」


「じゃからの、みっく」


「ここはあまりにも人の手が入りすぎている」


「そうかもしれぬの」


「あの地へと帰り、穏やかに過ごそう。それがそなたのためでもあろう」


「みっく、わらわはの」


「少々、面倒なことになろうが、なぁに、そなたは私が守る! 任せておれ」


 二人は言葉をなくして、ただ風が流れていった。


「ぼくが言うのは違うけど、ひかるは家族だから言わせてもらおうかな」


 二人の視線が、こちらを向いた。


「みっくさんの考え方も、ひかるはわかっているはず。ひかるの考え方も、みっくさんに受け入れてもらえたら嬉しい」


 それからしばらく話したあと、定期的にみっくが会いにくるというところで決着がついた。

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