第5話 ピアノ

「ピアノ買っていい?」


「いいね!」


「これなんだけど」


「よいじゃないの」


 ということで、我が家に電子ピアノがきました。フタがスライドして開閉される、あれです。ままが子どもの頃からの夢だったそう。よかった、叶えてあげられて。


「なんじゃ、これは」


「ひかる、電子ピアノっていうのよ。弾いてみるわね」


 カノンの一節を弾いた、まま。習った覚えはないそうだけど、音感あるんじゃないか疑惑をぼくは持っている。


「よいな。わらわは琴を嗜んでおるのじゃが、ふむ。このピアノも良い音色であるな」


「ふふん、そうでしょ」


 ぼくが一人の時に届いたピアノ。組み立てが必要だった。帰ってきて、すぐ弾けたら喜ぶかなって組み立てて待っていた。帰ってくるなり、妹ちゃんが寝ちゃってさ、コンビニ寄れなかったから行ってくるね、とままは出かけた。少しピアノを弾いて、すごく嬉しそうにしていた。そしたらさ、ビールとお菓子買ってきてくれたの!!


「うまいなぁ」


 昼間からビール最高!


「そなたは酒を嗜むのじゃな。わらわにもちと分けてくれんか」


「はい、どうぞ」


 そのまま缶を差し出すと、ごくごくとお飲みになりました。


「しゅわしゅわしてうまいのぅ」


「そりゃ、よかったよ」


 ぽりぽりとお菓子を食べる。お姉ちゃんが帰ってきて、喜びの声をあげる。ままと二人で弾いていた。翌日、帰ってきた時に布団カバーがかけてあった。子ども達があまりにもさわるからベトベトになったそうだ。


 そうそう。密かな企みとして、タブペンをお姉ちゃんにプレゼントしたいのだが、今から喜ぶ姿が目に浮かぶぜ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る