第10話  まなの勘違い発動イコールやる気

 瞬く間に亮ちゃんは、職場にスパッと退職届を出して、前からやりたかった、電気関係の資格を取って、新しい職場を決めてきた。


「まなを路頭に迷わすわけにはいかないからな」


 とか言って。

 ただ一つ、謝って来た。


「手当も出るんだが、どうしても手取りが減るんだ。、ここの家賃は厳しくとなると思う。だから、今のうちに引っ越しておきたい」


「私は、亮ちゃんのいるところが帰るところだから。」


 そういうと、亮ちゃんは、とても嬉しそうな顔で笑ってくれた。


 それからは、大忙し。カラオケの修行をしながら、亮ちゃんは、引っ越しの準備。

 幸い亮ちゃんの転職先の近くに、築10年のアパートと契約することが出来た。

 前より、部屋数も減ったけど、良いよね、亮ちゃんと二人だし。



 ▲▽▲



 亮ちゃんの出る発表会に私も初めて見学に連れて行ってもらう事になったの。

 思ったよりも、年配の人が多いんだ。

 ドレス~~結婚式の色ドレスを着て歌うの~~

 派手~~!!

 着物!!


 あっ!!この人、今音を外した~

 亮ちゃんの顔を見ると、


「さすがだな。まな、耳が良い。要は堂々と歌う事なんだ。」


「音を外してても?」


「堂々と歌ってりゃあ、バレない。でもそれは、まなにはまだ早いな」


 でも私、変な勘違いを発動!!

 ここで歌っても私の音痴は目立たないって!!


 そして変な自信がついてしまったのよ。


 マスターも言ってたじゃない。

 私が歌う前に「音痴が歌いますから聞かなくて良いです」って断ってたら、「余計な事は言うな」だって。


 これが、亮ちゃんの言う「堂々として歌え」だと思ったの。


 さて、困ったことが起きた。

 来月の亮ちゃんの発表会の日に、本社から社長さんが来られて、亮ちゃんも新人として挨拶てがら、接待に出なきゃいけなくなった。

 エントリーはしてある。ギリギリだったので、お金が戻って来そうもない。


「勿体ないよ~」


「なら、まなが歌うか?」


「えーーっ!!? 男の人の歌でしょ?」


「キーを上げれば歌えるさ。『願・一条戻り橋』は俺が良く歌っていたから、もメロディーは知ってだろうし」


「亮ちゃんみたいに歌えない!! この間、浪漫飛行ろまんひこうで亮ちゃんの後に同じ歌を歌ったじゃない? 『金沢望郷歌』!! あれを聞いた、知らない人に言われたのよ!! 今のいっしょの歌でした? って」


「それこそ、どうどうとだと言ってやれば良いじゃないか」


 歌のことになると、ホントに強気ね、亮ちゃん。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る