第7話  修行スタートは発声から

 こうして、私は四月ごろから、毎週土曜日にカラオケボックスに行って、亮ちゃんに発生を仕込んでもらった。


「ドアの向こうに声を飛ばせ!!」


 亮ちゃん……意味不明です……


「『う』の発音は、チューをする感じで!!」


 恥ずかしすぎる……


 毎度、毎度、こんな感じで。


 私の意志は無視なのね?

 もうやけくそだ!!



 ▲▽▲



 一年くらい、亮ちゃんに発声のみの訓練期間が続いた。

 歌なんて歌わせてくれない。

 亮ちゃんは歌ってたけど。

 声を作ってるからって。


 でも、もう一度四月が来る前に、亮ちゃんが言ったの。


「再来週にの点数を見るから、何か覚えておけよ」


「残酷な天使のテーゼじゃ駄目なの?」


、俺はこの一年、俺の知ってることを教えてきたんだ。

 そして、俺の師匠は演歌だった。それを壊す気か?」


 亮ちゃんは、いつになく真面目な声だった。


 いえ、それよりも、たった二週間よ!!

 音痴で物覚えの悪い私が二週間で歌を覚えるなんて……大変なことになった……。


 YouTubeで適当な曲を探していたら、杜このみさんの『望み酒』が可愛くて。

 調子も良くてノリが良くて、セレクトはこれに決まり。

 後は、YouTubeでいっしょに歌って一所懸命に覚えた。


 そして迎えた二週間後__


 私は、亮ちゃんからマイクを渡された。


、思い切って歌ってみろ」


「うん」


 マイクの持ち方も教えてもらった。

 あまり下に向けすぎてもいけないの。

 声が逃げちゃうから……。


「あ~あ~」


 マイクを通しての自分の声を確認してみた。やっぱり、だみ声。

 案の定、ボリュームがしぼってある。エコーはない。

 私は、力が抜ける。

 そんな私を見て、亮ちゃんは言った。


「大きな声を出せば、マイクに声が通るんだ」

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