第6話 歌わない、まな
カラオケ喫茶、
中はカウンターのある普通の喫茶店よ。
扉が分厚くて、防音対策ね。
窓のところには、物がたくさん置いてあって、チラ見せの様にカーテンが垂れ下がって外からは中の様子が見えないような工夫がされていた。
マスターが亮ちゃんのことを呼び捨てにしてたのは驚いた。
聞いたら、ここのマスターは、亮ちゃんと同じ歌の先生に習っていたのですって。山田大輔さん、亮ちゃんより大分年は上ね。
亮ちゃんの職場の先輩さんがこの店の常連さんで、ここを教えてくれた時に再会してビックリしたらしい。
でも私は、ここでも人見知りを発動。
チョコンと亮ちゃんの隣に座ってるだけ。
歌わない。
見てるだけ。
知らなかったけど、亮ちゃんは、このマスターの会に入ってたのね。
声をかけてくれる人は何人かいたけど、ただ愛想笑いだけをしてた。
苦痛でしかない時間だった。
興味のない演歌ばかり聞かされるのよ。苦行よ!!
だから亮ちゃんに言ったの。
「
「まなを家から出すのが目的なのに一人で行っても意味がないじゃないか。それにマスターの妹の由利さんが主宰してるユリの会にまなも入ってるからな」
「はあああぁ??」
歌っていた人が一瞬ビックリして歌うことを止める程、私は大きな声を出した。
「まなはもっと、声を出した方が良いんだ。大きな声を」
「私、自分の声は嫌いなの、低いし、音痴だし……」
「声は高くなるし、音域が出てくれば歌える歌も増えて来る」
亮ちゃんの言葉を信じられない自分がいた。
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