第5話  カラオケ喫茶って何?

 とうとう、亮ちゃんがずっと家にいる私を外に連れ出したわ。

 それも亮ちゃんのテリトリーへ。

 私は、好きなテレビ見てるのにも、お弁当食べる日課にも慣れていたのよ。

 それなのに突然……。

 当時、食事も作れなかった私に亮ちゃんは、宅配のお弁当を夕食に頼んでくれていた。

 亮ちゃんは、会社の付き合いで始めたソフトバレーに夢中になってたし、先輩に誘われて、カラオケのサークルにも入ってたみたい。

 帰りがいつも遅かった。


 でも、二つとも私には、関係のないものだもの。

 何年か前に頼まれて出たソフトバレーの試合で、天井サーブをかまし、レシーブは、明後日の方向へ。

 二度目のお誘いはなかったな。

 一緒に行ったほのかちゃんは、もとバレー部。

 ぜひ、チームに入って欲しいと勧誘されていた。本人は、忙しいから駄目って断ってたけど。


 亮ちゃんは、人前で歌うのが大好きな人。

 やっぱり、今度、発表会に出ませんかと誘われる。

 この世は、不公平ね。上手な人ばかりが優遇されるのよ!!

 私は、少し冷めた目で亮ちゃんの歌をずっと聞いていた。


 手始めと、カラオケボックスへ亮ちゃんと何年かぶりに行ったの。

 亮ちゃんの声、良い声なのよ。

 さすがに歌手になりたかった人よね。

 高いお金を出してレッスンしたって言ってたもの。


 90点台をバンバン出しても、喜んでないの。

 しかも、エコーは最小限に押さえられるし、マイクの音量も低くされる。

 地声がが嫌いな私には、地獄の時間なのよ。

 亮ちゃんが中心に歌ってたのに、この頃は違うの。


、歌え」


 と、言ってくる。


「歌える歌がないもん」


「ガイドボーカルつけりゃ歌えるだろ?」


「そんなこと言ったって、アニメソングしか歌えないよ?」


「それで良いよ」


「じゃあ、残酷な天使のテーゼ歌いたい!!」


 この曲好きなんだ。

 うっ……速い曲……

 ガイドボーカルと一生懸命歌った。

 あら、画面の上にバーが出てる。

 あの通りに歌えば良いのね……

 って話じゃないわ!!

 ズレまくり、

 しかも評価が、本来の音程に近づけましょう?

 68点~?

 私は、深い溜め息をついた。


「まなは、力を入れて歌いすぎるんだよ。ただそれだけ」


「亮ちゃんは、良いわよ、上手だもん。やっぱりカラオケはお酒が入って、勢いで歌うものだと思うのよね」


「今度、知り合いのカラオケ喫茶連れてくから。」


「喫茶店でカラオケもやってるとこなの?」


 そんなこと初めて聞いた。


「そうかな?市内に何件かあるぞ」


 亮ちゃんは言う。


「そこには、お酒があるの?」


「マスターが、お酒の飲めない人だから、あまり飲める人は来ないんだ」


 私は、愕然としてしまった。


「昼からお酒もなしにカラオケを人前で歌ってるの~?」


「昼から酒飲んでる方が、可笑しいな」


 私の疑問に亮ちゃんは、何を当たり前のことをという感じで笑った。

 だって、私の中の認識はカラオケはお酒の余興だったのだもの。

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