第12話 私の未来

「うん、男やもめの男爵の所へミラをやるのは良い選択よね? ミラだって再婚になるのだし。後妻なら悪くない扱いだわ。あの男爵は浮気者みたいだけど、トーマスだって似たようなものだしね。トーマスとの違いは、ハゲてる事と、デブでチビな辺りかしら? 年齢も20歳くらい上みたいだけど、その分、結婚生活が短くて済むから別に悪い話じゃないわ。それに、ミラを娼館に売り飛ばした所で、たいした額では売れないでしょうし。むしろ経費がかさんで利益が出ない可能性すらあるわね……うん、これは悪くない選択だわ。二人の間に子供が居なくて幸いだったわね。バカが遺伝して不幸が連鎖したりしたら大変。自分の行いで自分が苦労する分には仕方ないけど、子供は巻き込んではいけないわ。うん、子供は居なくて正解。後は、トーマスね……。トーマスは……宝石の採掘場送りになったみたいね。でも、どうかしら? 良い石を掘り当てられないと利益が出ないわよね……体力だってあるほうじゃないし。でも、頭も悪いし、これといった特技を持ってるわけじゃないから仕方ないかしら。ここまで引っ張って、借金地獄に突入しちゃったら身動きとれないものね。私だったら、もっと早い段階で、商会だけでなくミストラル男爵家も売ったわ。商売の上手くいっている商家にでも話を持ち掛ければ、爵位はお金に換えられるのよ。それに借金さえなければ、どうにかなったと思うのよ? トーマスは無駄に顔がいいから。お金持ちのマダムのヒモにでもなれば、暮らしていくのに困ることなんてなかったでしょうに。あの人、自分の利益になると思った相手には愛想がいいから、イケたと思うのよね。無駄にプライド高いからチャンスを逃すのよ。今はもうダメね。採掘場の仕事で唯一の取柄である見た目がボロボロだわ」


「どうだい? 納得できたかな?」


「んー、神さま。ちょっと『ざまぁ』が弱いかもしれないわ」


「ほっほっほっ。ワシは神さまなので、キッツイ『ざまぁ』は個人ではなく社会にかけなければならんのだ」


「それなら、仕方ないですね。私の家族は、どうやら幸せになれそうだし。良くしてくれた商会の従業員たちには迷惑をかけずに済んだし。まぁ、こんなもんでしょう」


「ほっほっほっ。その代わりと言ってはなんだが、キミは異世界に転生させてあげる。そこで好きに生きたらいいよ」


「やったー!」


 トーマス。


 散々な目に遭わせてくれたアナタには恨みしかないけれど。


 私は異世界転生できるみたいなので、そちらで楽しく過ごしますね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【中編版】馬鹿な夫に死んだ私がざまぁする話 天田れおぽん@初書籍発売中 @leoponpon

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ