第6話 星夜祭りの約束
(ここね)
工房の前に立ちドアをトントンと叩き、声を掛けた。
「グレイさんいますか?」
工房の中からごそごそと音がすると、髪がぼさぼさでフードを急いで被ったグレイさんがそっとドアを開けた。
「!!、ミアさん!どうしたの?」
グレイさんは垂れ目を大きく開けて驚き、私を見つめた。
「突然すみません。以前、こちらの工房でお仕事されていると聞いたので、いらっしゃるかと。ご飯何か食べました?持ってきたので、よかったら食べて下さい」
「!え、もうそんな時間?あ、ごめん、ちらかってるけど、どうぞ」
「では少しだけ」
そう言って私は中に入った。
「おじゃまします。うわあ。工房って初めて入りました」
私はきょろきょろとあたりを見回した。
ごちゃごちゃと不思議な道具が沢山ある。綺麗なガラスや、石。何に使うのか分からない怪しい草等。
私がジッと見ていると、グレイさんは慌てて声を掛けて私のバックを受け取ってくれた。
いつか、あの不思議な道具達を色々教えて貰おう。興味深いものばかりだ。
「危険なものもあるから、触らないで。怪我しちゃうよ。見る分には構わないんだけどね。ミアさん、わざわざありがとう。いい匂いがする。最近、仕事が忙しくて時間の感覚がおかしくなっちゃってた」
「気にしないで下さい。私もお店があるのですぐにお暇しますね。でも、グレイさん、ちゃんとご飯食べてください。心配ですから。ああ、顔見れてよかった」
「!!ミアさん!!ちゃんと、食べるよ!!」
「あとですね、グレイさんに、少々お尋ねしたいのですが」
私が工房の道具等を見回しながら訊ねると、グレイさんは元気よく返事をしてくれた。
「!!なに??」
「星夜祭なんですけど、グレイさんは予定が入っていますか?なければ一緒に過ごしたいと思ったのですが」
「ああ!俺、ミアさんにそんな事を言わせて。もちろん予定はないよ。俺も、ミアさんと過ごせると思ってたから・・・。ごめん、俺が誘うべきだったね・・・。俺の家か、ミアさんの家で過ごそう」
ショボーンっと音がしそうな顔をグレイさんはしていた。
「ああ、嬉しいです。良かった。楽しみにしておきます。では、私は失礼しますね。お仕事中お邪魔しました」
「ミアさん、わざわざ有難う。後でゆっくり食べさせてもらうね」
グレイさんがそう言って、ミアさんちょっと失礼、と言うから何かと思ったらぎゅっと抱きしめられた。
「明日はお店に行くから」
頭の上からグレイさんの声がして、私はこくこくと頷き工房を出た。
火照った顔は冷たい風がすぐに冷ましてくれるだろうと、私は店までまたてくてく歩いた。
(よかった。星夜祭は一緒に過ごせるんだわ。恥ずかしかったけど、工房に行ってよかった)
とウキウキしたが、その後。
(はっ!でも、一緒に過ごすって何したらいいの?恋人と過ごした事なんてないわ)と気づいた。
家族となら、食事して、お話して、ゲームして星を眺めて願い事をしてロウソクを灯す。
改めてグレイさんに、何します?なんて聞くのも恥ずかしいし、カオリさんに聞いたら大変な事になる。
とりあえず、私が出来る事。
星夜祭の特別なご馳走を作り、甘い物を並べる。そうだ、星夜祭の料理を美味しく二人で食べる事にしましょ。と答えを出した。
グレイさんは甘い物が好きなので、甘い物を沢山思い浮かべて途中で商店により、沢山買い物をして帰った。
店に帰り着くと夜に向けての準備をしたが、グレイさんと会えた事で心はぽかぽかだった。
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