登場人物:ゼンディニア王国編

一部ネタバレ要素も含んでいます。ご留意ください。

本編を読み進めたうえで、ご覧いただくことを推奨します。


登場人物は随時追加、既存の紹介内容も加筆修正していきます。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



★イプセミッシュ・フォル・テルンヒェン→?

二十八歳、身長百八十八セルク


 現ゼンディニア王国国王であり、武の結晶たる十二将を束ねる有能な将でもある。得意とする武器は両刃長剣で右利き。独身で恋人、愛人といった者はいない。


 暗めの黄褐色の髪は短く、瞳は濃い同系色、冷酷無比な鉄仮面として側近からも恐れられている。十二将でさえ十歩以上の距離を置いて接しなければならない。


 力こそ正義を地で行く。六騎兵団を有するリンゼイア大陸最強の武の国家でもある。力さえあれば身分など関係なく、誰でも取り入れる懐の深さがある。優秀な人材を確保するため、諸大陸から人を集めている。


 身分を問わず、己自身の目で相手を見極める。決して他者の意見に左右されない強靭きょうじんな意思を持つ。一方で、国王という立場をかえりみず、戦場に出ては先陣を切るような刹那的せつなてきな部分もある。


 誰も信じない。信じれば必ず裏切られる。最後は常に一人だ、という達観した考えが信条であり、絶対的な力を求める理由になっている。その要因は記憶の幕にある。


 今でこそ貴族、さらには国王の地位に就いているものの、物心ついた頃には孤児としてしか生きる道がなかった。両親の顔はもちろん、兄弟姉妹がいるかも分からない。


 生きるためには盗んだり、拾ったり、恵んでもらったり、手段は選ばなかった。彼に手を差し伸べる大人は皆無で、この境遇から脱してやるという強い信念をもって生き抜いてきた。絶対的な力を求めるもう一つの理由がここにある。


 リンゼイア大陸の銘主たるラディック王国を目の敵にしており、宣戦布告を行った。



★ザガルドア・ベデラム→?

二十七歳、身長百九十八セルク


 十二将筆頭、近衛兵団団長を務める。武器は両刃大長剣で右利き。独身で恋人はいない。


 濃い暗緑色の髪に青みを帯びた緑の瞳を有する。十二将を創設したイプセミッシュにより筆頭に指名されて以来、常にその地位に立つ。リンゼイア大陸最強の武人とも称される。


 揺るぎなき強者で、三大流派の一つ、ビスディニア流の剣技を使う。ゆえあって、現継承者に破門されるも、当時の序列は直系で五位という実力者でもある。


 先読みのザガルドアと呼ばれるほどに頭脳明晰で、あらゆる状況を想定して戦術を立てる能力にもけている。


 彼もまたイプセミッシュ同様、記憶に関する謎を抱えている。名前そのものも本名かどうか分からない。



★フィリエルス・リア・ネヴェレシーア

二十七歳、身長百七十三セルク


 十二将序列二位、空騎兵団団長を務める。武器は細剣で右利き。両親と六歳離れた妹は他界している。


 黄金に輝く背中まで届く髪を後方で結わえ、とある紋章が刻まれた美しい髪留めを挿している。非常に整った顔立ちで、やや垂れ目がちの碧眼が特徴でもある。


 武器も魔術も十二将内では真ん中ぐらいの実力でありながら、序列二位を堅持する。


 性格は自分にも他人にも厳しく、それでいて懐に入れた者にはとことん親切でもある。頭脳明晰、優れた状況分析、事前の戦場把握に余念がなく、的確な判断を素早く下せる。団員を守るためには己の犠牲もいとわない。それ故に団員からの信頼も非常に厚い。


 ネヴェレシーア家は伯爵に叙任された有名貴族の一つであったものの、とある大事件を発端にして、断絶に追い込まれた。母リュクセレーヌはその時の心労が重なり、病をわずらって亡くなっている。


 内部の者の裏切り行為が原因であったため、イプセミッシュほどではないにしろ、フィリエルスもまた人をなかなか信じ切れない。裏切り行為には断固たる処置を取る。


 性蔑視を決して許さない。イプセミッシュであろうとも、その手の発言に関しては断固抗議するため、とりわけ女の団員から強くしたわれている。 



★ヴェレージャ

年齢不詳、身長百七十九セルク


 十二将序列三位、水騎兵団団長を務める。武器は魔術ならびに細剣で右利き。両親と妹が一人いる。


 フィヌソワロ出身のエルフ属、純エルフで優れた魔術師の家系に生まれる。早くから里を出て、他属と交わる外の暮らしを選んだ。十二将随一の魔術師でもある。剣技はからっきし駄目、腕前は常人とさほど変わらない。


 誰もが思わず見惚みとれるほどに均整の取れた姿形を有する。腰まで伸びた紺青こんじょう色の髪と同色のやや切れ長の瞳が冷淡さを感じさせるものの、何もないところで平気でつまづくなど、どこかしら抜けている部分があり、勿体もったいなさを自然に演出している。


 ヴェレージャは自身の魅力に全く気づいておらず、むしろ美に対して無頓着すぎるぐらいである。他の十二将から美しいなどと言われても、冗談だと思ってまともに受け止めていない。こういうところも実に天然だったりする。


 里には親同士が決めた許嫁がいる。また妹のことでずっと思い悩んでいる。

 


★グレアルーブ

年齢不詳、身長二百七セルク


 十二将序列四位、獣騎兵団団長を務める。武器は十本の爪と咆哮ほうこうで右利き。親や兄弟姉妹に関する情報はない。十二将唯一の獣人族でもある。


 戦闘においては苛烈かつ容赦ないが、それ以外の面では竹を割ったような性格をしている。後腐あとくされない性格の彼を好む者も多い。


 獣人族の特性を生かした戦闘はまさしく圧巻の一言で、不安定極まる地形であろうとものともしない。敏捷性びんしょうせい俊敏性しゅんびんせいが高く、嗅覚きゅうかくや視覚にも優れている。


 武器とする十本の爪には全ての異なる魔術付与がなされ、しかも自在に伸縮可能、切り離すこともできる。さらには破壊に特化した咆哮をも用いる。


 獣人族にのみ伝えられている秘儀の血縛術サグィリギスを使いこなす。文字どおり、術者の血液と密接につながった奥義であり、血の効力は術者が生きている限り半永続的だ。



★ソミュエラ

二十八歳、身長百七十五セルク


 十二将序列五位、近衛兵団副団長を務める。武器は両刃・片刃長剣で左利き。両親がいる。兄が一人いたが幼い頃に他界している。


 肩先にかかる程度のしなやかな淡赤紫の髪、ややつり目がちな同色の瞳に細身の体形を変わらず維持している。


 剣集めが趣味で常に八振りの多彩な剣を両腰に吊るしている。全てに異なる魔術付与がなされている。召喚術師としての能力も有する。ただし、召喚した力を剣などに付与する能力はないため、付与術師の力に頼らざるを得ない。ディリニッツに貸し与えた風斬りの剣フリュヴァデルはその典型でもある。


 外交能力に非常に長けており、十以上の言語を自在に操る才女でもある。十二将六人の女のうち、序列は三番目ながら最年長かつ最古参ということもあり姉的な立場にある。


 トゥウェルテナ(後述)が初めてゼンディニア王国にやって来た際、ならず者たちに絡まれて困っているところを助けた。それ以来、何かと彼女を可愛っており、また彼女からも姉様と呼ばれて慕われている。



★ブリュムンド

三十二歳、身長二百十一セルク


 十二将序列六位、騎馬兵団団長を務める。武器は両刃戦斧で右利き。妻と娘三人、息子四人の子供がいる。


 十二将髄一の膂力を生かし、特殊な両刃戦斧を最上段より豪速で振り下ろす斧術を得意とする。戦場では無類の強さを発揮し、多くの敵を屠ってきた。レスティーの前では致命的ともいえる弱点をさらけ出し、一瞬にして倒されてしまう。

 

 ゼンディニア王国では重婚が認められている中、珍しい反対論者であり、ひたすらに一人の妻を愛する。見た目からは想像もつきにくいが大変な子煩悩でもある。



★エランセージュ

二十四歳、身長百六十三セルク


 十二将序列七位、水騎兵団副団長を務める。武器は魔術で右利き。とりわけ後方支援魔術を得意とする。護身用のための短剣を所持する。


 きめ細やかで透き通るような肌に瑠璃るりの長い髪と瞳、それでいて年齢以上に幼く見えるところや十二将で最も低身長といった部分も彼女の魅力の一つになっている。彼女自身は童顔、低身長をとりわけ気にしている。


 トゥウェルテナやセルアシェルからは、まるで人形のようと形容されている。


 極寒の地、シャラントワ大陸の北方辺境に点在する小さな村の一つで生まれた。幼い頃よりあまりの寒さに身体を弱らせて死んでいく老若男女を見つめてきただけに、死は身近な存在になっている。


 目元を除くほぼ全身を衣類で覆い隠している。極端な人見知りで自身の能力を卑下している。最終決戦に向けて、一時的にビュルクヴィストの弟子となり、魔術高等院ステルヴィアで修業することになった。


 幼い頃に偶然出会った魔術師に憧れ、自分自身が本当になりたい魔術師とはいったい何かを突き詰めている。この後には脱皮したエランセージュが見られるはずだ。



★フォンセカーロ

二十六歳、身長百八十八セルク


 十二将序列八位、空騎兵団副団長を務める。武器は長槍で右利き。魔槍士まそうしとして、槍術の腕前はもちろんのこと、己自身で魔術付与もできる。両親と姉が一人いる。


 有翼獣アコスフィングァを操縦し、空で絶大な力を振るう。団長フィリエルスからの信頼も厚く、次期団長は確実と言われている。


 個性あふれる十二将にあって、十二将の良心とも呼ばれ、非常に温厚で言葉遣いも丁寧な紳士でもある。


 魔槍術奥義の氷霜舞柱疾刺撃ラグスティユル、その改良型たる氷霜舞華爆裂破シェレサティヴルを好んで用いる。


 余談ではあるが、深紫こきむらさきの短めの髪に同色の切れ長の瞳が特徴の彼は十二将随一、いやゼンディニア王国中を探してもいないほどの超絶美形である。引く手数多にもかかわらず、未だ独身というのも不思議なものだ。


 ちなみに、フィリエルスからは「あまりに美形だから駄目なのよ」と言われている。



★ディリニッツ

年齢不詳、身長百九十五セルク


 十二将序列九位、隠密兵団団長を務める。武器は魔術で右利き。剣技全般はさっぱりな腕前でそもそもの基本ができていない。操影術の使い手でもある。


 シュリシェヒリ出身のエルフ属、とりわけ人口の少ない暗黒エルフである。闇と火炎の魔術を得意とし、中でも闇の魔術は非常に強力無比で、それらを自在に使いこすだけの魔力量、魔力制御能力を有している。


 国王イプセミッシュを守る影であり、最後の盾とも称される。一方でシュリシェヒリの長老キィリイェーロの命を受けて、パレデュカルが救い出したラナージットを裏から警護している。


 シュリシェヒリのエルフ属にのみ伝わる特殊な眼は有していない。


 同じエルフ属のヴェレージャと行動を共にすることが多くなっている。残念ながら互いに異性としての意識は皆無である。



★トゥウェルテナ

二十五歳、身長百七十七セルク


 十二将序列九位、騎馬兵団副団長を務める。武器は一対の湾刀で右利き。両親は他界、兄弟姉妹はいない。


 南方に広がる熱砂のツイステルム大陸出身で、定住地を持たない砂漠の民である。 身にまとっている衣装は、隠すべきところ以外はほぼ半透明の薄い生地が主体で、肌の露出部分が圧倒的に多い。


 腰まで伸びた赤みのある鮮黄色の髪を複雑に編み込んだ独特の髪型をしている。同色の瞳は円らで、甘ったるい独特の口調とあでやかさからゼンディニア王国内で男女問わず絶大な人気を誇る。


 巫女の踊り手シャルハストウ最高位の巫女頭みこがしらを務める。巫女の踊り手シャルハストウ七舞しちぶのうち、既に炎と風の舞いイェフラサクティ(これはレスティーに無理矢理躍らせれた)、死環白流葬雨舞ニエティリオ熱砂塵照光射隠ネアレハネス寂凪無音祝光静ユピファルーイェを舞っている。


 柔軟性、俊敏性に富み、魔力を扱うに当たっては感受能力、耐性能力に優れている。最終決戦において、レスティーより授けられた魔剣アヴルムーティオを誰よりも早く目覚めさせることに成功した。



★セルアシェル

年齢不詳、身長百八十セルク


 十二将序列十一位、隠密兵団副団長を務める。武器は魔術と片刃長剣で右利き。父は存命、母は他界している。兄弟姉妹はいない。


 父はエルフ属、母はヒューマン属のハーフエルフで、魔術師の力は父から、剣技の力は母から受け継いでいる。


 茶褐色の腰まで伸ばした長い髪とやや明るめの同系色の瞳で、母譲りの笑顔がとても愛らしい。


 風と闇の魔術を得意とする。単体魔術ではヴェレージャやディリニッツに及ばないものの、彼女は一つの魔術を複数に分解、様々な効果を付与したうえで連撃できる特異な能力を有している。


 中でも冥減衰無深沈闇ファヴリディウクは、自らの領域内に深き闇を生み出し、闇を幾重にも塗り固めることで無限とも言える力を引き出せる。


 団長ディリニッツの頼りになる右腕で、彼を密かに慕っている。果たして成就するかどうかは今のところ不明だ。



★ディグレイオ

二十五歳、身長百九十八セルク。


 十二将序列十二位、獣騎兵団副団長を務める。武器は自身の肉体全てで剣などを持つことは滅多にない。使えないわけではない。両親は他界、姉と兄が一人いる。


 自分自身は含めて全てに対して不満をいだいている。生まれた環境がそうさせている。ここでは関係のない話だ。性格に多少の難はあるものの、言動にぶれはなく、首尾一貫している。迷惑な男と思われもするが、憎まれたり、恨まれたりするほどでもない。


 獣人族で構成された獣騎兵団唯一の人族であり、当初は大きな反発を招いたものの、実力で全てを黙らせた。


 闘気術の使い手で、自らの体内に蓄積した闘気をもって、肉体を強化したり、また癒したりできる。闘気を他者に譲り渡すことで同様の効果を生み出す。そのためには対象者に触れる必要がある。


 女が苦手なディグレイオにとって、対象者が女の場合は少々困ったことになる。



★エンチェンツォ

 二十二歳、身長百七十六セルク


 この若さで国王づきの文官を務める。武器は頭脳で右利き。武器の類はほとんど扱えない。父を早くに亡くしている。母と姉妹が一人ずついる。


 ユルゲンディオ大陸出身の平民で母と姉妹を養うためにリンゼイア大陸に渡ってきた。最初に訪れた国はラディック王国で文官登用試験を受けたものの、最終試験の一つ手前で落ちてしまう。偶然居合わせた宰相モルディーズにゼンディニア王国を推薦されたことで、この地に落ち着くこととなった。


 国軍をその頭一つで動かす軍事戦略家になることを目標としている。唐突に始まったイプセミッシュや十二将の一部を前にした戦略披露ではさんざんな結果に大いに落ち込みもした。その後、一念奮起、十二将とも気後れしつつも会話ができるようになっている。


 とりわけ、フィリエルスからの信頼は厚いようでもある。無論、十二将と文官という立場での話だ。女に対する免疫がないに等しいため、女と接するのを苦手としている。



★ウェイリンドア・フォル・ディオ・テルンヒェン


 イプセミッシュの実父で先代国王を務める。六年前に崩御する。


 イプセミッシュがまだ四歳の時に、正妻を若くして亡くした。亡き王妃の国葬も終わらないうちに、立て続けに三人の妻を迎える。誰の差し金かはいまだに分からないままだ。その後、わずか二年足らずで、三人それぞれに王位継承権を持つ子供が誕生する。


 ウェイリンドアは正妻との唯一の子イプセミッシュの王位継承順位だけは変えなかった。三人の継母たちの懇願を拒絶し続け、結果として継母たちをイプセミッシュ暗殺に走らせることになる。


 リーゲブリッグ(後述)によって精神干渉魔術を受け、成長したイプセミッシュが玉座の間にやって来た時には意識朦朧状態に陥っていた。後日、その魔術は不完全だったことが分かる。間違いなく意図的にリーゲブリッグがそのようにしていたのだ。



★リーゲブリッグ


 イプセミッシュが幼少の頃より身の回りの一切を取り仕切ってくれていた王子づき執事長で、王宮魔術師の一人でもあった。


 王国を乗っ取ろうと企んだ継母三人衆に一人娘を人質に取られてしまう。成長し、ザガルドアと共に王国奪還に玉座の間でやって来たイプセミッシュを殺そうとするも、謎の氷の魔剣士が使役する氷蛇セヴェニエムに背中から腹を食い破られ、命を落とす。


 本心では最後の最後までイプセミッシュが王国に戻り、父ウェイリンドアの後を継ぐことを心より願っていた。


 彼の亡骸はイプセミッシュによって故郷に丁重に葬られた。



★継母三人衆


 ゼンディニア王国を乗っ取ろうと企んだ悪女ども。利害関係でのみ一致した甲乙つけがたい愚か者の集まりで、その美貌だけが自慢となっている。多くの貴族連中を自陣に取り込み、執拗に王位継承権第一位のイプセミッシュを亡き者にしようとするも、ことごとく失敗する。


 この三人に策略を練るだけの知性はない。後ろ盾になって操った者が必ずいるはずだが、未だに判明していない。


 リーゲブリッグ同様、謎の氷の魔剣士が使役する氷蛇セヴェニエムによって丸呑みにされて絶命、そのまま哀れな氷像と化した。

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