第46話 詐欺師 1

世の中馬鹿ばっかりだ。


そう思うようになったのは、いつからだっただろう。

小学生の頃には似たようなことを考えていた気がする。クラスメイト達は、幼稚なやり方で私を学校から排除しようとしていた。


原因は、何だったか。

もう20年以上前のことだから、記憶が薄れてきているが、大人から見たら下らない理由だったと、辛うじて残った蜘蛛の糸並みに細い糸をたどり寄せて予想する。


でも、あの頃の私達からしたら、その下らないことが世界の全てだったんだ。

学校という狭い世界に閉じ込められた私達には、サンドバッグが必要で、お鉢が回ってきた。

ただ、それだけの話。


よく、ワイドショーで、イジメを防ぐにはどうするべきかとかいう議題で安全圏から語る知らない大人は、あれでお金をもらっている。

なんて楽な仕事だろうと、子供ながらに思った。

仕事とは、面倒で辛いものだと思っていたけど、馬鹿が馬鹿なことを喋るだけでお金ってもらえるんだ。

将来、こんな楽な仕事に就いて、一生懸命働いている人達に軽蔑されたい、思って生きてきた。

\



期待できる子に出会ったのは、高校生になってから。

自己評価が極端に低いけど、真面目な景に軽蔑されたかった。

周囲に嫌われている私に気兼ねなく声をかける良い子だけど、闇も背負っている彼女に、私をコテンパンに否定してほしかった。


でも、あいつは良い子すぎた。

こんな私の側に、打算も思惑もなく一緒にいてくれるお人好し。

この子は、私の本性を知っても、具体的に責めてはくれないだろう。


それどころか、受け入れてしまう。

お姉さん以外は等しくどうでも良かったあの子は、私すらも受け入れる。


そんな想像をしたら、恐ろしくてたまらなかった。

本性を出して、あの子にその他多数として受けいられるよりも、嘘の私を貫いてやろうと決心した。

それが、思春期真っ只中の面倒くさい女子高生の、初恋の対除法だった。

\



その初恋相手が、髪を早く長くできるとかいう詐欺に引っかかった。

ていうか、私が引っかけた。


久しぶりに会った景は、驚くほど変わっていなかった。普段の詐欺活動で、時の流れほど強いものは無いと考えていたのだけれど、景は悠々と時間をコントロールしていた。


変わってないと安心する。とか言う人が多いけど、私からしてみたら気持ち悪く感じる。

動物や植物だって、環境によって変わるのに、人間が変わらないのは、異常に思える。


でも、趣味であるメイド喫茶巡りをしている時に会った際、雑談をしていたら、『使える』と頭に浮かんだ。


人に興味がない故に、フットワークが軽い。

巧く頼めば、優秀なコマになりそうだ。

初恋相手をコマ扱いできてしまう私も、充分気持ち悪い。





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