第37話 日向ぼっこ

ナルに案内されて行き着いたのは、河原だった。


「日向ぼっこしよう」


久しぶりに聞く言葉。

日向でボーッとすることを指す遊びだっけ。

「ぼっこ」ってなんだろうと思ったけど、わざわざ調べるほど気にはならない。できるだけ清潔そうな岩を探して座る。

ナルには、私の膝に座ってもらった。


「・・・」


何をするでもない時間が過ぎていく。

東京と違い、ここでは「何かをしなくては」という種類の焦りは感じない。

景色とかに興味がないので河原を見ても何も感想はなかったけど、退屈ではなかった。

徐々に瞼が重くなっていく。

川の流れの音が子守唄に聞こえる。


「おやすみ」


ナルが寝ることを許可してくれたので、私は本格的に睡眠をとることにした。

\



目を覚ますと、青かった空が赤くなっていた。

夕日が空を照らしている。それなりの時間寝てしまっていたらしい。


「今何時?」

「お。やっと起きた。5時25分だよ」


2時間くらいか。

でも、東京の部屋で7時間寝た後より、疲れが取れた気がする。寝具も何もないし、暑いしで、睡眠には適していないにも関わらず。


「そろそろ、旅館に行った方が良いんじゃない?」

「うん」


喋る猫は諦めよう。

私には、喋るクマのぬいぐるみが付いているから、別にいらないや。

\



ここち住んでいた時は、旅館には行ったことはなかった。地元民は、地元の宿泊施設には基本的には行かないのだ。

で?なんだっけ?座敷童だっけ?

予め、詐欺師が座敷童が出るという部屋の予約をしていたので、受付からスムーズに目的地に辿り着けた。


目撃者によると、夜中に出現するらしい。


「夜中かー。起きてられる?」

「ハンッ」


ナルの心配を鼻で笑う。


「誰に言ってんの?あたしゃキャバ嬢だよ」

夜中は、私の得意な時間だ。

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