第13話 お薬

抗うつ薬は、飲んでいた経験がある。


本当に効果が出てきたのかは、よく分からないが、あの当時は飲まないと不安に押しつぶられそうだった。


個人的には、実際の効能よりもサブミナミル効果の方が大きかったのではないかと思っている。

この薬があれば、とりあえず今は大丈夫と自分に言い聞かせられることで、辛うじて精神の均衡を保っていた。


そうした、惰性にも似た理由で飲み続けていた抗うつ薬だけど、副反応もあった。


まず、めちゃくちゃ眠くなる。

日中に起きているのが難しいくらいだった。思えば、その時期に無理にでも動くためにエナジードリンクを飲み始めたような気がする。


そして、食欲増加。

とにかく、お腹が減る。ご飯を食べ終わっても2時間後には何か口に入れないと気が済まない。あの時の私の下腹はすごいことになっていた。


誤解のないように言っておくが、きちんと自分に合った抗うつ薬を飲んでいれば、こういった副反応は、最小限に抑えられる。私の通っていた心療内科が、なんというか・・・適当なところだったから、こんなことになってしまったが、薬を渡すだけではなく、診療もやってくれる病院を探せば大丈夫だ。


「っていうことだから、薬には慎重に行きたいんです」

「説得力がすごい・・・」


いつも元気なナナさんをシュンとさせてしまった。


「そうだよね。副反応ねー」


職場の近くにあるファミレスで、私達は昼食を

食べていた。


ナナさんはピザ、私はドリアだ。

2人で分けようと、辛いチキンもテーブルの中央にある。これ、美味しいんだよなぁ。


「分かった。ちゃんと調べるね」


そう言って、スマホをいじり出すナナさん。

この人は、ショートカットがチャームポイントだと思うんだけど、良いのだろうか?


自分のことは棚に上げて、そんな心配をしてみる。

だった1人の何気ない発言に、髪型を薬で変えようとしている彼女を見ていると、少しだけ不安になる。


なんだか、どんどんエスカレートしそうで。


「えっとね、副反応はないってさ」

「ないわけがないでしょう」

「そうホームページに書いてあるよ」


スマホを受け取る。

どうせ、過大広告をこれでもかと使っている胡散臭いホームページだろうという予想に反して、地味な作りだった。


髪が長くなるとかいうトンチンカンな薬もあるが、普通の医薬品もたくさんある病院兼らしい。

薬剤師が健康の妨げにはならないと、少々難解だが、理解できないほどではない文章もある。


「一回だけ、話を聞きに行かない?」


ナナさんが上目遣いでこちらを見る。

この表情に、何人のお客様が落とされたことか。

女の私でも、クラっとするものがある。


「・・・わかりましたよ」

まあ、殺されはしないだろう。

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