第9話 10の著作
なるさんの小説家としてのペンネームは、アラキタアリスというらしい。
割と有名な小説家だったので、驚いたけど、なるさんとアラキタアリスは、私の中で巧く結び付かなかった。
2年くらい前に読んだことがあるが、特に感想は無かった。
別に面白くないわけではないのだけど、おすすめして下さいと言われたら困るタイプの小説。褒める言葉は出てこなくて、かと言って叩くほど酷いわけではない、良い意味でも悪い意味でも記憶に残らない話。
けど、本が売れないこの時代からしたらエグい売り上げを出しているらしい。
「ふーん」以外の感想は無かった。
そんな「普通」な小説家と言われて、私の脳は軽いパニックになった。
いや、もしかしたら、私が読んだ小説だけが「普通」だったのかもしれない。
アラキタアリスの著作は10以上はありそうだけど、全部読んでみよう。
なるさんは、1週間で全31巻の漫画を読んでくれたんだ。
私も、なるさんほどじゃないにしても、読書をする習慣はあるのでそれほどの労力ではない。
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1作目『嘘つきピエロ』
周りに合わせて自分を演じている女の子が、唯一、自分をさらけ出せる男の子に思いを寄せる恋愛小説。
2作目『私のことなんて知らない癖に』
モテモテの女子高生が、「真実の愛」という、存在しないものを探す純文学。
3作目『今日も曇りのち雨』
これは絶望か、それとも希望か。
何が欠けている人々の日常の中に潜む狂気。何かが起こる予感。
4作目『頼むから死んでくれ』
隣の席の澤山くんに死んでほしい。
私に優しくしないでほしい。私に笑顔を向けないでほしい。放っておいてほしい。
・・・助けてほしい。
5作目『きっと私はあいつを理解できない』
私の好きな男子はオタクだ。
あいつがオススメしてくるアニメな良さが分からない。でも、私はあいつのことが好きなんだ。
6作目『一休みしていきませんか?』
小さな喫茶店に今日も人生に疲れた者達が集まる。美味しいコーヒー、可愛いウェイトレスが、あなたに最高の癒しを提供します。
7作目『約束の場所で』
15年前の夏休みに一度だけ会った女の子を忘れられない中学教師の安住智。季節外れの転校生の浅田千鶴にその面影を見る。はたして、千鶴はあの女の子なのか?
8作目『呪いの席』
あの席に座ったら最後、死が訪れる。
科学部部長の内山佳奈子は、「全て科学で説明する」と自らその席に座る。翌日から、佳奈子の周りで不幸が巻き起こる。佳奈子は、呪いの正体を解明することができるのか!?
9作目『新しい世界』
いつもの仕事・家事・休み。
この5年間、新しいものに挑戦していなかったことに気づいた30代OL。「何か夢中になれるものをみつけたい!」人は、いつからでも楽しいものに出会える。
10作目『これから』
この島から早く脱出したい。
朧げな東京への憧れを抱いている高校生達の青春群像劇。理由の分からない不満を瑞々しい書体で描いた傑作。
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個人的には、4作目までの作風が好きだった。
荒削りだけど、一心不乱で書いてきたのであろうことが伝わる熱があった。
5作目からは・・・悪くはない。
でも、何と言えば良いか。「毒」がなくなって、予想を裏切らない作品が続いていた。
もちろん、この感想は私がそう思ったというだけのことだから、後半の作風の方が好きだと言う人のことを否定しない。
しかし、8作目の『呪いの席』を読み終わった時、つい自己満足な思考が声に出てしまった。
「そんなもんじゃねーだろ」
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