第4話 不適合?
場所は変わって池袋のアパート。
私の城だ。
キャバクラでそこそこ稼いでいるので、もっと良い物件に住むことは可能だけど、どうにも住む場所にお金をかけようと思えない。
狭い場所の方が落ち着くので、そんな広い家に住む必要はないし、別に雨や風を凌げればそれでいいだろうと、もう2年このアパートに住んでいる。
お姉ちゃんは、「女の子なんだから、もっとセキュリティがしっかりしている部屋にしなさい!」と、珍しく声を大きくして言っていたが、押し切った。
お姉ちゃんは、基本的に押しに弱いから、こちらが間違っていても、勢いで論破できてしまう。
優しいけど、正義を通せないお姉ちゃんを、私が守らなくてはと、その時改めて思った。
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明日はお休みだから、癒やしの時間を確保できる。
高校時代のジャージに着替えて、寛ぎモードに入り、タブレットでアニメがたくさん観れるサブスクにアクセスする。
今放送されているアニメも観たいけど、脳をできるだけ動かさずに楽しめる過去作を探す。
結局、何回も観た軽音楽部の女子高生達のアニメを1話から観ることにした。
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ああ。癒される。
少し集中が途切れても置いていかれないゆるさ、しかし、飽きない工夫が施されていると分かるアニメとしてのクオリティの高さに安心して観ていられる。
ふと、「私は疲れている時には女の子しか出ないアニメを観ることが多いなぁ」と気づいた。
このアニメに限った話ではない。
世間・・・というか、アニメ業界で言う「百合もの」と呼ばれる作品だ。
断っておくが、私はそうではない。
アニメの女の子を愛おしいと思っているが、現実の、例えば同業者の女性には、そんな感情は抱かない。
違いはたくさんある。
アニメの子達はキャバクラにいないし、派手なだけで変なドレスを着ない。
私だって仕事中はそんな変な格好をしているから、彼女達のことが嫌いなわけではない。仲良くしてくれる人も何人かいるから、どちらかと言えば好きだ。
でも、あの人達の幸せが確定する代わりに私が今後アニメが観れなくなるという状況になったら、私は悩み・・・いや、悩むふりをして、アニメを取るだろう。
それくらい、私の人生に不可欠なものだ。
気づけばカーテンから朝陽が漏れてきた。
タブレットで時間を確認してみたら、午前8時。
人間が本格的に活動する時間だ。
私はこの時間が嫌いだ。
登校する学生や職場に向かう勤め人の健康な雰囲気に当てられて、この時間にアニメを観ている自分が責められている気分になってくる。
<社会不適合者>
違う。
私は、あなた達が寝ている間に一生懸命働いていたんだ。責められ筋合いはない。
<水商売>
それの何が悪い?
<金持ちのおっさんの寄生虫>
うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい。
私はタブレットにイヤホンを指して、アニメの女の子達の優しい世界に逃げ込む。
誰か助けて。
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