神剣オークション
神剣オークション。
各国唯一の高難易度ダンジョンから発見された、霊峰神剣・大和。
世界初の神なる武器、便宜上神器と呼ばれるそれが、オークション形式で売りに出される。
『世界を背負う者』という不穏な響きを持つ能力があることから、世界にとって重大な意味を持つ武器と思われる……はずなのだが。
発見した俺達6人が使わないということで、探索者管理協会に売り払うことにしてしまったわけだ。
ただし、協会側も世界初の武器に値段なんかつけられねぇよという話になり。
そもそも富士山のダンジョンでこれまでのダンジョンと一線を画す素材を山ほど持ち帰ってきて売りつけているので。
あり大抵に言えば、協会の莫大な予算もごりごり減っていっているというわけだ。
俺達が裏で何回も富士山のダンジョンに行って素材を持ち帰ってくるせいで、神剣を買い取る予算がキツくなってしまったと。
なのでオークションで金持ちに買い取ってもらい、その買い取り金額の7割を俺達が貰うことによって支払いとする、という手筈になっていた。
最低落札価格は5000億円。いくら富豪とはいえ簡単に支払える金額ではないが、ダンジョンの出現という絶好の機会を商機と見てがっぽり稼いだ人達がいる。
それが、今回出席している富豪達というわけだ。
「皆様、本日はお集まりいただきありがとうございます。これより本オークションの説明をさせていただきます」
オークション会場で、司会を務める協会の職員が声を張る。
とはいえ、会場に用意された席にはほとんど座っていない。半透明なホログラムで人影が映っているだけだ。実際にここまで来るか、リモートにするかは自由にしたのだが結果として2人しか座っていないという状況だ。
まぁ、神剣という貴重なモノを売り出すオークションだ。妙な輩が来ないとも限らない。
そういった懸念から俺達というおよそ日本最強戦力であろう6人もオークション会場に来て待機しているという状況だ。盗まれるようなことはないと思うが。
そして、神剣の正面にあるカメラはオークションの様子を配信で映し出すためのモノ。
説明中は配信をつけていないが、神剣に値段がつく貴重な瞬間だ。協会としても利用しない手はなかった。
「オークション中、皆様にはお手元の端末、若しくは事前にダウンロードいただいたアプリから金額を入力し、送信することができます。そうして金額を上げていき、次に金額を上げる方がいなければ、落札となります」
時間制限はない。
値段を吊り上げるだけ吊り上げる方式だ。つまり予算と総資産の差が勝敗を決める。オークションという形式を取ってはいるが、一番高い金額をつけた者が購入できるだけなのだ。
司会が一通りの説明を終えて、オークション開始まで少しの空き時間となる。
俺達は裏手でそれぞれ警備をしているような形だが、神剣の裏手には牙呂と奏。会場の壁際に俺、ロア、凪咲、桃音がいる。戦闘力という点では最も高い2人が神剣近くに配備されていた。
凪咲の未来視は目で見える範囲が使いやすいということで、会場を一望できる奥にいる。
そろそろオークションが始まるわけだが、ホログラムな富豪達は割りとどうでもいい。誰が本命だとかは気にしない。ほとんどがコレクション目的で買う気だからだ。
だから気になるのは、現場に来た2人。
と言っても内1人は知り合いなので目的がはっきりしていた。
現場に来た2人の内、知り合いの方は爺さんだ。
剃髪で、口元と顎に蓄えた白い髭。長すぎず、しかし撫でつけられるぐらい。眼光が鋭く、御年76だか77だかの老人だが衰えを一切感じさせない覇気があった。和服を着込み、腕を組んで座していた。一応老体なのだが、服の下の肉体は鍛え上げられている。
もう1人は同年代くらいの女性で、俺も知らない人だ。
青い長髪をポニーテールにした麗人。スーツ姿でタイトスカートなのでビジネスウーマンといった恰好だが、探索者である。流石に探索中はスーツではないだろうが。探索者でここにいるということは、俺達と同等かそれ以上に稼いでいるということだ。間違いなく単独で深層を攻略できる実力がある。しかし一切の情報がなかった。協会は持っているのだろうが。でなければここにいないだろう。
それに、彼女は唯一の飛び入り参加者だ。協会から声をかけられたわけではなく、自分から申し込んでここにいる。ということは、素性の知れない人ではないということだ。そして資金力についても他の富豪と並ぶだけのモノがある、と。
協会は多くの企業、団体から融資を受けている。億単位の富豪も大勢いるが、今この場にいる者達はもう1つ上の単位の資産を持つ者達だ。そして、今この場にいるのはたった7名。
日本有数の金持ち達による神剣オークションが、今始まろうとしていた。
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