第二陣パーティ

「1人ずつ名乗った方がいいかな? ボクはフラメル。一応リーダーとしてやらせてもらうよ。声がけもボクからやったね」


 近くまで来て整列した彼らが映ると、フラメルさんから名乗ってくれた。打ち合わせもあまりしていない中こうして動いてくれる辺り、配信慣れしている。


神狩かがりだ」


 厳つい女性はそれだけを口にした。無愛想な人だ。まぁ無理に笑顔を振り撒いてもらう必要はない。


甘奈あまなと言います」


 戦える料理人の甘奈さん。


「吾輩が知る人ぞ知る大魔王、マオーであるぞ!」


 大仰に告げるマオーさん。


「妹のハル」

「兄のナタ」


 双子は自己紹介ではなく互いの名を口にする。


「えっと、ひ、ヒーラーの夜鞠よまりです。よ、よろしくお願いします」


 おどおどした様子で名乗る夜鞠さん。これで7人全員の名前がわかったわけだが。


 今日の主役と言うか、肝心の虎徹ちゃんが人見知りを発揮して俺の後ろに隠れてしまっていた。いや、おっきいので全然隠れられてないが。


“虎徹ちゃん隠れてる?”

“隠れられてなくて草”

“怖い人は……いるけど大丈夫だよー”

“フォローできてないがw”


「大丈夫だって。ほら、虎徹ちゃんも挨拶しないと」


 俺はそんな虎徹ちゃんの背中を押してあげる。ゆっくりと前へ出た虎徹ちゃんは俺の横に並んだ。


「鍛冶師の虎徹です。今日は、お願いします」


 ぺこりとお辞儀して、とりあえず挨拶は完了。虎徹ちゃんは完全に初対面なので、最初が肝心なのだ。


「実際に見えるとおっきいね。よろしく、虎徹ちゃん」


 配信慣れしていて、リーダーでもあるフラメルさんがにっこりと挨拶を返してくれた。


「さて、早速だが本題です。盾以外の条件がクリアされたのでここに来てもらっているわけだが、まず男女比。現時点で2:5と女性の方が多いので問題なし」

「ボクはどっちに数えてもいいよ」


 そんな便利な立場の人もいますと。


「次に、俺達が総合力を判断して攻略できるパーティか、だが」


 俺は加わった凪咲も含めての4人に目を向ける。


「大丈夫じゃねぇかな。ちょい近接が多い気もするが、オレらもそう変わんないしな。実力も申し分ないと思ってる。単純に人数も多いしいけると思うぜ」

「アタシも同じ意見。人数有利もあるし大丈夫なんじゃない? 今完成してる人はいないんだから、挑戦中に成長するって考えても」

「どうでもいい」

「大丈夫だと思いますよぉ。一緒にパーティを組んだ夜鞠ちゃんはできる子なので、そんなに心配してませんしぃ」


 4人の評価は事前に聞いているが、ざっくりとはそんな感じだ。そもそも人数が多ければ手札が増えるのだから単純にやりやすくなるだろう。


「と、いう感じですね。協会の意見も似たようなモノなので大丈夫でしょう」


“奏ちゃん興味なさげw”

“変わらんなぁ”

“人数は人手”

“多すぎないくらいなら増えればヨシ”


「3つ目はフラメルさんが自主的に集めたメンバーだし問題ないと。で、4つ目。全員で生きて帰ることだが」

「もちろん」


 目を向けるとフラメルさんが即答した。他の人達もそこを疑っている人はいないようだ。


「なら良し。というわけで他の条件はクリアしているので、後は盾を砕く試験だけとなります」


 虎徹ちゃんの造った盾を10分以内に破壊するという条件が残っている。というか本題はここだ。


「それじゃあ虎徹ちゃん。盾準備して構えてくれる?」

「はいっ」


 虎徹ちゃんが少し離れた位置で兜を被り、以前見せたのと同じ盾を掲げる。


「制限時間は10分。今回のルールとして、夜鞠さんは対象外。ナタさんとハルさんは2人で挑戦する。挑戦のやり直しは不可。盾は人が変わったら別のモノに替える。こんなとこか」


“再挑戦不可なんか”

“後日ならいいのかね”

“結構厳しいけど、いける実力者達だと信じたい”

“壊せない盾じゃないし、10分もあれば大丈夫!”


 だといいけどな。


「ロア、時計を。一応言っておくが、遠慮はしない方がいいですよ。1人でも壊せなければそこで挑戦は終了。パーティメンバーから除外しないなら最後までやる意味がないんで」


 冷たいことだが、大事なことだ。


「嘗めてんのか、テメェ」


 苛立った様子で神狩さんが突っかかってきた。悪いことではない。探索者なら自分の強さに誇りを持っていて当然だ。


「嘗めてるわけじゃないですよ。ただ、言い訳はいらないってだけで」


 遠慮して本気が、とか。

 今日はちょっと調子が、とか。

 そういうのは必要ない。大事なのは壊せるか壊せないか。ただそれだけ、実力を示せばいいのだから。


「なるほどな。じゃあオレからいく」

「いいよ、いってらっしゃい」


 神狩さんはそういう言い訳をしないタイプなのだろう。特段怒ることなく、それなら話が早いとばかりに前へ進み出た。


「それじゃあ始めるとしましょう。スタート!」


 俺が合図すると、ロアの出した時計の針が動き始める。


 情報は得ているが、実際に見るのは初めての人ばかりだ。

 お手並み拝見といこうか。

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