第二陣パーティ試験開始

 本日、遂に虎徹ちゃんと組みたいと申し出てきたパーティとの対面をする。


 必然有名人が集う場になるため、探索者管理協会に用意してもらった完全防音の訓練場を借りている。


 撮影担当はロア。配信は俺のチャンネル。虎徹ちゃんは先に来て俺の横に立っている。今回は盾を砕く試験があるので完全装備だ。顔を映すために兜だけ外してもらっている。


 更に、奏、桃音、牙呂の3人にも並んでもらっていた。各々の所感を聞きたいと思って来てもらったのだ。ただ、奏はあまり期待していないが。

 ここにいない凪咲には、今日来る人達を迎えに行ってもらっていた。


「さて。遂にこの日が訪れましたね。富士山のダンジョンに挑む新たなパーティが誕生するかもしれません」


 配信を開始して、今いる全員を映す画角でロアに撮ってもらう。


“きちゃ”

“待ってた!”

“最初の6人もいるんか”

“凪咲ちゃんはー?”


 開幕とはいえ、流石に視聴者数は普段の配信よりも多い。第二陣のパーティ結成を今か今かと待ち望んでいた人も多いだろうしな。

 海外でもパーティを組んで最高難易度ダンジョンに挑んだっていう報道があったくらいだ。日本が先手を打ったとはいえ、海外の探索者も強い。トップ層の人数で言えば日本より諸外国の方が多いかもしれない。


 先陣を切ったまま独占したいというのが観ている側の意見なのかもしれない。協会としてもダンジョンへの挑戦許可は「相互許可なら良し」のスタンスを貫けて楽だろう。


「凪咲には今、今日来るパーティを迎えに行ってもらってます。彼女の顔見知りが多いので、丁度いいかと思いまして」


 俺達は今日来るメンバーを知っているが、視聴者は知らない。1人確定している探索者はいるだろうが、彼が誰を選んだか公表されていない。この場で初めて公開されるというわけだ。


“楽しみ”

“誰が来るんだ?”

“結局1パーティだけ?”


「1パーティだけですね。応募はあったんですけど、協会と俺達でデータなんかを基に判断して断ったり、そもそも虎徹ちゃんの出した条件に合致してなかったりしてたので」


“協会全面協力で草”

“まぁ6人のおかげで日本が強く出れるとこはあるから”

“人数を倍くらいに増やせるか、6人以降いなくなる可能性が出てくるかなら増やす方を選ぶ”


 コメント欄は好き勝手言っているが、大体そんな感じだ。

 協会も油断はしていないし、今回の挑戦は俺達先駆者が参加しない。俺達が挑戦する時と同じ目線で判断しなければ死者が出るのだ。


 そうこうしている内に扉が開き、ぞろぞろと歩いてきた。ロアが振り向き、やってきた彼らを映す。


「お待たせー。連れてきたよー」


 ひらひらと先頭で手を振るのが凪咲。そしてその後ろについてきているのが、今回虎徹ちゃんを引き入れたいパーティのメンバーだ。


“うおおおおぉぉぉぉぉぉ”

“きちゃ!”

“負けず劣らずの凄い面子”


「やっほー。ま、ボクはわかってただろうけどね」


 “魔法使いの双璧”と呼ばれたもう1人、男の娘魔法使いのフラメルさん。ローブに杖と魔法使いらしい恰好をしているが、帽子はない。その方が可愛いから、だそうだ。


“双璧の片割れ!”

“凪咲ちゃんと同格だった日本屈指の魔法使い”

“凪咲ちゃん以外なら真っ先に名が上がる実力者よ!”


「……」


 無言で腕を組み仁王立ちしている、高身長な厳つい女性。身長が俺と同じくらいなので180はあるだろう。筋肉質な身体つきをしていてぴっちりと張りついた腹部の黒い布越しに割れた腹筋が浮き出ていた。肌はやや浅黒く、全身至るところに傷跡がある。スタイルはいいが筋肉に目がいくようだ。鋭い目つきと三白眼も合わせて怖い印象もある人だ。白金の短髪を逆立てていて、なぜか妙に獣っぽさを感じる。

 上はぴっちりとした黒いノースリーブ衣装で、下は薄緑色の長ズボン。裾を靴に入れている。武器は持っていないので徒手空拳で戦うのだろう。


 因みにこの人はあまり表に出ないらしく協会から情報を得ていた。


“誰?”

“強者感パない”

“強そう”

“武器持ってないから肉弾戦タイプか?”

“マッチョやな”


 コメント欄でも流石に知っている人はいなさそうだった。


「あらあら」


 おっとりと微笑んで頬に手を当てている嫋やかな女性。身長160くらいで、プロポーションも良くどこか桃音のような雰囲気を感じる。栗色の髪を緩くウェーブさせて伸ばしている。恰好はなんと白いエプロン姿だ。腰に提げている出刃包丁が武器にもなるが、この人は料理人なのである。

 戦える料理人として人気を博している人でもあった。


 因みに腹黒いらしい。


“腹黒おっとり系戦闘料理人!”

“肩書き草”

“桃音ちゃんみたいだけどドSなんだぁ……”

“実力は折り紙つきだな”


「ふはははは! 吾輩が来てやったぞ!」


 腕を組み高笑いをして高慢なことを言う。頭に角をつけた銀髪の小柄な少女だ。黒いマントを肩に羽織り、武器は提げていない。特殊な魔法の使い方をして近接と遠距離両方いけるタイプ。角は飾りで、実は普通の人間なのだが魔王のコスプレ? ロールプレイ? をしている人気配信者。厨二病的でふざけているようだがちゃんと強く、純色竜の討伐実績があるほど。


“マオー様!”

“今日も可愛い”

“格上多くて緊張してるだろうけど頑張って”


 コメント欄も妙に生暖かい。視聴者はよくわかっているということか。


「皆やる気満々だね」

「皆やる気満々ね」


 この2人はまとめて紹介しないわけにはいかない。背丈も顔もそっくりな双子。いつも一緒にいて、今も手を繋いで顔を寄せている。青髪の男性が兄、赤髪の女性が妹だという。2人揃って剣士で、兄が左利き、妹が右利き。双子ならではの連携が魅力で、ソロで挑むことは決してない代わり2人揃った時に発揮する実力は凄まじい。

 とんでもないくらい仲が良く、四六時中べったりで他人への興味があまりないと噂だ。


“最強デュエットじゃん!”

“まさかこの2人までいるとはな”

“富士山の攻略には興味ないと思ってた”


「えっと……」


 最後の1人。きょろきょろおどおどした様子で杖を抱えた少女。気弱そうな子だ。白いフードつきローブを着込む彼女は、こんな様子だが日本で桃音に次ぐと言われる凄腕のヒーラー。

 薄いピンクの髪でアホ毛がぴょこんと生えていて、大きめの丸眼鏡をかけている。自信はなさそうに見えるがヒーラーとしても一流でありながら味方へのバフも得意と強みが若干異なる。ただ戦闘面での活躍は光系統の魔法ぐらいで、本人の戦闘力としては不安が残るかもしれない。助っ人として一緒のパーティでダンジョンに挑んだこともある桃音が言うには、普段使うことのない奥の手があるそうだ。それがあれば下層のボス戦も突破できるだろうとのことなので、まぁ協会側も教えてはくれなかったが情報は持っているようで賛同していたという経緯もある。


“桃音ちゃんに次ぐヒーラー!”

“バッファーでもある分役割が多い”

“下層のボス戦大丈夫なのかな?”

“手があるから来てるはず”

“若しくは回復と強化だけなら下層ボス戦ないかも”


 コメント欄でも不安視する声は上がっていた。俺も正直、奥の手とやらの情報がなかったら同じことを思っていたことだろう。


 という以上の7人が今回試験を受けるパーティのメンバーである。

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