鍛冶師対談③
「じゃあ次は、虎徹ちゃん側から出す探索者の条件かな」
「はいっ。と言ってもほとんどお父さんが出した条件なんですけど……」
過保護な親父さんが、娘を死地へ送り出すためにつけた条件。果たして呑める人がいるのやら。
「先に言っておきますが、鍛冶師はダンジョンの長期攻略で必須の生命線になりますので。更に言えば鍛冶師は戦闘のプロではないのでいざという時に命を預けることになります。つまり、多少厳しい条件でも呑めなければ同行する気はねぇぞ、という話ですね」
“多分今笑顔”
“想像できるわw”
“いい笑顔で圧かけてきてるんだろうなぁ”
画面に映していないのによくおわかりで。
「ということで条件の発表いきましょう」
俺の言葉に続いて、虎徹ちゃんが持ってきたメモに目を落とす。
「はいっ。えっと、まず1つ目、パーティの男女比率で女性が多いこと」
「虎徹ちゃんが女性なので、大して親しくもない男達と長期間娘を一緒にさせんぞ、ということですね」
“草”
“当然っちゃ当然”
“虎徹ちゃんかわいいから狙う野郎は多そう”
“お父さん可愛いなw”
“娘想い”
「2つ目が、マサさん達攻略済みパーティが総合力を判断した時、足りない要素がないこと」
「俺達っていう経験者が、富士山のダンジョンを攻略し得るパーティかどうか判断していいってことだな」
“ちゃんとしてる”
“経験者に聞けるのは大きい”
“パーティの総合力も大事だしな”
「3つ目、パーティメンバーの選別は主軸となる者が行い、私は関与しないこと」
「これはちゃんとリーダーの立場で物事を進めるかどうかが条件ですかね。メンバー集めや必然的に関係が深くない面子で集まるので、上手くまとめられるかとか」
“真面目な親父さんや”
“そうでもなけりゃ1人娘を行かせられん”
“確かに、寄せ集めにならないようリーダーは必要か”
「4つ目、全員で生きて帰ること」
“親父さん;;”
“娘を生きて帰すことじゃないんだな”
“ええ人や”
俺が補足するまでもない。
親父さんは当然娘である虎徹ちゃんが最優先だろうが、だからと言って一緒に行く誰かに死んで欲しいわけではない。シンプルだが一番大事なことだった。
「そして最後、5つ目です。これだけは私からどうしても譲れなくて入れました。それが、私の盾を5分以内に壊すこと、です!」
「え……」
“盾壊すことが条件?”
“頑丈な盾を壊せるだけの攻撃力を持ってないと組まないと”
“村正が驚いてないか?”
「えっと……ダメでしたか?」
「ダメっていうか、ほぼ無理では?」
「えっ? でもマサさん達ならできますよね?」
「まぁ、できなくはないけど5分以内なんでしょ?」
「はい。時間かければ壊せるかもしれないので、時間制限は必要だと思います」
「うん、そうだね。……10分にしようか」
「? はい、マサさんがそう言うなら」
“マサが妥協した!?”
“そんなにヤバい条件なんか”
“村正をしてできなくはないで止まってるから相当”
“楽しみだw”
「えっと、この条件を満たす気のある人は虎徹ちゃん以外のパーティメンバーを連れて試験を行いますと。まぁその前に俺が伝手使って事前調査とかはするだろうけど。その時をお楽しみにってことで」
虎徹ちゃんの造る盾を10分以内に破壊、か。少なくとも俺は『夜叉』なし、いや富士山のダンジョン挑戦前にやったら達成できるかわからないぞ。あぁ、妖刀は抜きでな。
「あ、もちろん戦闘する方だけです!」
「それはそう。一生達成できないからね」
「はいっ」
“当たり前体操”
“ロアちゃんは多分無理そう”
「さて、そろそろ虎徹ちゃんの見た目が気になってる視聴者も多いんじゃないでしょうか」
「えっ! ま、まだカメラは恥ずかしいです……」
「わかってるって。俺がどんな見た目かーって言うだけだから」
言うとほっとしていた。流石に無茶振りはしない。
“ずっと気になってる!”
“一体どんな美少女なんや……”
“パワータイプロリ”
案の定コメント欄が加速していた。
「因みに。これまでコメントを見てた限り当てた人はいませーん」
“なに!?”
“なぬっ!”
“嘘だろ!?”
“小柄でデカい武器振り回すパワータイプ幼女は!?”
“妹系ふわふわボイスなのに、ワイらの予想が外れた、だと…?”
コメント欄が騒然としていた。実際、声はミスリードでもあると思う。
「どこから話すか……。あぁ、親父さん身長いくつだっけ」
「? お父さんは確か……250センチです」
“でっっか”
“高身長ってか巨体”
「おばさんは?」
「お母さんは230センチですね」
“でっっっか”
“お父さんだけじゃないんかw”
“夫婦揃って2メートル越えw”
“ってことはまさか?”
“虎徹ちゃんも!?”
段々コメント欄が察してきた。その様子を見てニヤニヤしながら、本人に質問を投げる。
「虎徹ちゃんは確か、280センチだっけ」
「えへへ〜。実はまた5センチ伸びたんです!」
そう、俺の目の前に座る巨躯の女の子は言った。
虎徹ちゃんは身長が高く、その分幅も大きい。太っているわけではないが、がっしりとしていると言うべきか。幅が俺2人分くらいあるので、縦横合わせれば小柄な人4人分くらいの体積はあるかもしれない。
オレンジに近い明るい茶髪を肩で切り揃えていて、左側を髪飾りで結っている。瞳も同じ色をしており、身体の大きさに合ったプロポーションをしていた。
“ファッ!?”
“両親より更にでかいだと!?”
“でっっっっっっ”
“しかもまだ成長期w”
“3メあるか?”
“巨体かわボ妹系? アリですね”
“アリ寄りのアリ”
「というわけで、虎徹ちゃんはおっきい女の子でしたー。小学生の頃に初めて会ったんだけど、その時160ぐらいなかった?」
「はいっ。162センチでした」
「俺が小学4年生で150いくつとかだったから、その頃から俺より大きかったんだよな」
「えへへ〜。そうでしたね」
「そういえば、年齢とかは言っても大丈夫?」
「はいっ。マサさんの2つ下です!」
本人から言ってしまった。虎徹ちゃんは年下だが俺より背の低い頃がないのである。
“でっっか”
“マサも高い方だぞ?”
“年下なのか”
“ってことは高校卒業した翌年くらい?”
“大きい妹か……アリだな”
“なんでもアリで草”
虎徹ちゃんの身体情報を明らかにしつつ、しばらく2人で話して配信を終えるのだった。
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