鍛冶師対談②

「えっと、マサさん達が富士山のダンジョンに挑戦しているのを見て、私も行ってみたいなって。お父さんとお母さんは危ないからって言うんですけど、行けば一人前の鍛冶師に近づけるんじゃないかと思ったんです」


 虎徹ちゃんはもう充分に一人前の鍛冶師なのだが。

 この辺は本人の気質と両親の過保護が原因かな。


“立派や”

“話を聞く限りもう一人前ではありそうだけど”

“マサも大分成長してるっぽいし、そっちが目的か”

“危険ではある”

“富士山のダンジョンに挑戦することを通過点として見てるのなw”

“村正達の配信を観てたらそう思う”

“富士山のダンジョンは最終到達点じゃないみたいだしなw”


「一応言っておくと、虎徹ちゃんはもう充分一人前、トップクラスの鍛冶師だと思うよ。もちろんまだ成長の余地はあるし、挑戦すれば成長していけると思う。ただ、そこまでして命の危険を冒す必要があるのかは、言っておいた方がいい」

「? 鍛冶師として成長することに命を懸けるのは、そんなに不思議なことですか?」


 俺の発言に虎徹ちゃんはまたしてもきょとんとしていた。想定通りの答え、というかそれを聞きたかった。


「いいや。やっぱ虎徹ちゃんも生粋の鍛冶師だなぁ」

「えっ? それは褒めてる? 褒められてる……? えへへ」


“草”

“わかってはいたがマサの同類かw”

“鍛冶狂人で草”

“こんなに可愛い子でも鍛冶師だからそうなるかw”

“鍛冶が生き甲斐なんだろうな”


「これで大体虎徹ちゃんがどういう人なのか伝わったかな」

「えっ? もうですか?」

「うん」


“伝わった伝わった”

“村正の同類の鍛冶狂人”

“かわいい”


 同じ鍛冶師で俺と仲がいい時点である程度予測を立てていた人もいるだろう。声で惑わされた視聴者もいるみたいだが。


「鍛冶師としての腕前は実際に装備を見せる時にわかるし、次は戦闘力かな?」


 装備品の質は言葉だけでは伝わらない部分も多い。例えば今のところで言うと、武器がちゃんと造れるのかは懸念にはなっているだろう。


「はいっ。戦いは得意じゃないですけど、できます!」

「虎徹ちゃんの戦い方は……どっちかって言うと桃音に近いかな」

「マサさんのお知り合いの、綺麗な方ですよね。確かに、近いかもしれません」


“戦闘力は気になる”

“ぱわータイプなのかな?”

“防具が強いらしいし、防具で受けつつ殴るたいな感じか”


 直接は会ったことがないと思うが、桃音のことは俺の知り合いとして知っているらしい。配信でも一緒だったし当然か。


「虎徹ちゃんの家系の防具の造り方でも言った多重構造。あれって素材を薄く伸ばすんですけど、薄く伸ばす時に途轍もないパワーがないと薄くし切れないんですよ。だから俺の場合鍛造方法を知ってても文字通りの力不足で再現ができないと」


“おぉ”

“その鍛冶でも活きるパワーを戦闘に活かせるということか”

“マサより強いんかw”

“妹系ちみっ子パワータイプか”

“アリ”


「因みにパワーだけで言うなら多分桃音より上ですね」


“ファッ!?”

“桃音ちゃんより上、だと……?”

“とんでもない化け物で草”

“ただの鍛冶師でいいんか……?”


「現時点での比較は、桃音が成長してるんで難しいところもありますけど。中層で遭遇したマイン・トータスっていうモンスターいるじゃないですか」


“道塞いでた嫌らしいヤツか”

“桃音ちゃんが何回も叩いて倒してた”


「あいつを1発で粉砕できると思います」


“ヤバすぎて草”

“あの時点の桃音ちゃんの数倍のパワーを誇る鍛冶師…?”

“なんで鍛冶師やねん”

“普通に探索者としても活躍できそう”

“戦闘慣れはしてないってことかな?”


「ま、マサさん! マイン・トータスの素材は粉砕したら勿体ないですよ! ちゃんと解体しないと……」

「わかってるって。虎徹ちゃんがどれくらい凄いか皆に教えるための物差しみたいなモノだから」


“素材重視w”

“やっぱ同類”

“できないとは言わない、と”


 だってできるからな。鍛冶に対しては謙遜もあるが、できることについては謙遜しない。というかあの重たくて硬いモンスターを解体できるんだから相当な力持ちだ。俺の場合砕かないと持ち上げられないからな。万全の状態から解体するのはとても難しい。


「そもそも素材を薄ーくするための方法が、重い金槌で力いっぱい叩いて伸ばす、だからな。あの金槌何トンだっけ?」

「5トンです!」


“トン!?”

“キロじゃなくて?”

“トンでもねぇパワー”

“別に上手くない”

“イカレた筋力してるw”

“それで叩いたら強そうw”


「だ、ダメですよ! 鍛冶の道具を戦闘に使っちゃ! ちゃんと戦闘用の武器を用意してますから!」

「そらそうだ。というわけで、虎徹ちゃんは頑丈な防具と盾で壁ができつつ、桃音以上のパワーでハンマーを振るうパワータイプでしたー。もし誘うなら被らない探索者の方々お願いします」

「お願いします!」


“滅多に被らんやろw”

“むしろパワータイプがあんまりいないかな?”

“是が非でも欲しい人多そうw”


 俺も虎徹ちゃんの個性が被るとはあまり思っていない。だからこそ彼女の力を求める探索者は多いだろうが。

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